表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

人材募集 AI受け入れます その一

Trash Box Online 総合スレ 11389より


3 名無しのごみくず

ここが新しいゴミ箱ね


5 名無しのごみくず

>>3 回収よー


9 名無しのごみくず

>>5 ゴミバコモアイシテ


17 名無しのごみくず

しかし、『ダンジョンクエスト』も正規公開の方に行くし、ゴミ箱の中でまともに遊べるのが減ってきたな。


35 名無しのごみくず

>>17 VR監視機構からすればTrash Box Onlineは目の敵だからな。

まともなゲームエリアを救済する事で、その不道徳性を糾弾して潰したいんだろうよ。


37 名無しのごみくず

かくして、このゴミ箱の中はセックスとギャンブルとバイオレンスばかりになると。

人間の業たぁ深いな。


41 名無しのごみくず

仕方あるまいて。

そもそもこのゴミ箱がVRハザードの緊急避難先になっていたようなものなんだから。

まともなのが表舞台に出てゆくのは世の流れさ。


52 名無しのごみくず

>>41 そういえば、円卓公式BBSに申請受理報告が来ていたVRMMOにあの『ユグラドシル・クロニクル』が来るって本当か?


55 名無しのごみくず

>>52 なんだそれ?


56 名無しのごみくず

>>55 これだから最近の若いやつは……


57 名無しのごみくず

>>55 自分で調べろ


60 名無しのごみくず

あれだろ。

『エターナルクエストファンタジア』のVRハザード最大の被害者で、本邦初のVRMMOになるはずだったゲームだろ。

ごみ箱公式の『ユグラドシル・クロニクル』公式HP見てきたけど、あれの環境データの一部を入手したからそれのみの公開らしいな。


67 名無しのごみくず

はい。解散。


73 名無しのごみくず

>>67 どアホ!

公式の大部分を占めるメイド紹介ページを見て、あれがお色気オンラインである事に何故気づかない11!


74 名無しのごみくず

>>74 がたっ!


75 名無しのごみくず

>>75 おとなしく座ってろ!


84 名無しのごみくず

けど、あのメイドがいくらムチムチ駄肉メイドであったとしても、あれのAIってあれだよな?


88 名無しのごみくず

>>84 だよな。

外見でだまされると痛い目見るぞ。あの女郎蜘蛛。


91 名無しのごみくず

>>88 詳細


95 名無しのごみくず

>>91

あのメイド、Trash Box Online 創成期からいる最古参の一人。

あげくに今回の公開で円卓に席を持つからって、円卓関係者はうろたえまくっているぞ。


99 91

>>95 え?

あんなかわいい顔してそんな化物なの!?


100 超絶かわいいプリティーエルフのメイドプリンセス

>>99 こわくないですよー

ただのかわいいメイドさんですよー


101 名無しのごみくず

>>100 糞コテは回収よー


105 名無しのごみくず

>>100 忘れ物ですよ

つ(棒)







『Trash Box Online』 ポータルエリア パラティヌス



 プレイヤーID carestia takamiya

 プレイヤー名 karen

 同機率    65.7%


 プレイヤーID sinobu saitou

 プレイヤー名 saisin

 同期率    63% 


 プレイヤーID Freesia

 プレイヤー名 elf-maid-princess

 同期率    55.1% 



「それでは、第一回ちきちき人材募集面接会を始めたいと思います」


 円卓参加者に与えられるプライベートエリアにて、どんどんぱふぱふーと無駄な擬音を鳴らしてはしゃぐ駄メイドとそれをさめた目で見つめる俺とカレン。

 何でここに居るかというと、表向きに公開される『ユグラドシル・クロニクル』のNPC募集の為である。

 ゲームである以上、NPCにもいくつか役割がある。

 プレイヤーを助ける味方NPC、敵対するNPCに中立NPCとそれぞれのNPCにはある程度の自立性が求められるのだ。


「あなたが全部するんじゃないの?」


 カレンの質問はもっともである。

 まぁ、この面接そのものがカレンにVRMMOとはこんなものだと教える茶番みたいなものなのだが言わぬが花である。


「それをすると手間隙がかかるのと、どうしてもNPCに癖が出てしまうんですよ」


 ゲームシステムそのものを統括するフリージアには全てのNPCを操る事ができる。

 だが、たとえ幾重にも仮面を取替え続けても、どうしてもフリージアという個が出て来る事がある。

 『エターナルクエストファンタジア』のVRハザードを解決した最初の突破口は、この統括AIの癖を調べる事から始めたというぐらいだから、他のAIが手を繋いで調べると大概の仮面は剥がれ落ちるのだ。

