1:お決まりパターン
足を運んで下さりありがとうございます。
新作始めました。と言っても以前書いた短編の連載版となります。
もし良かったらお暇潰しにでもお付き合いいただければ幸いです。
「へい、らっしゃい!」
「其方が店主か。我が主が屋敷にて召し抱えたいと申しておる。
ありがたく我が主に仕えるが良い」
「だが断る!客じゃないなら出て行って貰えるかな、くっそ邪魔!」
「な、我が主はこの国の上位貴族なのだぞ。それを」
「うっさい!だからなんだってんだ。見て解んないかな?私は今凄く忙しい。
だいたい勝手に厨房に入ってくるんじゃない!」ゲシッ
「くくくっ、またおかんがやってるよ」
「おかんの前じゃお貴族様とか関係ないもんなぁ」
偉そうに上から目線なお貴族様の使いとやらを店の外へと蹴り出して、盛大に塩を撒く。
どうも、おかんと呼ばれている楡山菊乃です。年齢は内緒!
まぁ成人済みの子供が2人居たとだけ言っておく。
私が今居るのは生まれ育った世界とは別の場所だったりする。
何故そんな訳の分からない場所に居るのか。
一言で言うなら巻き込まれたらしい。
遡る事3か月前。
その日は店の定休日だったので家の隣にある畑で野良仕事をしていた。
そう広くは無い畑だが店で使う野菜や自分で食べる野菜など、無農薬で育てていたので手間暇は掛かるが味は良い物が出来る。
雑草を抜いて崩れた畝の修復をして、そろそろ休憩をしようかと腰を伸ばした時に視界が暗転した。
立ち眩みかと思ったが、私の目の前には中学生くらいの女の子が2人不安そうな顔で座り込んでいた。
なんで畑の中に女子中学生・・・
まさか畦道から転がり落ちた?それで怒られると思って不安そうな顔になってたり?
安心させる為に声を掛けようとして気が付いた。
(ここ、畑じゃないじゃんけ・・・)
真っ白な壁と柱につるっとした石だかタイルだかの床。
その床には変な模様が描かれている。
そして私達3人を取り囲むかの様に大勢の人が変な衣装を身に纏って立っていた。
まるでなにかのカルト教団のような衣装だと思った。
女子中学生達は私に気付くと近寄って来て腕にしがみ付いて来た。
可哀そうに小刻みに震えている。
何か安心させるような言葉でも掛けてやりたいが状況がさっぱりわからないので何も言えない。
「どなたが聖女様ですかな?」
樽体型のおっさんがじろりとこちらを見ながら声を掛けて来る。
どなたが聖女かと聞かれても誰も答えられないと思う。
それよりもだ。震えてる女の子達を見て言う事がそれ?
まずは安心させてやるのが先じゃないのか。
それにこの状況の説明をしてもらいたい。
「この状況を説明して貰えませんかね?
何も解らないままだと答えるに答えられませんが?
それにこの子達を落ち着かせる事が先では?」
「なっ・・・」
「失礼いたしました。
伯爵殿は黙っておいてください。
まずは部屋を移動してからご説明いたしましょう」
ちょっと地位が高そうな男性がそう言って3人を別々の部屋へと案内しようとしたのだが、女子中学生達は私の腕から離れなかった。
「あ、あのっ。出来れば3人一緒の部屋がいいですっ」
「離れ離れになるのは怖いですっ」
女子中学生達は涙目になりながら訴える。
「重ね重ね失礼いたしました。
そうですね、落ち着かれるまではお三方一緒の部屋がよさそうですね。
気が利かずに申し訳ありません」
そう言って1つの大きな部屋に案内された。
ソファーに座る様に促され3人でピッタリとくっついて座る。
正面のソファーに男性が座り、名乗った後に話を始めた。
名前はモルソン。魔法省のお偉いさんで召喚儀式の責任者。
今回は王子の命令で聖女召喚を行ったらしい。
なんか小難しい事を言っていたけど、理解が追いつかない。
たぶん私達に分かりにくい言い回しをワザとしている気がする。
その聖女召喚が行われた理由についてもボヤかしている気がした。
ただ元の世界に戻る事は出来ないと言う事だけは理解出来た。
そして女子中学生達は泣き出してしまった。
まぁ泣きたくもなるよな。
