35-1.黒の花
足元の花が徐々に黒くなっていきます。
ささやきの様な声が広がり、耳にうるさいくらい響きます。
それなのに、何を言っているのか聞こえません。
花が大きくなり、背丈よりも高くなります。
花の向こうにいる二人の人。
白い人は再び目を閉じ、黒い人は立ち上がります。
今まで気づかなかった、彼女の手にある王杓?杖?それから、光が洩れます。
黒い光。
周りが黒で包まれ、花が覆いかぶさり、意識が途切れました。
気がつくとベッドの上でした。
知らない天井だ、とかやろうと思ったんですが、起きた事に気づいたとたん妹に抱き付かれました。
何がなんだか分からないのですが、自分は1週間ほど倒れていたそうです。
新しい携帯を買った日から。
他にも何人も同じような症状で入院している人がいて、起きないかと思ったと、ひどく泣かれました。
今、携帯を見てもあのアプリは入っていません。
夢だったのでしょうか?
ただ、
ゲームの合間に戻ってきたときに書いたメールや、日記。
そのほか細々したもの。
倒れていたはずなのに、存在します。
あのゲームは何だったのでしょうか。
思い出すのは仲間でも、イベントでもなく、最後に見た黒い花。
その隙間から見た黒いヒト。
そしてその微笑み。
もう一度と誘われたら、また行ってしまうかもしれません。
そうしたら、今度は帰ってこれるのでしょうか。