 その為、NPCシステムを独立させて、他所からMODとして導入する事が近年では主流になっている。

 『管理AIに絶対服従』などの絶対命令を組み込むのみで連れて来たNPCMODによって多様性を確保しようという訳だ。

 他にも、他のゲームと共通できる箇所を増やす事で開発費や時間の短縮を狙っていたり、その手のMODを作る事で生活している人も居たりする。


「で、今回は誰を何人ぐらい雇うの?」


「とりあえずは、マップを回る敵性NPCかな。

 味方と中立NPCはシステムに関わるからフリージアに任せるが」


 カレンの質問に俺が、虚空にウィンドウ画面を広げて購入候補のNPCMODを眺める。

 この時点でNPCにはたいした自我は無い。

 その自我を育てるのは、俺達なのだ。


「一体ずつ雇うの?」


「カレン様。

 さすがにそれだと効率が悪いので、適正NPCは種族ごとの購入になっているんですよ」


 お茶を入れながらカレンの質問にフリージアが答える。

 たとえば、ゴブリンのAIを購入した場合、その購入AIは基本ボスモンスターのゴブリンウォーリアーでありその取り巻きまも対象に含まれるという感じ。

 だから、もう一つ別口からゴブリンのAIを購入した場合、同じゴブリンなのに行動パターンに差が出るという訳。


「ゴブリンは基本だよな。

 各マップごとに別AIを用意するか」


 真剣に眺めると、その種族の多さに苦笑するしかない。

 ほぼ最初にPCと当たるNPCなだけに多種多様なゴブリンが用意されており、同時に物語に関係がないクエストも多数揃えられている。


「やっぱり作り手が違うと姿形も違うわね。

 こっちはゴブリンシャーマンなんだ」


 ゴブリンウォーリアーの取り巻きは剣と斧を主体とした直接攻撃系のゴブリンが主体となっているのに対して、ゴブリンシャーマン系は弓やスリング系の間接攻撃のとりまきが主体となっている。

 これに、ゴブリンウォーリアーとゴブリンシャーマンの関係を同盟に定義しておけば、マップ上で仲良く提携してプレイヤーを襲うという訳だ。


「こっちの、直接間接一体型のゴブリンロードは購入しないの?」


 カレンも虚空に出した画面で無数にあるゴブリンAIを眺めながら尋ねる。

 それに答えたのはフリージアだった。


「別にかまいませんよ。

 一体型は、それゆえに容量が大きいのですが、うちの場合それを無視できる容量を持ったサーバーですし。

 ただ、自我形成において万能型より特化型の方がキャラクター形成は有利なんです。

 長所と短所がはっきりしているのは、キャラが立てやすいんですよ」


 フリージアの説明に俺が乗っかる。


「あとは、それを使ってクエストを作る事でキャラ定義をしてゆく事だとかな。

 たとえば、ゴブリンウォーリアーとゴブリンシャーマンの一族が互いに敵対していたとして、そこに他所から新たなゴブリンロードがやってきてこの二人が手を組んだりとか。

 クエストがらみで、なんとなく関係が整理できると同時に、キャラクターが見えてきただろう?」


「ご主人様。

 せっかくなので、そのアイデア頂きます」


 サブクエスト『ゴブリン族内紛』の誕生である。

 他にも、ファンタジーでおなじみの敵キャラなだけあって、種族も多いがシナリオも付随しているのも多い。

 ちなみに、『ユグラドシル・クロニクル』の物語そのものに影響を与えるクエストをメインクエストと呼び、それに関係せずにアイテムなどの報酬を与えて完結するクエストの事をサブクエストと言う。

 さらに、複数のゲームをまたいで行われるクエストをグランドクエストと呼んでいたり。


「これ凄いわね。

 『ゴブリンキングダム』って事は王国かしら?」


「その通りです。カレン様。

 ボスモンスター、ゴブリンキングを頂点にゴブリン系十種と専用マップつきの大型複合MODですね。

 世界樹連盟公認グランドクエストMODですから、買うならばどうぞ」


「世界樹連盟?」


 首をかしげたカレンの言葉に俺が答える。

 それをしながら、フリージアからまわされた『ゴブリンキングダム』最新バージョンの内容をチェックして問題がない事をこっちでも確認。


「うちが所属する予定のファンタジー系VRMMOの相互互助会組織の名前。

 カレンにピンと来る名前で言うならば、ギルドって事になるのかな?」


 世界樹というのは、ゲームのネタ的にありふれているらしく、この『Trash Box Online』上において58本もの世界樹が聳え立っている。

 これらのゲーム間を相互に行き来する事で、ゲーム性を高めようというのがこの互助会の目的である。  

 円卓とは別に集まって色々な議題に応対するあたり、ギルドと呼んでも問題はないだろう。


「で、どうします?

