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22/28

22:就任の日

新領主就任の挨拶当日、私は忙しかった。

お祝いは夕方からなのでお店は普通に営業して、営業を終えてからサラダラップを作りに掛かった。

その間に新領主館に勤める事になる執事長さんだの侍女長さんだのが挨拶へと来るし、お忍びで王妃様が嵐の様にやって来て挨拶代わりにとお菓子を置いてとんぼ返りして行ったし。


「ツバキとサクラの母君、これからは仲良くしてくださいませね!」

「は、はぁ・・・ 宜しくお願いします?」

「どうしても今日会っておきたかったんですの、ではごきげんよう~。オホホホ」


ごきげんよう~、オホホホじゃなくてね?

就任の式典だのお披露目だのと忙しかろうに何やってんすかね。

別に今日じゃなくても良かったんじゃないのかね、王妃様や・・・

護衛の騎士は疲労困憊して顔色悪かったし、可哀そうに。


王妃様と入れ替わりにスカイラーさんがやって来た。

あれ? スカイラーさんも今日は忙しいはずでは?


「キクノ、陛下を見なかったか?」

「ん? 陛下って国王? 顔知らないしな。

 王妃殿下ならほんのさっき来てすぐ帰って行ったけど」

「なっ、王妃様まで・・・あの夫婦は何をやっているんだ・・・」

「なんかすっごくフリーダムと言うかマイペースと言うか、ゆるいね?」

「まったくこちらの立場も解かって欲しいのだが」


「ちと尋ねたいのだがこちらにキクノと言・・・ うげぇスカイラー!」

「陛下!」

「ごふっ、陛下?! 噂をすれば・・・」

「すぐに戻るからと申したであろう!何故其方がここにおるのだ」

「それはこちらのセリフですね陛下! 

 今日は予定が詰まっていると申し上げたでしょうが!

 陛下がそうやって自由に動くから宰相殿がヤバイ事になってますよ!」

「なんだと! それは帰りたくない・・・」

「いやいやいや、陛下? 帰ってあげて下さいね?

 そもそもこのクソ忙しいさなかに何城抜け出して来てんですか。

 陛下ともあろう人が気軽に城抜け出していいもんでも無いでしょうがよ」

「あいや、そうなんだが。ツバキとサクラの母君に一目会っておきたくてな」

「はいはい、初めましてこんにちはどうぞよろしく!

 はいこれで挨拶も済んだし顔も合わせたね?

 ほれさっさと帰れ帰れ。

 やるべき事やってちゃんとした休暇にゆっくりおいで(来れるのかは知らん)」

「なるほど、サクラから聞いた通りの・・・」

「ほら陛下、キクノもそう言ってますし帰りますよ!」

「い、いや私はまだ話を・・・」

「却下! 王たるもの配下の者を困らせるな!」


さすがに蹴る訳にもいかないので背中をグイグイ押して馬車へと押し込んだ。


なんなのまったく。この国の王家って皆あんな感じなの?

普通の政務中に抜け出したとかじゃないのよ? ねぇ?

大事な式典があるんでしょうがよ、息子の婚約披露もあるんでしょうがよ。

城内ならまだしも、城外をうろつくんじゃないわよ!

大丈夫なのこんなゆるさで・・・


あー、だから聖女を召喚して嫁にとかってバカな考えする子が育ったのか・・・

モルソンと言い変なのばっかでまともな城勤めしてる人はおらんのかな。

いやきっといるはず・・・

なんにしろ、私を巻き込まないでいただきたいのだが。



お茶を飲んで気を取り直す。

さぁ、今度こそサラダラップを作ろう。


バァン!

「キクノと言う料理人はいるか!ただちに登城し料理を」

「うっさぁぁいっ!」 げしっ


なんなのもぉ! つい条件反射で蹴ってしまったけど誰よコイツ。

いきなり登城しろとか無理! 

例え前もって言われてたとしても無理! 行く気もない!

それに私は料理人では無いし、こっちはこっちで忙しいんだよ!


