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第3話 大賢者、実力を出す


 鼻息を荒くする彼――恐らくこの身体ラティスの父親であろう者。


 私は思わず心の中でため息を吐く。


(愚かな……)


 魔法とは魔を退け、人々の生活を豊かにするものだ。


 私のようにそれ自体を楽しむ変わり者もいるが……。


 決して、生まれ持った魔法の才能などというモノで我が子を愛するかどうかを決めて良いモノではない。


 この子……ラティスはまだ若い。


 父親に見捨てられ、絶望にうちに自死の魔法を自身にかけてしまったのだろう。


「……かしこまりました、準備をしたら出ていきます」


「ふん、本当はこのまま身一つで叩き出しても良いのだ! 慈悲深い私の心に感謝するのだな!」


 こんな家を出て好きに生きれば良い。


 ラティス君にこの身体を返せる時が来るかは分からないが、私はそう思い学生服などを鞄に詰め込んだ。


 部屋を出て、屋敷のエントランスに行くと使用人と思わしき者たちが全員集まっていた。


 そして、その中心にはクリスタリアの学生服を着た金髪の青年がいた。


「おう、ラティス! お前がみじめに出ていくところを見送ってやろうと思ってな!」


 そう言うと、屋敷の使用人たちは練習でもさせられたかのように一斉に笑い出す。


 恐らく、先ほど言っていた『優秀な兄弟』の一人だろう。


 全く、悪趣味な奴だ。


「お世話になりました。また学校でよろしくお願いします」


「はんっ! まさかお前、その成績で学校に来るつもりかよ!?」


「はい、私――僕も頑張ればきっと魔法を修められると思いますので」


 そう言うと、金髪の青年は心の底から愉快そうに腹を抱えて笑い出した。


「無理に決まってんだろーが! バーカ! 次の模擬戦闘試験でテメーはコテンパンにやられて自主退学だ!」


「……失礼します」


 これ以上話しても無駄だろう。


 私は屋敷を出る。


 外に出ると、この場所は街の外の郊外――山の上だった。


 北の方に城壁に囲われた大きな街が見える。


(さて、身体は変わったが今の私の魔力はどれほどなのだろうか?)


 そんな風に思っていると、丁度街の上空にドラゴンの群れが向かっているのが見えた。


「『遠視の魔法(スナイパー)』」


 魔法で視力を上げてみると、Aランクのモンスター"黒龍"の群れだった。


 あのままだと街を襲ってしまうかもしれない。


 小手調べに、攻撃を仕掛けてみるか。


 私は両手を合わせて術式を編み、両手で弓矢をイメージする。


「『千本の矢(サウザウンドアロー)』」


 魔法が発動すると、自分の周囲の空間から千本の魔法の矢が高速で射出された。


 そして、数キロ先の黒龍たちを一匹残らず殲滅する。


「うん……どうやら魔力は元の身体のままのようだ。とりあえず、あの街へ行ってみようか」


 きっと、クリスタリア魔法学校もあの街にあるだろう。


 今の魔法教育がどのようなモノか、確認しておかねばなるまい。


 空の静けさを取り戻すと、私は歩いて街へと向かった。



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