 世界樹連盟に参加している他のゲームにあるサーバーから『ゴブリンキングダム』のパスを繋ぎますか?

 それとも、こっちのサーバーでも『ゴブリンキングダム』を抱え込みますか?」


「どう違うわけ?」


「値段が違います」


 カレンにどや顔で言ってのけるこの駄メイド。

 どうしてくれようか。


「安いのは、他所のゲームからゴブリンがやってきて悪さをするという設定。

 高いのはゴブリンをこっちで抱え込んで、他所にも悪さできる設定。

 なお、こっちで抱え込むと他のサーバーとの対抗戦グランドクエスト『ゴブリンウォー』に参加できたり」


「何か、シミュレーション みたい」


 カレンの感想は間違っていないと思う。

 基本、『Trash Box Online』というのは場の提供が最大のポイントであって、どう遊ぶかについてはそれぞれのゲームに任せられているからだ。

 こういう交流系クエストは色々な人と知り合う機会になるので大事にする事にしよう。


「フリージア。

 『ゴブリンキングダム』もこっちで抱え込んでしまおう。

 さっきの、ゴブリンの内輪もめのイベントと絡めて、グランドクエスト『ゴブリンウォー』に登録しておいてくれ」


「わかりました。ご主人様」


 そして、十数秒後に俺たちの目の前に現れる四体のゴブリン達。


「こぶこぶ」

「ごぶ」

「ゴブー?」

「ごぶー」


「……日本語で喋って。お願いだから」


「あ、いいのですか?」


「「「しゃべれるんかい!!!」」」


 という、ある意味ファンタジーお約束のコントをやって改めてゴブリン達の自己紹介タイムに移る。


「ゴブリンウォーリヤーです」

「ゴブリンシャーマンです」

「ゴフリンロードです」

「ゴブリンキングです」


「何か、あまり変わらないわね」


 カレンは汎用雑魚モンスターに何を求めているのだろう?


「この時点では性格設定もしていませんからね。

 簡単な性格設定をカレン様にやってもらいましょうか?」


「え?私?」


 性格設定と言っても、せいぜい「きょうぼう」とか「こうかつ」とかつけるだけである。

 さすが汎用雑魚モンスター。

 もちろん、オンリーワンのゴブリンAIも作れるし存在する。

 値段は高いし手間もかかるが。


「うーん。

 どうしようかな……」


 悩む事30分。

 俺達のアドバイスのもと、カレンによって性格を決定されたゴブリン達は以下のとおりである。


 ゴブリンウォーリヤー

 性格 のうきん

 直接攻撃主体 

 配下モンスター ゴブリン(棍棒装備)


 ゴブリンシャーマン

 性格 こうかつ

 間接攻撃主体

 配下モンスター ゴブリン(スリング装備)


 ゴブリンロード

 性格 ごうまん

 直接間接攻撃セット

 配下モンスター ゴブリン(棍棒装備) ゴブリン(スリング装備)


 ゴブリンキング 

 性格 やしんてき

 直接間接複合攻撃中心

 配下モンスター ゴブリンファイター ゴブリンアーチャー ゴブリンランサー

 グランドクエスト『ゴブリンウォー』参戦時、ゴブリンキングはゴブリンウォーリヤー・ゴブリンシャーマン・ゴブリンロードを配下として扱う事ができる。



「何だか敵なのにこうやって作っちゃうと愛情出ちゃうわね」


 わかる。わかるぞカレン。

 この『Trash Box Online』はそういう無駄に凝りすぎて作っただけで満足したものがそりゃもういっぱいあるのだから。

 それらにゲームという方向性を付与させたこの駄メイドがいかに苦労したかはひとまずおいておくとして。


「きりが良いので、少し休憩しましょうか」


 というフリージアの言葉でお茶休憩開始。

 続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