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35-4.消え行く色
花が大きくたわみ、一本一本が人ひとり包みこめそうなほど大きくなり、覆いかぶさってきました。
自分の答え、それは「何も答えられなかった」。
あちらには、家族がいます。
薄い、膜を隔てたようになっているけど、大切な記憶。
そしてこちらには、大事な仲間がいます。
出会ってからの期間は短いけれど、色々な苦楽を共にしてきました。
両方を考えると、頭の中でぐるぐる、ぐるぐると色々な言葉や思いが回って、言葉が出ません。
花が覆いかぶさってきます。
動けません。
そして、意識が消えてゆきます。
後に残るのは、闇。
花の向こうの二人のヒトは、悲しそうな、でも理解してくれたような顔で微笑んでくれました。
自分の願望だったかもしれないですが。
その笑みに妹の顔と声が重なり、そして意識は閉ざされました。
『どうして帰ってきてくれないの…?』