35-2.白の花
足元へと白い花が迫ってきます。
ひそやかな鈴のような音、笑い声のようなささやき声。
そんな音が聞こえる。
まるで祝福するように。
白い花が寄り集まり、目の前で大きな蕾を作りました。
ゆっくり大きな花弁が開き、大きな花が身体を覆い隠してきました。
自分は何も出来ず、何も考えず、ただ、自分を覆いつくそうとするその花を見ていました。
花の向こうに見える二人のヒトのうち、
黒いヒトは再び目を閉じ、白いヒトはゆっくり立ち上がろうとしています。
白い人が手に持った大きな丸い、透明な水晶のような珠は、ほのかな光を宿しています。
それを高々と掲げると、強い光が辺りを包みました。
意識が途切れるその時、白いヒトはきれいに笑い、手を振りました。
思い出すのは白い光と透けるほど薄い花弁、そしてきれいなあの白いヒト。
次に気づいたのは、最初に降り立った、あの森でした。
幸いなことに、装備は赤い塔に登ったときのままでした。
そして。
今の僕の記憶は、最初にこの森に来たときから始まっています。
どこからか来た記憶はあるのに、どこだかわかりません。
時々帰った記憶はあるのに、方法はわかりません。
けれど。
今の自分には一緒に過ごす仲間がいる、かけがえのない仲間が。
そしていずれ、この地に根を下ろし、すごしていくのだろうなと、そんな予感がします。