落ち着くまでの2,3日はそっとしておいてくれとモルソンに伝え退室して貰った。
世話係のメイドさんを残しておくと言われたけど、取り敢えず今日のところは3人だけにしてくれと頼んだ。
誰も居無くなって3人だけになったのを確認すると2人は泣き止んだ。
おや?・・・
「扉から離れた場所で話しましょうか」
「ねぇねぇ、奥にベッドルームがあるんじゃないかな」
「ではそちらに移動しましょう」
まさかのウソ泣き?・・・
奥の部屋に移動すればそこはやはりベッドルームだった。
念を入れて小声で話しをする。
まずはお互いに自己紹介をした。
ポニーテールの子が椿ちゃん15歳。ボブの子が桜ちゃん14歳。
2人は姉妹で下校中にバスに乗ったと思ったら此処へ来ていたらしい。
「まさかラノベあるあるが自分の身に起きるとは思いませんでした」
「うん、びっくりだよね。でもお姉ちゃんと菊乃さんが居てくれてよかった」
「2人共よくパニックにならなかったね」
「1人だったらなってたと思います」
「菊乃さんだって落ち着いてるじゃない」
「私の場合はまだ理解が追いついてないだけかな・・・」
自己紹介が終わるとこれからについて話し合った。
どういった理由で聖女が召喚されたのかが解らないので、こちらからは明言しないでおく事になった。
彼女たち曰く、理由が明確に明かされない場合はくだらない理由だというパターンが多いのだそうだ。
そして聖女では無かった場合、追い出されるのがお決まりパターンらしい。
これが魔王討伐だの魔物討伐だのと言う場合だとスキル鑑定で聖女が誰か解ったりもするらしい。
その場合は誰であろうと3人一緒でなければ協力しないと言う事にもなり、この日は1つのベッドで3人一緒に寝た。
椿ちゃんは声を押し殺して静かに泣いていた。
お姉ちゃんだからと気を張っていたのだろう。
翌日、身支度を整えるからと2人はメイドさんに風呂へと連れて行かれた。
私はと言うとモルソンさんに呼ばれた。
「非常に申し上げにくいのですが
貴方にはこのまま城から立ち去って頂く事になりまして」
王子とやらが聖女は椿ちゃんと桜ちゃんに違いない。
聖女で無い者は追い出せとのたまわったらしい。
モルソンさんとしても私は巻き込まれただけで聖女ではないと判断したらしい。
なるほど、これが椿ちゃん達が言っていたお決まりパターンか。
私が呆気に取られて返事が出来ないでいるのを了承と受け止めたのか、モルソンさんは当面の生活費だと言って小さな革袋を渡して来た。
その後はそのままメイドさんに連れられて門まで案内され、ぽいと放り出された訳である。
(ちょっと待てーい、椿ちゃん達に別れの挨拶くらいさせろや!
そもそも勝手に巻き込んだのそっちだろうに
この世界についての説明も謝罪も無しか!ふざけんな!)
叫びたかったけど周囲の目もあるし、今ここで叫んでもどうにもならないと思い直した。
せめて近くの町の方向だけでも教えて欲しかったよと溜息が出る。
それを見た門兵さんが親切にも町のある方角を教えてくれたのでそこへ向かって歩いた。
それにしても私の格好よ、店の定休日で野良仕事してたからモンペだよモンペ!
しかも足元なんか地下足袋だよ! おまけに腰には鉈だよ!
どうか目立つ服装じゃありませんように、西洋風のドレス姿とかメルヘンな町じゃありませんように・・・
そんな事を考えながらテクテクとひたすら歩いたのだが意外と遠い。
なんで城と町がこんなに離れてんだよ。
城下町って城と近いもんなんじゃないの?
まさかの城下町じゃなくてただの町って事?・・・
チーンと頭の中で鐘が鳴った。
私の願い空しく、辿り着いた町はメルヘンな町だった。
どう見ても場違いな私、困ったぞこれ。どないしよう。
菊乃さんの口調が短編とは少し変わっております。
そして相変わらずのお笑い系になると思います(;´Д`)
たまには恋愛要素も入れてみたいなとは思うのですがどうなることやら・・・
明日以降は18:00更新予定となりますので生暖かく見守って頂ければ幸いです。
読んで下さりありがとうございます。




