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ソレムニス  作者: 由羽
2/10

「マエストロ」

beethoven symphony 7

違う。違う。テンポが速すぎる。

波形の間隔は、もっともっと広く、表記に惑わされず。楽曲全体の相対的速度なんだ。

これを保ったまま、二楽章は曲中もっとも沈鬱に、それでいて平気な顔をして、入っていくべきなんだ。


「テー、テテテーテー、テーテッテッテーテー」


違う。ちょっと待て。

どっからだい?どこから、この甲高く、乱すことを屁とも思わないような雑音が入ってくる?


もう一度。

「テー、テテテーテー、テーテッテッテーテー・・・」


続けて。

「テーテー、テレレーテレ、レレレー」


第一楽章の波動は連綿として、二楽章の底流になければならん。

聞くにはそうさ。どこに第一楽章の片鱗があるというんだ、そう言いたくなるだろう。

しかし、克服され、征服し尽くした姿勢が、二楽章の暗澹たる調べに直結していなくちゃならん。


おい。なんだ。食器の音?子の泣く声?薄気味悪く、人の気を踏みにじる笑い声?

ん?傲慢な車輪の音か?なんだ?


いったい誰だ。道路工事をはじめようとしている奴は?

いったい、どこのどいつだ。神聖な舞台を破裂せしめるエンジン音を、口から発している奴は?


生真面目な肉袋を被った、紳士の薫香も漂ってくる。

冷徹な眼光を我がものとして錯覚する淑女の芳香もあるぞ。きつい香辛料のような、拭い難い臭いだ。


「先生。えっと、そんな人、ここには居りませんが?」


いやいや、居る。私には聞こえるんだ。香るんだ。


「また、始まった。いったい、先生はいつから、あぁなってしまったんだ」


もうやめてくれ!

金ならみんなくれてやるから。

君の自由は、君のものだから。

だから、その口を、ただつぐんだまま、ただそれだけで良いんだ。ひとりにしてくれないか。独りに。


いいか。指揮棒は、もっとも尊い代物なんだ。

私は、後生大事に、これを守っていくと決めたんだ。

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