「これは王命であるぞ!」

「うそこけ、陛下そんな事なーんも言ってなかったし!」

「なっ・・・」

「ハティ、ノア、バスティ。こいつ等全員蹴り出して!」

『『『 承知 』』』

「何をするこの獣め!」

「うちの家族に向かって獣だと?ざけんな!」パコンッ


手に持って居た野菜を洗う為の桶を投げつけた。

ハティ達はちゃんと手加減を覚えた様で、威嚇しながら店の外へと蹴り出していた。

うんうん、手加減出来る様になってえらいよ。

外には常連さんが呼んで来てくれた兵士団の皆が待ち構えていて、ぐるぐると縄で縛って連行していった。


「オカン、撒くか?」


アンディさんが塩の入れ物を手渡してくれる。


「うん、ありがとう」


受け取って一握りし勢いよく撒いた。 二度と来ないで欲しい。

さて、急いで作らないと・・・

簡単なサラダラップにして良かったよ。

こうちょくちょく邪魔が入ると手の込んだ物は無理だったろう。


包むための生地は朝の内に焼き上げてある。(やっててよかったよ、ホントに)

葉物野菜やトマトにキュウリは切ればいいだけだし、鳥ハムも昨夜の内に作ってある。

ドレッシングはサッパリするようにレモンを加えた物にするつもりだ。


これ以上邪魔が入らない様に、ドアの前には3頭がででんと陣取って寝そべっている。

お陰で作業ははかどり、なんとか間に合わせる事が出来た。

出来上がったサラダラップを小さな木箱に詰めて会場へと運ぶ。

すでに多くの人が集まって賑やかになっていた。


「ああ、オカンさんこっちこっち。このスペースに並べて」

「場所空けてくれてたんですか、ありがとうございます」

「いいんだよ、皆オカンさんの食べ物を楽しみにしてんだから」

「ははは、私も皆さんの作った物が楽しみです」


サラダラップと子供用のクッキーを並べ準備が終わると司会者が、ってリコさん?!


「皆さんご存じだとは思いますが

 前領主及び前町長は不祥事が発覚しまくりまして解任されました。

 新しい領主にはチップ・ヘイルトンが

 町長には私エンリコが就任いたしました。

 共にこの地を、この町をより良い町へ。

 住みよい街へとする為に頑張ってまいりましょう。

 では新領主様、ご挨拶をお願いします」


「ご紹介頂きましたチップ・ヘイルトンです。

 顔なじみの方々も多いとは思いますので堅苦しい挨拶は抜きで。

 婚約者であるツバキも共にこの町の一員として頑張りたいと思います。

 まだまだ若輩者の2人ではありますが、どうぞよろしくお願い申し上げます」

 

リコさん、チップくん、椿ちゃんの3人が頭を下げるとどっと歓声があがった。

「よろしく」とか「無理せずほどほどに頑張れよ」とか「頼りにしてるからな」とか温かい言葉が多かった。

椿ちゃんは早速奥様連中にもみくちゃにされていた。

馴れ初めは?とかどっちからプロポーズしたのかとか、女性陣はそんな話で盛り上がっているようだ。

と思ったらそれは男性陣も同じだったようで、チップくんも酒を勧められながらアレコレと聞かれているようだった。


領地としてはそう大きくはないようで、この町もそう大きくはないけれど一応は領都だった。

そうか、ここ領都だったんだ・・・ 知らなかったよ。

チップくんが「オカンも安心してのんびり暮らせるように頑張りますから」なんて言ってくれて嬉しかった。

まぁ私も可能な事は協力するつもりだ。

なんせチップくんも義息子になる訳だし、この町がこの世界での故郷と言う事になるのだろうからね。


「キクノさん、サラダラップまだあります?」

「ごめんデイルくん。完売だ・・・」

「ぐっ、来るのが遅かったかぁ」

「まぁ今日は兵士団も忙しいだろうから仕方がないよね」

「ですね。それにしても皆さんいい笑顔ですね」

「それだけ新領主への期待が高いんだろうよ」

「僕達も町の皆が平和に暮らせるよう頑張らないとですね」

「頼りにしてるよ」


何処からか楽器の音色が流れて来て手拍子が始まり、踊り出す人達が出始めた。

どこかのお貴族様が大量のエールを振舞ってくれて、この日は夜中まで大賑わいとなったのだった。

読んで下さりありがとうございます。

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