方向音痴。
「くそっ…何処ではぐれた…?」
私は幾度目かの独り言をもらしながら走っていた。
嫌な予感がして後ろを見たとき…クレイが居なかったのだ。
こんな肝心なときにはぐれて困るのは共通しているのはお分かりだろうか。
普段なら何処かで合流するのだが、こんな時にアーチャーが現れれば不利な状況になるのだ。
なのでこうして仕方なく探しているのだった。
その時、私の名前を呼ぶひ弱そうな声がした。声の出所を探って辺りを見渡した時だった。
「…プッ」
「わぁ!酷いなぁ…でも、何はともあれ助けてぇ…」
―――其処では、クレイが穴に頭からつっこんだ状態でいた。足だけが出ていた。
下に鎖帷子があるのであれが見えることは無いがそれでもかなり恥ずかしいポーズになっていた。私はそれを見て笑ったのである。
「す、すまん」
こうしてクレイを引っこ抜き再度移動を開始した。
しかし、すぐに現時点で最悪の問題が発覚した。
クレイは極度の方向音痴だったのだ。
前から兆候があったので注意はするようにしていたのだが、いざ二人となるととてつもなく悲惨な状況になったのだ。
曲がり角を曲がって暫くすると消えていて時間が経つと追いついてきたり、あらぬ方向に向かったりするのだ。
こうしてクレイを前にして進んでいるのだが。
「ごめん」
「…またか」
再度同じ場所に戻って来てしまった。休憩をするために小路へ行ったとき。
「なんだこれは…っ!?」
目前に広がる、大きな水晶。
其処では、見知らぬ魔物が眠っていたのだった。