6-3.それぞれの思惑
数日後、フィオナとエリオスが昼食を終え、リビングで寛いでいる時だった。
玄関の扉が、勢いよく開け放たれる。
「よぉ!元気にしてるか?」
扉の向こうで、爽やかな笑みを浮かべるのは。
「…リック!?」
フィオナもエリオスもぽかんと口を開ける中、フレデリックはすたすたと家に入り込んでくる。
「おいおい、また魔道具が増えてないか?相変わらずだなぁ」
「仕方ないだろ、職業柄色々と必要なんだよ」
「婚約したての新居がこれじゃあ、フィオナ嬢も窮屈な思いをしてるんじゃないか?」
フレデリックは心配そうにフィオナを見やるが、フィオナは首を横に振る。
「いえ、私はこのお家、とっても気に入ってます」
にっこりと微笑むフィオナに、フレデリックは意外そうに眼を見開いて。
「…お前、いい嫁さんもらったな」
横にいるエリオスを小突くと、エリオスは赤らんだ顔を右手で覆い隠すのだった。
「ところで殿下、今日はどうしてこちらへ?」
「…まさか、また城を抜け出してきたのか?」
フィオナとエリオスに問われ、フレデリックはニッと笑って見せる。
「抜け出しと飛び入りは、俺の専売特許だからな」
「…自分で言うな」
「嘘、嘘。今回は正式に、クロエの実家に帰省してきたんだよ。」
半眼のエリオスを宥めるように言ってから、フィオナに視線を向ける。
「クロエが、酷く君に会いたがってるんだ。近々茶会を開くから、顔を見せに来てやってくれ」
「ええ、是非参加させてください!」
その言葉に笑顔で頷くと、フレデリックは再びエリオスへ視線を戻した。
「エリオス、厩でスノウが暇そうにしてたぜ。俺も愛馬を連れて来た。ひとっ走り付き合えよ」
「…分かった。今準備してくるよ」
エリオスはそう言って、馬具を取ってくると。
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
「はい、お気をつけて!」
連れだって出て行くエリオスとフレデリックを見送ったフィオナは。
(あ…殿下にお茶も出さないで、失礼じゃなかったかな?)
嵐が過ぎ去った後のように、静まり返った家の中で、ふとそんなことを考え始めたのだった。




