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閑話7:青の村(後編)
周りの虫を払いのけ、彼の剣が少年の胸に吸い込まれた。
そのまま払いのけると、少年の体は二つに分かれた。
けれど、その体が再び合わさり、少年は悲しそうに笑った。
次の瞬間、彼の中から巨大な蟲が飛び出してきた。
これが元凶かと、皆で倒した。
けれど、少年は胸に大きな穴を開けたままうつろな目で空を見ていた。
いつ蟲が少年に宿ったのか、少年は何を思っていたのか、もう誰も知りことはできなくなった。
村を離れる日、彼はひどく悲しげな目で村を見ていた。
少年の名誉が保たれるよう、皆で心を砕いたが、村長や長老はうすうす気づいているようだった。
蟲に食われる人も、体を乗っ取られる人もけして少なくはないらしい。
だから皆何も言わなかった。
私も、これが最後の被害者であることを祈ることしかできなかった。