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19/27

19:ナイスだよデイジー

それから3日、ハティ達は夜な夜な出掛けて行った。

悪事の証拠は見つけたけど、バスティの母親の毛皮を持ち出すのにてこずっているらしい。


『 剥製になっていたのだ 』

『 しかも台座にしっかりと固定されてある 』

『 無理に外せば毛皮に傷が入ってしまうんだ 』

「なるほどね。うーん・・・

 ボロボロになってもさ、破れてもさ、全部拾い集めて持って来れるなら

 直せるよ?」

『 それはどういう事だ 』

『 縫い合わせるのか? 』

「デイルくん、他言無用でお願いね。

 私魔法が使えるみたいなんだ。それで直せると思う」

「えぇ?! そうなんですか?!」

『 キクノ魔法が使えるのか 』

『 魔法で直せるとは・・・ 』

『 綺麗に直せるって事? 』


皆に私の使える魔法について説明した。

他の魔法は試していないから分からないけど、修繕、修復、修理は出来る事。

リコさんには伝えてあるけどスカイラーさんは知らない事。

そして魔法が使える事はおおっぴらにするつもりはない事も。


「つまりは破れてしまっても断片が揃っていればいいという事ですか」

「うん、修繕でいけると思う」

『 では少しくらい強引に運んでも大丈夫なのか? 』

「破片を無くさないでね?」

『 これでやっと・・・連れて帰れる 』

『 台座を壊して運ぼう 』

「ねぇ、台座なんだけどさ。壊すと音が出るじゃない?

 デイジーに溶かして貰う事は出来ないかな?

 ほら、スライムって何でも溶かせるってイメージあるんだけど無理?」

「出来るけど、バスティのお母さんの毛まで溶かしたらどうしようだそうです」

「ちょっとくらいなら直せるから。ごっつりは困るけど」

「大丈夫だそうですよ」

「じゃぁ溶かしてもらおうよ、その方が音も無くていいだろうし」

『 わかった、ではデイジー頼む 』

『 今夜で終わらせよう 』

「では明日、来て貰えるように隊長に知らせをだしますね」


これで片付くといいんだけどな。



翌朝、どどんっと思ったよりも大きな毛皮が置かれていた。

あちこちと破けたり汚れたりはしているけど、うん、無くなった部分は無さそうだった。

これならいけるだろう。

さぁ、いつのまにか手に入れてた魔法の力。今こそ発揮して貰おうじゃないか。

修繕!!  

