「天地創造」
Die Schöpfung --Franz Joseph Haydn
創造の前には、厳粛な儀式が執り行われなければならない。
久しくなかったが、いま、人間のいない時代が、再び到来しようとしている。
厳密には、ただひとりを除いて。
地平から天へ垂直に伸びる光明は、明烏の到来とともに、眠れる神々を呼び覚ましていく。
「来たれ!!!」
人の子が叫ぶ。十歳前後の、男とも女とも定かでならぬ者が。
かつて、海原に墜落せし、神が顕現された。
海原に浮かぶ人間の形跡は、立ちどころに消失していく。
祝福の声が、空間を満たしていく。
「来たれ!!!」
かつて、天空において姿を消した、神が顕現された。
空を侵す人間の形跡は、立ちどころに消失していく。
祝福の声が、空間を満たしていく。
「来たれ!!!」
かつて、地に果てた、神が顕現された。
これがもっとも、重い使命を担いし神である。
地の神は、蓄積した怒りを一つの点にまとめ、目下の鉄に置かれた。
すると、立ちどころに、文明の痕跡が、消失していく。
いよいよ、祝福の声は、空間を満たしていく。
海の神、天の神、地の神が、人の子の前に並ばれた。
「私はね、神に近くあった人間を、幾人か知っている」
地の神が言われた。
「だから、君を消したりはしない。その幾人かの人間たちに、感謝すべきだ」
天の神が、人の子に触れた。
「永劫、年を取らぬまじないだ」
人の子は、祝福を表情にあらわした。
儀式が、始まろうとしている。