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7.ペルセウス座流星群

「……どうして?」

 ざくろは、僕の言葉を復唱する。


「ずっと思ってたんだ。僕に星の魅力はわからなくて……」

 質問の意図をどう説明したら良いのか分からず、戸惑いながら言葉を紡ぐ僕に、

「あなたは自分の趣味に対して、どうしてそれが趣味なの?と聞かれてすぐに答えられるのかしら?」

 ……相変わらず厳しい物言いである。


 だが、ざくろの言うことはもっともだ。もちろん僕の言葉は、彼女の趣味を否定しようとするそれではないのだが。

「そうね。一言で言うならロマンチックだから、かしらね」

 意外にもあっさりと、ざくろは答える。


「……それだけ?」

「ええ、それだけよ」


 果たして本当にそうだろうか。いや、人の趣味にこれ以上口出しをするのは無粋というものだろうが……だとしたらこの問いは、核心に迫るどころか、雑談にすらならない。


「時間が許すのならもっともっと語っても良いのだけれど。でもりゅうにはあまり時間が残っていないでしょう?」


 ……時間。僕がこの世界へ答えを出すまでの、時間。残っていると言えばいくらでも残っているのだけれど、残っていないと言えば微塵も残っていないことは確かだ。


「ざくろは……何か知っているのか?」

 あまりにも曖昧な質問……だが、その問いが何を意味しているのか、彼女にはおそらくわかっているのだろう。


「何か知っているといったら、どうするの? 答えを私に聞いて、それで何かが解決するのかしら」

 そう。これは、僕自身が解決しなければいけない問題なのだ。世界に答えを求めるのは、思考を放棄することと同義である。


「ね? 私から何か聞いたとしても、龍が自分自身で答えを見つけなきゃ、意味がないんだよ!」


 音もなく、前触れもなく。

 またしても、入れ替わる二人。


「小熊……」


 どちらかを選ばなければならない。その答えが意味すること。それは、僕の選んだ世界ではもう一人はどうなっているかわからないという事実。断言したくはないのだが、小熊が生きる世界で、確実に心星ざくろは死んでいる。


 恋人と家族、二人のうちどちらか一方だけしか助けられないとき、あなたはどうしますか? 中学生のころ、そんな質問に対してみんなで議論したことを思い出す。この場合……家族ではなく幼馴染みではあるが、それでも自分の大切な人であることに変わりはない。


 あのときはいとも簡単に、また深く考えることもなく、「そんなの恋人に決まってる」と答えたはずだ。しかし、本当に究極の選択を迫られたとき、人の思考は停止する。


「…………!?」

 突然、小熊が僕の手を握る。


「ちなみに私は、こうやってちゃんと触れるよ!」

 不意打ちに、少しだけ赤面して目を逸らしてしまう。


 だけど残念ながらそれは、ざくろだって同じ。実体があり、触れることができる。人間として、人間らしくきちんと生きている。


 ならば、どうだろう。比べるべきは二人ではなく、周囲を取り巻く環境……つまり、世界そのものなのではないだろうか。


『秋の夜に見られる星の一つ、ペルセウス座。あまりなじみのない星座かもしれませんが、ペルセウス座流星群、と言えば聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。東の空を見上げると、漢字の人のような星が浮かんでいます。これがペルセウス座です』


 いつの間にか季節は、秋へと移り変わっていた。

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