序章。
「…まったく!どうしてこんなことしなきゃいけないんだよ!!」
私は怒りを発散させるべく自棄になって怒鳴った。しかしそうして状況が変わること無く、ただただ歩いている。
「いやだって…」
と続けたのは鴻貴である。彼は瞳の近くをポリポリと掻くと
「世界が滅びるって言われたらやるしかないじゃん」
と言って〈パサリ〉と地図を広げた。
その地図は、白いような蒼い光が点滅して目的地を示している。
そう、私たちの今の目的地は古い遺跡だった。
王に「魔王を倒せ」などという命令を受けて行動するうちに、やはり武器を集めて対抗することになったのである。
「まぁいいんじゃない?」
クレイは言った。
「それで私達の実力が高まるんだから」
「そうだな。きっかけは何であれ…」
とクレイに続いて柊が呟いた。
「ああもう!どいつもこいつも!…まあ私も強くなりたいけどさ、無理やりやめさせる必要ないじゃん…」
そう。彼らは元々強くなりたいというのに修行をやめる羽目になり、何故か放り出されて先ほどの命令である。
それを言ってしまえば彼女の怒りは最もな…気もした。
それから歩き続けると、やがて<クレイドル遺跡>とかかれた立て看板の前に着いた。それは不恰好で、長い間風雨にさらされたことを示していた。
見上げると、青い空ととてつもなく大きな遺跡が視界に入る。
「…じゃあ、行くよ」
こうして彼らは魔王を倒す旅の第一歩を踏み出したのであった。