8:山葵とパンケーキ
さて夕飯は何にしようかとリコさんに食べたい物があるか聞いてみた。
「以前作ってくれたプルコギが食べたいのだがよいだろうか」
「じゃあ材料を買って帰りましょうか」
包んで食べる(包み菜と言う)サンチュは流石に無いので、代用としてレタスを使用している。
個人的には大根の千切りも一緒に巻くのが好きだ。
お肉は大目に・・・かなり多めに買って帰宅した。
プルコギの山盛り、レタスの山盛り、あっさり玉子スープにご飯。
これにキムチかカクテキがあれば完璧なんだけど、韓国唐辛子が手に入らない(そりゃ異世界だしね)
以前普通の唐辛子で作った事があるけど味が微妙に違ったんだよ。
色は薄いのに辛さだけが際立ってしまって、それ以降は必ず韓国唐辛子を購入するようになった。
まぁ無い物ねだりをしても仕方がない。
さぁ食べようかと言うタイミングでデイルくんがやって来た。
「やっぱり・・・、ずるいですよ隊長!」
「ぶっ・・・」
「ずるくはないだろう、これは労働の対価としてキクノが用意してくれたんだ」
「労働って何したんです?」
「皿洗いだ」
「隊長が皿洗い・・・ 大変だキクノさん。明日は天気が荒れるかも!」
「えぇぇ・・・」
ゴンッ
デイルくんの頭にリコさんの拳骨が落ちたようだ・・・
次の非番の日に手伝うと言う条件で、デイルくんはプルコギにありつく事が出来た。
デイルくんは嬉しそうに頬張っている、リスみたいでちょっと可愛い。
でもね? 私抜きで2人で決めないでくれるかな? いいけどさ。
さて、丼物と言っても所詮は米の上におかずを乗せればいいだけなので考え方によっては無限に種類がある訳だ。
なので案外似たり寄ったりな物もあったりする。
そこで私は魚と肉、交互に使う事にした。
初日が親子丼だったので次の日はマグロ丼にする事にした。
幸い魚は見慣れた物も多かったのだ。勿論見慣れない摩訶不思議な魚も売ってあったけど試してみる勇気がまだ無かったりする。
ちなみに、鉄火丼とマグロ丼の違いは酢飯か酢飯じゃないかだけだったりする。
酢飯が受け入れられるかどうか分からなかったので取り敢えずマグロ丼にしたのだ。
生の魚(刺身)が受け入れられたのは兵団の寮で確認済みだ。
ドキドキしながら営業開始。
するとすぐに客が入って来て忙しくなる。
立て看板にはちゃんと生魚(刺身)を乗せた丼物と書いておいたので、文句を言う人は居ない。
どちらかと言うと興味津々といった感じだ。
添えてある黄緑色の物は山葵という薬味でツンとした辛みがあるからまずは少量から試して欲しいとも書いておいたのに、何故ガバッと行く人が多いかね。
皆涙目になりながら水で流し込んでいるじゃないか・・・
なのにやっぱり文句を言う人はおらず、癖になる辛さだとハマる人が続出した。
いや、あのね?山葵だけで堪能しないでいただきたい。ちゃんとマグロと一緒に味わってくれ!
次回から『山葵の一気食い禁止』と書いておこうと思う。
「キクノさん、山葵だけお代わり!」
ゴンッ!
