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25/28

25:些細な事?

改装後の初日はやっぱり牛丼にした。

今回はつゆだく牛丼だ。

お肉もちゃんと牛系の魔物のバラ肉だ。

私としては適度な脂があるバラ肉が好きなんだよね。

あまり火を通しすぎるとお肉が硬くなるので、注文が入ってから小鍋にタレを分けて肉に火を通すようにしている。


最近は祭りでエールを振舞ってくれたお貴族様も来てくれている。

ちゃんと一般人と同じような服装で来てくれているので好感が持てる人だ。

エイキンスさんと言う名前で爵位は知らないし聞こうとも思わない。

エイキンスさんも言わないのでひけらかす気も無いのだろう。

ただある程度力のある人なんだろうとは思う。

他のお貴族様からの使いがエイキンスさんの姿を見るとそそくさと逃げ帰るからだ。


「人の顔を見て逃げかえるような者など、ろくでもない。

 食べたいのであれば通えばよいだけの事」


ごもっともで。


デイルくんも毎日皿洗いとしてお店に立つようになり、若い女の子が来る率が上がったような気がする。

注文そっちのけでデイルくんに話しかけたり、色目を使ったりしているがデイルくんは相手にせず追い返している。


「ここ丼物屋なんですけどね。

 ああいった人達は何を勘違いしてるんでしょうか」

「ちゃんと客として来るならいいんだけどね」


すると強面の常連さん達がその日からは出入り口付近に座る様にして女の子達を威圧するようになった。


「ちょっとなんなの、ガラの悪い店ね」

「こんなんじゃ中に入りにくいじゃないよ」

「えー、せっかくのいい男が見えないじゃない」


いやだからね?

何をしに来てるのかね、デイルくんは見世物じゃないんだけど。

ここは一発物申すべきかと表へ移動しようとしたのだけど、デイルくんが目くばせをして来た。

ん? 外を見ろ?

うおっ、スカイラーさんが鬼の形相で立っている。

あ、女の子達が群がった。何か言っているけど聞こえない。

女の子達の顔色が青くなった。いったいスカイラーさんは何を言ったのだろうか。

スカイラーさんがニッコリと微笑めば女の子達は蜘蛛の子を散らすように走り去っていった。

何があったんだろうか。


「やあキクノ。まだ残っているかな?」

「まだあるよ、いつものダブル(2杯)?」

「ああ、頼むよ」


スカイラーさんは副町長としてリコさんを支えているようだ。

リコさんに騎士団を辞めるなら町長を交代しろと言われたらしいけど、お披露目も済んじゃったしね。

でも後任が見つからないからと町長を断ったのによく辞めれたよね。


「ああ、それな。

 あの薄ら禿モルソンが例の王子の専属になれとか言ってきやがったんでな」

「うげぇ・・・」

「冗談じゃないと辞めてやったのさ」

「なるほどな。確かにやってられんわ」


そう言えばあの後継者争いみたいなのはまだ続いているんだろうか。

国王陛下はまだまだお元気だし、そう焦って決める必要もなさそうではあるけど。

陛下もじっくりと見極めるつもりなんだろうとスカイラーさんは言っていた。


「そう言えば、さっきの女の子達に何を言ったの?

 蜘蛛の子散らすように逃げていったけども」

「ん?そんなに若い男が好きならば

 娼館ででも働けばいかがです?と言っただけだよ」

「ぶっ、思ったよりもえげつない言い方だった・・・」


確かにそんな事言われたら逃げ出すだろうな。

逆にそれでも残っていたとしたら怖い・・・


この日も順調に完売。

夜はチンジャオロースにしようと思う。

スカイラーさんとデイルくんからのリクエストだ。

筍の食感とお肉との相性の良さが気に入ったんだそうな。

筍の水煮の瓶詰を見つけた時は土佐煮も作れるし筍ご飯も作れるしと嬉しかったなぁ。



定休日のある日、私はのんびりと森へとやって来ている。

勿論ハティ達と一緒にだ。魔物と遭遇したら怖いので1人でなんか行けない。

家でゆっくりとしていたかったんだよ?

だけどデイルくんが今日の夕食は任せて下さいなんて言って、夕方まで時間を潰してくるように言われたんだよね。

私が居たらあれこれ手を出しそうだからって・・・うん、出すかもね。ははは・・・

何を作ってくれるのだろうか、楽しみだ。


『 キクノ こっちへ 見せたい場所がある 』

『 きっと喜ぶ 』

『 うんうん 僕達のお気に入り 』


ハティ達がグイと背中(位置的にはお尻)を押してくる。

なにやら見せたいお気に入りの場所があるらしいので付いて行く。


案内された先にあったのは、一面の花畑だった。

見た目はヒナギクみたいだけど、匂いはラベンダー?

ちょっと脳が混乱しそうだけど、綺麗だしいい匂いだ。


『 どう? 綺麗でしょ 』

『 夜になるとまた景色が違って見える 』

『 でも夜は危険だから昼で我慢して 』


どう危険なのかは分からないけど、昼間でも十分綺麗だ。


「連れて来てくれてありがとう。綺麗だね」

『 我等はデイルの様に飯は作ってやれぬからな 』

『 いつも感謝している 』

『 ありがとうの気持ち 』

「私こそいつもありがとうね」


私がよるぐっすりと眠れるように、ハティ達も交代で夜回りしてくれていた。

食料を狙う鼠なんかも退治してくれているしお店にやってくる変な輩も追い払ってくれている。

すっかり頼れる相棒であり家族なのだ。

せっかくだから、ここでお昼ご飯にしようとホットドッグを取り出す。

ハティ達はソーセージだ。

景色のせいか、いつもより美味しく感じる。


『 時にキクノ デイルと番うのか 』

「ゴフッ ゴホゴホッ」


行き成り何を言い出すかね、喉に詰まるかと思ったじゃないか。

そりゃ確かに最近は一緒に居る時間は増えているけども。


『 デイルの事は嫌いか? 』

「嫌いではないよ? 嫌いなら一緒に仕事したりしないでしょ」

『 では雄としてはどうだ 』

「ぶっ 雄って・・・ うーん、そういう目で見た事ないからな」

『 デイル いいと思うんだけどな 』

『 我もデイルは好ましい 』

『 キクノ デイルと一緒だと楽しそう 』

「そりゃね?楽しいよ?あの笑顔に癒されるし可愛いし」

『 キクノ、人間の雄に可愛いは駄目だろう 』

「え?そう? だって年齢的にさ」

『 そうは言うがな、寿命的に考えて見ろ 』

『 長い寿命の中で10や20の差なんて些細な事 』

「いやいや、些細な事ではないでしょ」

『 キクノ 寿命が何年か知っているのか? 』

「長くて100年でしょ?」

『 こちらの人間は300年くらいだが 』

「は? え? そんなに長いの?!

 いやでも私は異世界人だから100年のままだと思うんだけど。

 え? うそでしょ300年も生きるのこの世界の人!」

『 落ち着けキクノ 』

『 ほらお茶飲んで 』


落ち着けと言われても落ち着ける訳がない!

300年も生きると考えれば10や20の差なんて些細な事だろうけども!

あれ? だったらスカイラーさんやリコさんの年齢だとまだ若手なんじゃ?

まだ仕事を引退するような年齢じゃないんじゃ?

えぇぇ・・・

だめだ、衝撃すぎて頭がまわらない。


「取り合えず家に戻ろうか・・・」


家に帰って一旦寝よう、そして落ち着いて考えてみよう・・・

読んで下さりありがとうございます。

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