7-1.想いの行方
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エルメールに逃げ込んで来た侍女の話は、クロエを通してフィオナにも伝えられた。
フレデリックが教えてくれた茶会がお開きになった後、クロエはフィオナを自分の部屋へ誘ったのだ。
そもそも件の侍女ははじめ、ローゼンブルグ出身であるクロエを頼って王宮を訪れたらしい。
「本当なら王宮で正妃教育が始まる予定だったんだけど…その一件があったから、予定を変更して先にこちらへ戻って来たの。」
「そうだったんだね…」
フレデリックも、今回の件をエリオスに伝えるため、表向きの来国理由が欲しかったのだろう。
突然エリオスの家を訪ねてきたその裏に、そんな理由が隠されていたとは。
「グライナー公爵様…私も王宮の夜会で、数回ご挨拶した程度だけど…」
「事実だとしたら、王宮へのダメージは避けられないでしょうね。フィオの所まで、影響が及ばないといいんだけど…」
「うん…」
今回の一件が、今後どのように波及していくのかは想像もつかないが――ハインツやルノワール、そしてエリオスが巻き込まれるようなことになれば、フィオナに何か、出来ることはあるのだろうか。
「とにかく、何か困ったことがあればいつでも言って。私もリック様も、必ず力になるわ。」
クロエがフィオナの手を取り、ぎゅっと握り締める。
「…うん。ありがとう、クロエ」
フィオナもクロエの目を見て、頷いた。
と、そこへ。
コンコン、とノックの音が響き、扉を開けてフレデリックが顔を出した。
「クロエ、俺ももう、部屋で休ませてもらうよ」
「あ、はい。今日はお疲れさまでした」
クロエも、フレデリックに微笑みかける。
「それじゃ、フィオナ嬢もごゆっくり」
「ありがとうございます」
扉が静かに閉められ、フレデリックの足音が遠ざかっていった。
クロエの横顔を見つめながら、フィオナは。
「…なんか、もうすっかり夫婦って感じだね」
「えっ?」
クロエが、目を丸くして振り返る。