井戸の女
僕は勇気を持って聞いた。
「あの...なんで...井戸に挟まっているんですか?」
すると一回伸びをして、大きなあくびをかいてから答えた。
「私ね、井戸好きなの。ハマりたいからはまってるの。
でもね、ちょ〜っと細い井戸だから抜け出せなくてね。」
なるほど...
ん?
...なるほど...
..................??
この人変人だ...うわあ...
関わらないようにしよ。
「あ!君!今さ、この人変人だ〜関わらないようにしよって思ったでしょ。ね。」
うわ、くそ、バレたか。
「顔に出てるよ。よくないわ〜井戸にはまりたいときくらい誰にだってあるでしょ。」
「ないです」
「ねえじゃあいいから。手伝って。ほら。手。」
まるで僕に井戸から出るのを手伝えと言っているかのように、当たり前に手を出してくる。
なんで僕が...まあいいや。
僕は仕方なく手を差し出した。
「っういしょ!
あ"ー羽が生えた〜!!」
彼女は全力で腰を伸ばす。
なんやこの人。
「んで?困ってるんだっけ?」
あ、ちゃんと聞いてくれるのね。
答えるか。
「はい。そうなんです...。僕なんでこの森に来たか覚えていなくて...。」
そういうと彼女は難しい顔をする。
「ん〜なるほど。記憶喪失か。」
そうか。それかもしれない。
言われてみれば確かにそうだ。
「そう...ですね。自分でもよくわかりませんが。」
僕が考えている間に、彼女は木の下のテーブルまで移動して優雅にお茶の支度をしている。
「じゃあさ、私の話でも聞いてよ。」
「はい?」
「だから、私の話!
話したいこと沢山あるの。」
突然の謎の言葉にびっくりした。
僕に話したいことってなんだよ...。
「えー...まあ...覚えてないのでなんでも良いですよ。聞きます。」
時間もあるしな...え、あ、いや、覚えてないからわからないだけか...。まいっか...。
手招きされたので仕方なく椅子に座り、頂きます、とお茶を飲んだ。
芳醇な香りがおいしい。
テーブルにはクッキーとマカロンまで置いてある。
なんだこの人。普段からこんな生活してるのか?
そう考えているうちに彼女の話が始まった。