淡い光に覆われたかと思った次の瞬間には毛皮は綺麗に無傷の状態となっていた。

中毛くらいだろうかフカフカと柔らかくて触り心地のよい毛並みだ。

生きていればさぞ美しかっただろうに。

不本意に命を終わらせることになって悔しかっただろう。

子供の成長を見守りたかっただろう。

貴方の分までバスティは私が見守り育てるから。

だからどうか心穏やかに眠りに就いて欲しい。貴方の仇は皆で討つからね。

修繕が終わった毛皮をそっとバスティの傍へと置いておいた。


「お疲れ様です」


デイルくんがそっとコーヒーを渡してくれた。


「ありがとう、見てたんだ・・・」

「ええ、のぞき見するつもりはなかったのですが。すみません」

「いや別にいいんだよ? ちょっと驚いただけだから」

「あの力は隠しておいて正解ですね。

 欲しがる貴族は多いでしょうし、王家ですら欲しがりそうです」

「いやいや、物じゃないんだから欲しがられても困る。

 それにこんな魔法なんてちょこちょこ頻繁に使うものじゃないでしょ。

 今回みたいに、私がやりたいと思わなければ使う気も無いよ」

「ええ、それでいいと思います。

 もしかして城に滞在してる2人、椿さんと桜さんでしたか。

 あの2人も同じような魔法が使えるのでしょうか」

「それがさ、聞こうと思ってて聞き忘れたんだよね・・・」

「では次回会えた時に聞いておく方がよいでしょうね」

「うん、そのつもり」


さて朝食の準備でもと思ったら、リコさんがやって来た。


「リコさん、おはよう」

「ああ、おはよう。

 やってくれたな、城は今大騒ぎになっているらしいぞ」

「ん? どういう事?」

「夜明け前に兄貴がハティに叩き起こされて、証拠品を押し付けられたそうだ」

「「 ごふっ 」」

「あれこれと書類も全部揃っていたから領主も町長も逃げ様がないだろうな」

「一応聞くけど、ちゃんと事件として立件出来て

 裏から手を廻して無罪放免てな事にはならないんだよね?」

「ああ、大丈夫だ。兄貴も本気を出したからな」

「そっか、スカイラーさんの本気・・・

 普段穏やかだから怒ると怖そうだよなぁ」


リコさんが教えてくれた内容によれば・・・

人身売買に幼児監禁猥褻(つまりはそういう趣味・・・)密猟に密輸に横領。

ちょ、待たんかい! めっちゃ極悪非道じゃないかそれ。

うわぁ・・・やっぱ証拠集めじゃなくて生皮は剥げばよかった?

せめて1、2発殴ればよかったかも。


「あの、キクノさん。声駄々洩れになってます・・・」

「ひぇっ、マジで?・・・ 聞かなかった事に・・・」

「しっかり聞いちゃいましたよ・・・」

「おぉぅ・・・」

「まぁ心配するな。何者かに襲われたらしくてな。

 何かで溶かされたようになっているらしい、頭頂部だけ。

 ああ、ちゃんと喋れるからじっくり問い詰めると兄貴が張り切っていたな」


何かで溶かされたような・・・

もしかしてしなくても? デイジーでかした!しかも頭頂部だけとかナイスな選択だよ!

今回だけは褒めてあげよう。普段はやっちゃ駄目だからね?


「キクノ・・・まだ駄々洩れなんだが。気持ちは解からなくもないがな」

「 ・・・  聞かなかった事に・・・」

「ま、まぁいいじゃないですか。この3人しか居ませんし」


新しい領主は10日以内に決まるだろうとの事で、その後に町長も決まるらしい。

そして常連さん達やご近所の皆は、今後同じような事があっても皆で立ち向かおうと決めたそうだ。

勿論私もその輪の中に加わっている。

ヤバイなと思ったら女子供は此処へ逃げ込むようにとも言ってある。

ハティ達も居るし、いざとなれば私だって本気出せば少しは戦えると思う。


「いやおかんは本気だすな」

「せめて力半分くらいで」

「そうそう、おかんが本気だしたらヤバそうだ」

「待って? 皆私を何だと思ってるの? 一応カヨワ」

「「「 カヨワイって意味判ってるか、おかん! 」」」


解せぬ・・・

いたって普通のつもりなんだがなぁ。まぁいいや、細かい事は気にしないでおこう。

だって皆口ではああ言いながらもちゃんと気遣って様子を見にきてくれているから。

お互い助け合って仲良く暮らす、いいね。


さて一件落着っぽいのでデイルくんの押しかけ護衛も終了かと思ったのに。


「今後の事も考えて僕とリコさん

 それにスカイラーさんが週交代で夜間警備として泊まり込む事になりました」

「へ?」

「つきましては部屋を増設する許可をいただきたいのですが」

「増設は別にいいけど、リコさんもスカイラーさんも夜勤とかあるでしょ。

 デイルくんだってあるでしょうがよ」

「大丈夫ですよ、これ王妃様から任命されてるので」

「はい?」


何故にそうなったかと問いただせば、今回の事を聞いた椿ちゃんと桜ちゃんが私を心配してくれたらしく。

王妃様や王女様方に相談したところ、親しい者に警護させようという事になったらしい。

えーっと、まだお会いした事もない王妃様。

ご心配及びご配慮はありがたいのですが、まずは先に教えて貰えると有難いのですが・・・

読んで下さりありがとうございます。

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