18:押しかけ護衛
リコさん達兵士団だけかと思ったら何故かスカイラーさん達騎士団も一緒にやって来た。
「騎士団まで揃って何事?」
「たまたまうちの団員も居合わせた様でな、報告があったのだよ」
「なるほど」
「それでキクノ、怪我はないか」
「私もハティ達も大丈夫なんだけどね。
アッチに転がってる輩を引き取ってもらえるかな。
今度は無罪放免って事にはしないでね?」
「「無罪放免? どういう事だ」」
ん? スカイラーさんもリコさんも知らないのか。
団長と隊長、この2人が知らない内にと言うのも解せない。
常連さんを交えて2人に説明をしていった。
「なるほど、町長や領主が絡んでいるかもしれないと」
「町長はまだしも領主となると少し厄介だな」
「しかも我々が知らなかったと言うのも引っかかるな」
「んむ、少し調べてみるか」
「あー、それなんだけどね、2,3日待ってもらえる?」
「どうしたキクノ」
「 コソコソコソッ」
要は内通者が居るかもしれないって事だから、私は2人に小声で言う事にした。
(あのね、ハティ達に悪事の証拠集めて貰うから)
(そんな事が出来るのか)
(しかし大丈夫なのか)
(任せろって言ってるよ。
元飼い主サンの仇でもあるし母親の仇でもあるらしいし)
(ん?仇とはいったい)
その事についても説明すると2人のこめかみにピキッと青筋が浮かんだ。
「分かった、こちらでも書類などの見直しを進めてみよう」
「私の方も城で少し調べてみるよ」
「キクノの周りにしばらく護衛をつけるか?」
「いや、いらないかな。
もしもまた手を出してくるようならこちらも手加減しなくていいよね?
ハティ達の全力かぁ、生きてるといいね」 チラッ
簀巻きの男達をチラ見する視界の端に顔色が悪くなっている騎士と兵士の姿が目に入った。
(あのくせっけ赤毛の騎士とオレンジ短髪の兵士、要注意だね)
(なるほど、顔色が悪いな。解った)
(あいつは確か・・・そうか、なるほどな)
「手加減はいらないだろうが、殺すなよ」
「そうそう、虫の息でもよいので生きた状態で引き渡してくれ」
「虫の息でいいのか」
護衛は要らないと言ったにも関わらず、しばらくはデイルくんが通ってくれる事になった。
日中よりも夜間の方が危ないような気もするんだよなとつい声に出したら、デイルくんは寝袋持参で泊まり込むと言い出した。
いやいや、寝袋だと体の疲れが取れないでしょうが。
と思ったけど、最初の頃私もデイルくんに貰った寝袋で寝ていたな。
『 寝床の心配よりも 』
『 貞操の心配は? 』
『 キクノ女の子 デイル男の子 』
「ごふっ あのね3頭共そんなゲスの勘繰り止めなさいね?」
まったく、どこでそんなのを覚えたのやら・・・
リコさん、スカイラーさん、デイルくんに常連さん達 皆にどうしたのか聞かれたけども言える訳がない。
デイルくんはいったん戻って準備をしてくると言い、リコさん達は簀巻き男達を肩に担いで詰め所へと戻って行った。
ふぅ、やれやれだ。
幸いにも丼物は完売していたのでよかったけど、居合わせた常連さん達には申し訳なく思う。
「疲れたしよかったら皆でお茶休憩しない?」
「気にすんな。だが茶はありがたい」
「そうだそうだ。むしろ俺達があまり役に立てなくてすまないな」
「いてくれるだけで心強いんだよ。ありがとうね」
「へへへ、そう言われると照れるな」
頂き物のリンゴパイと淹れたてのミルクティを皆に配る。
ほんのりと香るシナモンが食欲をそそる。
あー、すっかり忘れてたけど私お昼ご飯まだじゃん、まぁこのリンゴパイでいいか。
皆は休憩が終わるとそれぞれの家や仕事場へと戻って行った。
皆今までは相手に力でかなうはずがない、どうせお貴族様絡みだからと諦めていたようだ。
