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Prologue

「そう、すべての物事には理由があるんです。」

――かつて、何かのアニメのヒロインが、そう言っていた。

 

 今日の天気が晴れなこと。

 昨日の夕食が、大好きな唐揚げだったこと。

 隣町に大きなショッピングモールができること。

 地球が回っていること。

 僕がここに生きていること。

 

 すべての物事には、理由がある。

 理由のない事なんてない。

 僕の彼女、否…元彼女、心星ざくろが死んだことも。

 

 なんて大仰な言い方をすると、彼女がまるで理由もなく、理不尽に亡くなってしまったことのように推測できるが……。

 心星ざくろの死因は悲しいかな、何のことはないただの交通事故である。

 

 交通事故を『ただの』と形容するのは、あまりにも人命軽視かもしれない。

 ただでさえコンプライアンスの厳しい世の中、批判の的になるのは火を見るより明らかだ。

 

 しかし、彼女が即死だったことを考えるに、あながちその形容は間違っていないのだろうと僕は思う。

 

 人の死を……一番大切であろう人の死を、簡単に受け入れることができる人なんているのだろうか。

 答えるとするならば――自分で疑問を投げかけておいて自分で結論を出すなんてのはあまりに滑稽だと思う人もいるかもしれないが――その回答は……いる、だ。


 要は切り替えが早いか遅いかの問題である。

 前向きか後ろ向きか、ポジティブかネガティブか、と言い換えることもできるだろう。


 そして僕は、そのどちらでもない。

 早いとか遅いとかいう問題ではなく、切り替えることができない人間……だ。


 しかしそれを断言してしまうのは、あまりに早すぎるのかもしれない。


「なにボケっとしてるのよ……ほら、さっさと行くわよ」

「う、うん……」


 なぜなら死んだはずの心星ざくろは、

 今、僕の目の前にこうして生きているからだ。


 実体があり、触れることができる。

 会話をすることができる。

 それだけで、マンガや小説でよく見かける幽霊の類ではないことがわかる。

 幻と言うにも、あまりにもくっきりとしすぎている。


 最近テレビで、タイムリープがどうとか、世界線移動がどうとか言ったものを観る機会があったが、そう言ったものともかけ離れている気がする。

 あまりに非現実的すぎるし、理由が見当たらない。


 僕が彼女を失っただけで世界が変わるなら、今頃僕は神様にでもなって、世界を支配しているだろう。


 そんな冗談はさておき、

 今日は彼女とデートへ行く予定である。


 近くにある水族館において、期間限定で催されている水中プラネタリウムなるイベントへと赴くことが、彼女たっての希望で決まっている。


 様々な疑問は解けないままであるが、僕は彼女が生きていてくれるならそれで良い。


「りゅう、ほら、早く!」


 彼女が生きている今日を最大限に楽しむ理由は、存外たくさんあるのだから。

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