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6-1.それぞれの思惑

「本当に良かった。突然殿下にプロポーズされたって聞いたときはびっくりしたけど、考えてみればとってもお似合いな2人ですよね」


「ああ、そうだな」


エリオスと2人で夕食をとりながら、フィオナはエルメールへと旅立つクロエの晴れやかな笑顔を思い出していた。


「クロエには今度こそ、幸せになってほしいなぁ…」


「…今度こそ?」


チキンステーキを口へと運びかけて、エリオスが首を捻る。


実はクロエには、1年ほど前にも縁談の話が持ち上がっていた。


相手はグライナー公爵家の長男、ローラント。グライナー家はアイゼルハイム家と同様、王族の血筋である。


ローゼンブルグ王国では、現国王から5親等以内の血族に王位継承権が与えられる。


既に別の家の当主となった者や、騎士などの役務に従ずる者などは除外されるため、対象となるのはほとんどが成人前後の若い王族だ。


そしてローラントも、王位継承権を有する者の一人。順位はクラウス、エリオスに次ぐ第三位だったが、エリオスが権利を返上したことで第二位に繰り上がった。


ちなみにこの継承順位は法で定められているものではなく、次期国王選出において参考とするために、候補者の年齢や王との続柄をもとに決められている。よって、必ずしも順位が高い者が選ばれるわけではない。


つまりローラントも、将来国王に選出される可能性は十分にあるのだ。


そんなローラントの婚約者として、最有力候補に名前が挙がっていたのが、クロエだった。


フィオナからすれば、クロエは家柄、才覚、そして美しさと3拍子揃った完璧な令嬢だ。


当然、婚約者に指名されるものと思っていたのだが――選ばれたのは、別の娘だった。


エリカ・キースリング子爵令嬢。魔法学校の同級生であり、サリアの『親友』と言われている少女。


黒に近い銀色の髪を肩の下で切り揃え、海を映したような青色の瞳は、いつも自信なさげに下を向いていた。


学校でのエリカは常にサリアの後を付いて回り、クラスメイトに『サリアの腰巾着』と揶揄されることもしばしば。


しかし、サリアにこそ及ばなかったものの、エリカも試験では毎回10位以内に入る優秀な生徒だった。普段からあまりに大人しかったため、これまで誰からも注目されたことがなかったのだ。


とは言え、家柄も学校での成績も、クロエの方が上。何故クロエが選ばれなかったのか、フィオナには到底納得できなかったのだが。


「結婚相手を決める基準は、きっとそう単純じゃないのよ。…それに私は、自分で選んだ相手と結婚したいわ」


そう言っていたずらっぽく笑うクロエは、全く気にしていない様子だった。


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