6.永遠の愛だとか
「もし、突然私が死んじゃったら、りゅうはどうする?」
「は……?」
ざくろの唐突で、あまりにも核心をついた質問に、素で反応してしまう。得体の知れない生温い感覚が、全身を包み込む。
「今はこうやって、普通に、平穏に、日々を過ごしてるでしょ?でもそれがいつまでも同じように続くとは思えない。試練っていうのかしらね。そういうものが、いつかきっと私たちの前に現れると思うの。一番つらいのがきっと誰かが死ぬことね。そういうとき、りゅうはどうなっちゃうのかなって」
「それは……」
言いかけて、言葉に詰まる。
だって僕はその状況を、一度経験しているのだから。
だが、今はあくまで仮定の話……そう割り切って話すしかない。世界に対する答えとして、ここで僕が動揺することは決して許されないのだ。
「そりゃあ、正気じゃいられなくなるだろうな……暴れ狂って、泣き叫んじゃうかもしれない。何も食べずに、誰とも話さずに、一人で暗い部屋に閉じこもって。どうなるんだろう。少なくとも前向きに生きていくなんてことはできそうにないよな」
これは僕の願望だ。
そうできたら、どんなに楽だっただろうか。誰かが助けてくれるまで閉じこもっていたら、今は違っていたのだろうか。
「そう、それは彼女冥利に尽きるわね。でもきっと子之星さんあたりは心配するでしょうね……彼女ならきっと、君を何とかしようとする」
今日のざくろは、随分と小熊のことを気にかける。もちろん友達として当たり前のことではあるが、違和感を感じるのもまた、事実である。
ざくろは続ける。
「それとも、どうかしら。私の後を追ってきてくれる?」
フフフっと、鼻にかかったような笑い声。……笑えねえよ。
しかし……後を追う、か。
ある意味考えもしなかった選択肢。
死ぬまで一緒にいることが永遠の愛だとか、一緒に死のうとか、そんなことを語るマンガや歌はたくさんあるけれど、僕は到底そんなことは思えない。
「じゃあざくろはどうなんだよ? もし僕が死んだら、どうする? どう思う?」
特に深い意味があったわけではない。ただ質問されたことをそっくりそのまま返しただけだった。しかしざくろはそんな僕の言葉に深く考えこんだあと、
「わからないわ」
と言った。
「だって私はそんな体験したことないもの」
…………まるで僕のことを見透かしたように。
ざくろはそう言う。
だがその理論で言うなら、今のざくろの記憶にある僕だって、その体験はしていないはずである。
「それはズルくないか……」
「ズルくないわ。あなたがバカなだけよ」
いつもより口が悪い上に、言葉のキャッチボールができていない気がするのは気のせいだろうか。きっとそうだろう。
そんなことはさておき、いつまでもこうして雑談を続けてばかりもいられない。
僕には、ざくろのいる世界と小熊のいる世界、どちらが本当の世界かを判断しなければならない使命がある。
核心に迫っていかなければ、状況はいつまでも変わらない。
使命とは言ったが、強制イベントではないこともまた、説明しておかなければならない。ざくろと小熊が入れ替わる現在を生きていくという選択肢だってあるかもしれないのだから。
しかしそれはあまりにも酷すぎる。
ざくろにとっても小熊にとっても、そして何より、自分にとって。
たとえ今は何も思わなくても、その世界に慣れてしまっても、いつかは必ず爆発するときがくる。
だから。
果たしてこれからざくろにする質問が、どういう経緯を辿り核心に到着するかは定かではない……が、僕にとっては先程までしていた雑談の類ではない、重要な問いかけである。
それは今まで、聞きたくても聞けなかった質問。
或いは、答えを聞くことから逃げてきた質問。
「なあ、ざくろ」
「? なに?」
星についての説明を真剣に聞いているんだから邪魔しないでくれる?と顔に書いてあることに関しては、この際スルーしても良いだろう。
「前から聞きたかったんだけど、どうしてそんなに星が好きなんだ?」