そう思った瞬間に兵士の1人がそう言ったので遠慮なく拳骨を落としておいた。
「あのね、山葵はあくまでも薬味なの。山葵だけで食べる物じゃないのよ。
マグロの旨さを引き立てる為の物なんだから一気食いするんじゃありません!」
「す、すみません・・・」
それを見てそっと手を下げる人がチラホラ・・・
おのれ・・・ いっその事山葵丼とかにしてやろうか。
その後は皆ちゃんとマグロに山葵を乗せて食べるようになったのでほっとした。
そしてこの日は13:30に50食完売となった。
開店してから6日、この日は定休日だ。
曜日と言う概念がないので5日間営業2日間休みにしてある。
休みは1日でもいいかなと思ったけど、今後の事を考えて2日にした。
夕飯の時間帯にも営業して欲しいとの声が多かったので、今はまだ無理だけど考えておくと返事をしてある。
夕飯の時間帯にも営業をとなると家の事とか、のんびりととか自分の時間が持てなくなりそうだ。
後から定休日を増やすよりは最初から2日にしておく方がお客さんも慣れてくれるだろう。
他にも牛丼を頻繁に出して欲しいとか、皿洗いのバイトを雇えばとかの声もあがった。
牛丼のリクエストは本当に多いので、5日に1回は牛丼を入れてもいいかもしれない。
カリカリ牛丼とつゆだく牛丼を交互に出せばマンネリも防げるだろうし。
ただバイトについてはまだ考えていない。
確かに忙しいし人手が欲しいなと思う事もあるけれど、短時間勤務になる事と信頼できる人が見つかるかどうかの不安があるのだ。
まだ開店してから日も浅いのに、すでに偵察に来てますかね?ってな人の姿が見えるんだよね。
食事を楽しむというよりも店内をジロジロと見まわしたり、カウンターの中を覗こうとしたり。
余りにも目に余る様なら追い出そうかなとは思っている。
なのでそう言った人達の部下とかがバイトとして入り込んでも面倒でしかないのでバイトはしばらくいいかな。
洗濯物を干して掃除も終わらせ、せっかくの休みだからお昼は外食しようと町中へとやって来た。
アマンダさんがパンケーキの美味しいお店を教えてくれたのでそこへ行ってみようと思う。
『 カフェ・ペンギン 』 ここだ。
中へ入るとコーヒーのいい香りが漂っている。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ~」
明るい女性の声が響く。
奥の方の2人掛けのテーブルが空いていたのでそこへ座る。
メニューは壁に貼ってあった。
トマトソーススパゲティ、ナポリタンのような物だろうか。ちょっと気になる。
チキンライスにパエリア。スパイシーパイソンライスって何・・・
パイソン・・・パイソンって蛇だった気がする、しかもニシキヘビ。
え? あれを食べるの? ちょっとそれは遠慮しておこうかな。
もっとも今日はパンケーキと決めてあるのだけども。
「すみませーん、パンケーキセットをカフェラテでお願いします」
「はーい、少々お待ちくださいね~」
ふふふ、楽しみだ。
ワクワクしながら本を読んで待っていると視界に人影が入って来た。なんだ?
「あれぇ、キクノさん。奇遇ですね、相席してもいいですか?」
声を掛けて来たのはデイルくんだった。
どうやら非番のようでデイルくんもアマンダさんお勧めのパンケーキを食べに来たらしい。
デイルくんはセットの飲み物をホットミルクにしたようだ。
「僕コーヒーや紅茶は苦手なんですよねぇ」と照れ笑いをする姿は可愛かった。
「お待たせしました~」
届いたパンケーキはふわっふわの厚みがある物でたっぷりのバターと蜂蜜がかけられてあって美味しそうだ。
このほんのりとした甘い香りがたまらん。いただきまーす。
うわ、うまっ。口当たりが柔らかでスフレを食べているようだ。
このバターと蜂蜜の混ざり合う感じもたまらん。
あぁこれはもう、天使のパンケーキじゃん!
「ぶふっ、キクノさん。声漏れてますよ」
「げ、マジで? 失礼しました・・・」
久々の甘味だったし旨過ぎて油断してしまった。
お店のお姉さんもクスクスと笑っている、恥ずかしい。
その後は声に出さない様に気を付けてパンケーキを堪能した。
あぁ美味しかった、また来ようと思う。
店を出た後はデイルくんとも別れて買い物を済ませて家に戻った。
花の苗も買って来たので明日植えようと思う。
パンジーとビオラは青紫や白を中心に、それにマリーゴールドは黄色の物を。
なんとなく売っていた花的に季節は晩夏か秋口かなと思った。
読んで下さりありがとうございます。