でも今日の出来事を見て、このままじゃ何も状況は変わらないからと皆で相談してみると言っていた。
私はお貴族様とかそんなしがらみ気にしないから、と言うよりも身分差とかの実感が湧いていない。
貧富の差なんてのは元の世界でもあったからなんとなくわかるけど。
実際この世界で生まれ育った皆にしてみれば、嫌ってほど身分差を経験してきたのだろう。
抗っても無駄だって思ってしまっても仕方がないよね。
でも状況を変えたいって気持ちが芽生えたのなら、このままいい流れになっていくといいな。
夕暮れ時、デイルくんは寝袋や着替えなんかを持ってやって来た。
さすがに床の上という訳にも行かず、ソファの上で寝て貰う事にした。
「タオルなんかや必要な物は遠慮なく使っていいからね。
洗濯物はそこの籠に入れておいてね」
「いやそこまでお世話になる訳には・・・」
「今更? 寮で散々して来たじゃん」
「確かに・・・」
「寮の延長だと思えばいいでしょ?」
「では、そうさせて頂きますね」
うーん、こんな事なら小さくても客間を作っておけばよかったかな。
そうしたらベッドも用意出来たのに。そのうち改装するべきだろうか。
いやいやいや、そうそう護衛が泊まり込むような事あっても困るんだけどさ。
でも、もう1部屋あってもいい気はする。
深夜になりハティ達3頭は出掛けて行った。
普段魔獣だと言う事を忘れがちだけど、すぅっと闇に溶け込む姿はまさしく魔獣って感じがした。
ちなみにちゃっかりデイジーも付いて行っている。
「一応は止めたんですけどね。絶対行くと聞かなくて」
「何か思う所があるんだろうね」
夜が明ける前には戻ると言っていたけど、いつになるかは分からないので先に休む事にした。
部屋は違うけど、誰かと一緒の空間で寝ると言うのは久々な気がして寝つけな・・・ ぐぅ。
ぐっすりと寝てしまったよ・・・
目覚めた時には3頭共帰って来て寝ていた。
疲れたのだろう、触っても起きる気配がないのでこのまま寝かせておこうと思う。
朝食の準備をしているとデイルくんも起きて来た。
「デイルくん、おはよう」
「おはようございますキクノさん」
「デイジーもぐっすり?」
「ええ、ハティ達も?」
「うん、爆睡中。よっぽど疲れたんだろうね」
「今日は僕がいますしゆっくり眠らせてあげましょうか」
「そうだね。これから少しの間よろしくねデイルくん」
「いえ、こちらこそ押しかけ護衛みたいになってしまってすみません」
押しかけ護衛・・・ちょっと笑いそうになったじゃないよ。
朝食はエッグベネディクトにした。ベーグルじゃなくて丸パンだけどね。
勿論デイルくんのは大盛りにしてある。
飲み物にはフレッシュオレンジジュースを用意した。
「うん、これも美味しいですね。
朝からキクノさんの料理が食べれるなんて最高ですね」
「寮でも食べてたでしょ?
それにアマンダさんの料理もおいしいじゃん」
「そうなんですけどね。
ふふふ、こうやって2人で食べるのがなんか特別感といいますか」
「あー、確かに。いつもは大勢でだもんねぇ」
『 デイルが言いたいのはそう言う事ではなく・・・ 』
『 いやデイルも無意識で言っているのでは 』
『 つまり? 』
『 じれったいだけだな 』
「おはよう、皆起きたの?
それでじれったいとは何かな?」
『 うむ、気にせずともよい 』
『 そうそう、思う様に進まないよねって事 』
『 ねー 』
「あぁ、昨夜は思うように事が進まなかったのか、残念だったね。
でも焦りは禁物だからね?」
『 あ、ああ・・・ 』
なんだか3頭に呆れた目で見られてる気がしなくもないけど、皆の分も朝ご飯を用意した。
読んで下さりありがとうございます。




