28.強制ログアウトです
さあ、町に帰るぞ、と思った瞬間。
周囲に一瞬ノイズが走りました。
え?と思う間もなく、周りの動きが止まり、セピア色になり、そしてノイズが周囲一面を襲いました。
まるでテレビの砂嵐画面のように、どんどん周りが消えていきます。
色が消え、景色が消え、そして音も。
ザーザーという耳障りな音が大きくなり、周囲の砂嵐とともにはじけました。
残ったのは、真っ暗な空間。
自分の手すら見えない暗闇。
困ったな、というのが正直なところです。
動くことすらできません。
なのに、なぜか焦りません。
普通はこんなことがあったら、動き回ったり、叫んだり、しゃがみ込んだりしそうなものなのに、何もする気が起きません。
強いているならボーっとしているような状態でしょうか。
感情が鈍麻している?
そんなことが思い浮かびましたが、すぐに消えました。
そして。
ぱちっと何かが弾けるように真っ白な光が現れ、空間全体を覆いました。
ああ、ログインの時の光に似ているな、と感じたのがこの空間の最後の記憶でした。
気づくといつものように、ベットに腰かけ携帯を握っていました。
全身じっとりと汗をかいています。
強制ログアウトだったようです。
なんか変だな、と感じても、それをすぐに忘れました。
色々な不自然さを、すべて忘れました。
これは現実?