27:吹っ切れた気がする
王立図書館とか言うからてっきり城の中とか隣とかにあるのかと思っていたけど違った。
この町の中にあった。
どうやら市立図書館と同じ様な感覚でいいんだろうか、規模はまったく違って大きいけども。
スカイラーさんが受付で手続きを済ませ、聖女や異世界人についての文献がある部屋へと案内してもらった。
他の国の聖女や異世界人についての文献もあるようで、私は気になっていたド・ウォール国の異世界人についての文献を読んでみる事にした。
なになに・・・
ド・ウォールの人々の平均寿命は60年? 短いっ!
現れた異世界人は59歳だったのか。
59?! それで異世界にきちゃったの? うわぁ大変だったろうな。
しかも平均寿命が60って聞いたら驚きまくりだろうな・・・
ぶっ、召喚されて即刺されたって何・・・
城内で揉めたってなに、ちょっとそこ詳しく!
え? 獣人とかいるの?! 城抜け出したの?!
なんかとんでも大冒険したのね・・・
最終的にはド・ウォールの男性と結婚して末永く幸せに暮らしたと。
幸せだったならよかったよかった。
って末永くって何歳までよ! お相手の男性の年齢はよ!
え? そこは詳しく書いてないんかい!
だめじゃん、参考にならないじゃん! えぇぇ・・・
「キクノさんどうでした?」
「だめだね、参考にならない。
末永く幸せに暮らしたとしか書いてないや」
「こっちも同じですね。
現地の人と結婚して末永く幸せに暮らしたとか、
結婚はしていなかったけど養子を迎えて末永く幸せに暮らしたとか。
どれも詳しくは載っていないですね」
「私の方もだめだな。参考になりそうなものはなかった」
「俺の方もだ。ただ伝言めいたものが書かれていたぞ」
どれどれと見せて貰う。
もしこの先同じように異世界から来た人がいるならば
過去に捕らわれず、今に流されず、どうか自由に生きて欲しい
自分達の常識とこの世界の人々の常識は多少ズレているけれど
貴方を理解し好意を寄せてくれる人と出会えたなら
その手を放さずしっかりと掴んで幸せになって欲しい
その下には日本語で
【 そして貴族や王族が面倒になったらド・ウォールに逃げちゃえ! 】
と書いてあった。
なるほど、きっとこの人もお貴族様うんぬんで嫌な思いをしたんだろうな。
ド・ウォールか。
「この文字はキクノは読めるのか?」
「読めるよ、祖国の文字だからね」
「何と書いてあるのだ」
「帰ってから教えるよ」
ここで大っぴらに言ってもどうなんだろうかと思うからね。
面倒臭い連中に聞かれてド・ウォールに興味持たれても迷惑がかかってしまうし。
これ以上居ても何も情報は得られそうにないので帰宅する事にした。
王立図書館から外へと出て見ればすっかり空がオレンジ色に染まっていて、思ったよりも長時間居たようだ。
「もうこんな時間なんだね」
「どうりで腹がすく訳だ」
「戻ってから作るのも大変でしょうし食べて帰りますか?」
「それとも屋台で買って帰るか?」
「そうだね、何か買ってから帰ろうか」
屋台が並ぶ通りへと向かい、それぞれが食べたい物を買っていく。
私はビーフシチューに似たシチューにした。
ごろっと入っているお肉がホロホロに柔らかくなっていてコクもあって美味しいんだよね。
リコさんとスカイラーさんが分厚い肉の焼いてあるやつを、デイルくんは大き目のバケットサンドを。
デザートにとベリーがたっぷりのっているパイも買っていた。
帰宅後食事を済ませて、お茶を飲みながら話をする。
「それでキクノ、あれは何と書いてあったのだ」
「面倒臭くなったらド・ウォールに行くといいって書いてあったんだよ」
「ド・ウォール。何処かで聞いたような」
「ほら、木彫りの熊とたい焼きの国だよ」
「ああ、なるほど」
「なぜド・ウォールを勧めてきたんでしょうね」
「肝心なところはボカして書いてあったからよく解らないけど
結構気が短い人だったのか、それとも城の人達が理不尽すぎたのか。
城から逃げ出して辺境の地でのんびりと暮らしたらしいんだけどね。
それが発端でド・ウォールが出来たらしい。
以降異世界人の駆け込み寺、逃げ場みたいな感じになってたみたいね」
「ほう、一度ド・ウォール国の歴史を読んでみるか」
「私も詳しく読んでみたいかな、どんな人だったのか興味ある」
「もしかしてキクノさん、ド・ウォールに行ってみたいですか?」
「そうだねぇ、機会があればって感じかな今の所は。
あんまりにも面倒臭くなったらわかんないけど」
「その時は僕も一緒に行きますからね」
「と言うかさ・・・今更なんだけどデイルくん今日お見合いだったんじゃ?」
「大丈夫です、朝一番で断りの手紙は出しましたから」
「流石と言うか・・・」
「元々兄に来た話ですからね」
その後もあれこれと話をして、夜も更けたので寝る事にして解散となった。
悩んでも考えても答えはみつかりそうにないんだよね。
そしてたぶん寿命はきっと元のままだと思うんだよ、長寿になってたらそう書いてありそうじゃない?
過去に捕らわれず、今に流されず か・・・
確かに過去に捕らわれてもね、元の世界に戻れる訳じゃあるまいし。
お貴族様の事情に振り回されたくも無いし。
考えてみれば平均寿命が何年だろうが病気だったり事故だったりと色々ある訳だし。
長かろうが短かろうがなるようにしかならないよね。
そう思えばなんだか吹っ切れたような気がした。
「デイルくん、きっと私の方が先にばぁさんになると思うんだ。
しわしわのヨレヨレで腰も曲がってるかもしれない。
その時にまだデイルくんはきっと若いままだと思うんだよね」
「大丈夫ですよ。
キクノさんが歩けなくなっても僕が抱きかかえて運びますし。
僕はキクノさんがしわくちゃになっても可愛いと思いますけど」
「いやいや、そう言うけど年寄りの世話って案外大変なんだよ?」
「デイルだけじゃ心配か?」
「別にデイルだけじゃなくて私達も居るからそこは安心してくれていい」
「へ? どういう事?」
「なんだデイル、まだ言ってないのか」
「あ、えーっとですね。僕と隊長、団長の3人は血の繋がった兄弟なんですよ」
正確にはリコさんとスカイラーさんは前妻の子、デイルくんは後妻の子なのだそうだ。
デイルくんの母親とリコさん達は別に仲が悪い訳でも無く、デイルくんともこうやって仲良しだ。
ただそのお見合いを逃げ出した兄弟とやらは自由過ぎる人なのだとかで・・・
そっか、兄弟か・・・
気にもしてなくて聞かなかった私も私だけど、いやまぁ特に言う必要もないんだけどさ。
いやそうじゃなくて、それとどう関係があるのだろうか。
読んで下さりありがとうございます。




