10-1.真実への道
翌日は土曜日で、孤児院の授業は休み。
フィオナはのんびりと朝食の支度をしながら、エリオスの帰りを待っていた。
(…昨日はほんとに、びっくりした…)
教会で打ち明けられたサリアの想いに、フィオナはすっかり、サリアという少女のことが分からなくなってしまった。
学校ではあれだけ執拗に嫌がらせをしておきながら、今になってわざわざフィオナを訪ねて謝罪するとは。
(そういえば私…今まで、サリア様ときちんとお話したこと、一度もなかった…)
本当のサリアは、一体どんな人物なのだろうか。
スープを煮込みながら、そんなことを考えていると。
――コンコン。
ノックの音に、フィオナは駆けていって玄関を開ける。
扉の向こうに立っていたのは。
「フィオちゃん、おはよっ」
「リゼルちゃん!」
フィオナが招き入れると、小脇に封筒を抱えたリゼルがリビングを見回す。
「エー兄、まだ帰ってないんだ?」
「うん、もうすぐ帰ってくると思うけど…」
リゼルは小さく肩を竦めると、気を取り直したように、封筒をフィオナに差し出してきた。
「じゃあこれ、フィオちゃんにお願いしよっかな。昨日エー兄に頼まれた鑑定書、出来たから持ってきたの」
フィオナはそれを受け取ると、中身を確認する。鑑定人として、リゼルとジーゲル教授の名前が連名で記されていた。
「分かった。エリオス様に渡しておくね。…でもリゼルちゃん、こんなに高度な鑑定が出来ちゃうんだ」
「えへへ…まぁ、ジーゲル先生にいつも鍛えられてるから。」
フィオナに褒められて、リゼルは照れたように笑う。フィオナは鑑定書を封筒にしまいなおすと。
「リゼルちゃんも朝ごはん食べてく?すぐにできるよ」
「んー、時間ないから、やめとく!これだけもらってこっかな」
言いながら、リゼルはエリオスの分のミートボールを一つ、手でつまんで頬張る。