第2話:桂陽高校での異変(前編)
桜嶺学園の生徒である司狼と妃奈が向かうのは、とある地方の公立高校――桂陽高校。
一見ごく普通の学校だが、彼らが派遣された時点で、その“普通”はすでに破綻している。
不穏な気配と、妙な違和感。そして、変わらぬ日常を取り繕うような笑顔の奥に潜むものとは――
それは、物語の“影”が少しずつ濃くなっていく予兆。
今回は少しミステリアスな導入となっております。
二人のやり取りにもぜひ注目して読んでいただけたら嬉しいです!
―――同時刻、桂陽高校正門前。
「……ここが桂陽高校か。地味だな。」
ボソリと呟いた司狼に、思わずといった感じに吹き出したのは幼馴染で同級生の藤堂妃奈だ。
「何言ってんの。これが一般的な公立高校よ。桜嶺の方がおかしいの。」
「まぁ、そうだな。うちのはもはや村だからな。」
「そうよ。あんなの基準にならないわ。………けど。」
それまでケラケラと軽口を叩いていた妃奈の眼差しが鋭くなる。
「油断は禁物よ。桜嶺学園の“異能対策班”が派遣される時点で、普通じゃないのだから。」
声を硬くしてそう言う妃奈に司狼も重く頷き、門の横に設置してあるインターフォンに手を伸ばした。
ピンポーン
間の抜けた機械音の数秒後、用務員らしき男の声が返り、入校の許可が下りる。
門をくぐった瞬間、司狼はふと足を止めた。
(…………?)
何かが変わった気がした。目に見えるものは同じなのに、肌が微かに抵抗を感じている。
隣の妃奈も首を傾げている。どうやら同じ違和感を感じたようだ。
「ご足労いただき、ありがとうございます。」
司狼たちを出迎えたのは、30代半ばほどの女性教員。笑顔を作ってはいるが、疲弊しているのはその顔色で明らかだった。
「……こちらが校長室です。」
三階にある校長室まで、ほとんど会話もなく案内される。室内へ通されると、女性教員は足早にその場を去っていった。
「失礼します。」
司狼たちが入室すると、中には50代後半ほどの壮年男性がいた。二人の姿を認めた彼は目を見張り、すぐに恐縮したように眉尻を下げる。
「これはこれは……まさか、桜嶺学園の生徒さんとは。私は桂陽高校の校長、久佐木と申します」
久佐木校長の口調はどこか古風で、言葉の端々に律儀さがにじんでいた。
誰に対しても分け隔てなく、丁寧に接することを常とする人物なのだろう。
「……ご丁寧にどうも。桜嶺学園1年の龍ヶ崎司狼です。」
「同じく、藤堂妃奈です。」
簡単な自己紹介を交わし、応接セットへと腰を下ろすと、司狼が早速本題を切り出した。
お読みくださりありがとうございます!今回は舞台を桜嶺学園から離れ、地方の公立高校「桂陽高校」へと移しました。
校門をくぐった瞬間に感じた違和感。校長の異様な丁寧さ。そして教職員の表情に潜む疲弊……
司狼と妃奈、それぞれの“感覚”が捉えた微かな異変が、やがて大きな真実へと繋がっていきます。
次回も少し緊張感のある展開になりそうですが、どうぞお付き合いくださいませ!
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