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貴方を夢に見る~「身分違いの恋に悩むのは愚か者だ」とバートは考えていたはずだった~  作者: 茜カナコ


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1.バート・エイマーズ



 クラーク・エイマーズ男爵一家は街はずれの古びた洋館に住んでいる。


 エイマーズ家の長男バート・エイマーズは結婚をしていてもおかしくない年齢だが、まだ親しい令嬢は居なかった。そもそもバートは他人と一緒にいるよりも、一人でいることを好んでいた。



***



 バートは図書室で調べ物をしていたが、一段落したので懐中時計を取り出した。時間は正午を過ぎている。バートは本を本棚に戻し図書室を出た。


 廊下を歩いていたメイドがバートに気付き、ビクリと体を強張らせ壁に張り付くようにバートを避けた。



「失礼致しました、バート様。申し訳ございません」



 メイドは震える声でそう言うと、早足でバートから逃げるように去っていった。


 バートの背後から声がした。


「兄上、またメイドを怖がらせたんですか? 可哀想に」


 バートは右眉をあげ、口を少し歪めた。



 バートは肩にかかるくらいに伸びている黒っぽいこげ茶色の髪をきっちりと一つに縛っていた。薄い茶色の目は冷たく光っている。


「何だと?」


 バートは不機嫌そうに言った。



 アランは人懐こい笑みを浮かべて、メイドの去って行った廊下を見ていた。


 どうしてアランはこんなにも華やかで人好きのする雰囲気をもっているのだろう? とバートと同じような髪の色に同じような瞳の色の弟、アランを見てバートは不思議に思った。



 バートは空咳をして思考を会話に戻した。


「私は何もしていないが?」


「その眉間のシワがよくないんですよ」


 アランはバートの眉間に人差し指を向け、少しだけ首を傾げた。


「普通にしているだけだ」


 バートはアランから目をそらし、食堂に向かって廊下を進んで行った。


「兄上は普通にしていると怖いんですよ」


 背後からアランの声が追いかけてきたが、バートは振り返らなかった。



***



 食堂に入ると、すでにバートの両親が席についていた。


「あら、バート。また機嫌が悪いの?」


 バートの母であるダリア・エイマーズはバートよりも濃い茶色の目をしばたたかせた。


「いたって普通ですが?」


 バートが右眉を上げ返答すると、ダリアはムッとした顔で言葉を継いだ。



「そんな風だから昨日の舞踏会でも、誰もあなたに寄り付かなかったのよ?」



「わかっているの?」と念を押す代わりに、ダリアは少し顎を上げバートに強い視線を向けた。


 バートは右手を軽く上げ、口元をゆがめる。


「たまたまですよ。それに、むやみに興味を持たれるよりも一人の方がよっぽど過ごしやすい」


「また……あなたはそんなことを言って」


 ダリアはため息をついた後スープを飲んで、また口を開いた。



「あなたも、もういい年なんだから素敵な令嬢を見つけてくれないと困るわ。この家を継がなくてはいけないんですよ?」


 ダリアがバートを見て、非難するように目を細めた。


「アランがいるじゃないですか。家はアランが継げばいいでしょう」


 バートがアランを横目で見ると、アランはやれやれ、という風に首を横に振った。



「兄上はいつもそう言って話を終わらせますね」


「いいだろう? 別に」


 バートは右口元を少し上げ、パンを口に運んだ。


「まったく。兄上は勝手なんですから」


 アランが冷ややかな目でバートを見たが、バートは気付かないふりをした。


「まあ、そんなに言わなくても。バートなりに考えているんだろう」


 バートは父の言葉を否定することも出来ず、無表情で紅茶を飲み干し席を立った。


「失礼します」



「今度の舞踏会ではちゃんと花嫁候補を見つけるんですよ!」


 ダリアの声にバートは肩をすくめ、食堂を後にした。


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