3-17.新しい家族
「ああ。さっき、母上に小瓶を一つ譲ってもらって、作ってみたんだ。」
エリオスが手にしていたのは、銀の蓋と鎖が付いた硝子細工の小瓶だった。中には、透明な液体が入っている。
エリオスはそれを、そっとフィオナの首に掛けた。
「え、エリオス様、これは…?」
「聖水瓶だよ。うちの家の女性はみんな、お守り代わりに持ってるんだ。…フィオナも、うちの家族の一員みたいなもんだろ?」
胸元の聖水瓶を思わず手に取るフィオナ。繊細な彫刻が施され、光が乱反射してきらきらと輝く。
「綺麗…」
感嘆の溜め息と共に零れ出た言葉に、エリオスも嬉しそうにはにかんだ。
「それ、良かったら身に着けててくれないか。…明日から俺も仕事だし、フィオナも孤児院に行くんだろ?」
聖水とは、浄化の魔力を込めた水のことだ。身に着けていればいざという時に、魔力の持ち主へ身の危険を知らせることができる。
「念のため、王宮には1人で近づかないようにしてくれ。何かあったら、それを使っていつでも呼び出してくれていいから」
エリオスの優しさに、心の中にじんわりと、温かさが広がった。
「…ありがとうございます、エリオス様」
聖水瓶を手に微笑むフィオナと、ほっとしたように笑うエリオス。
リビングの奥では、猫ちぐらで寛ぐウォルナットが、大きな欠伸を零していた。