表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/113

1-1.婚約破棄、そして…

「フィオナ・フォンベルク嬢。私は、君と結婚することは出来ない」


ローゼンブルグ王国第一王子、クラウス・ローゼンブルグが、壇上からそう言い放った。


クラウスの視線の先に居たのは、透き通るようなプラチナブロンドにアクアマリンの瞳を持った、17歳の少女。


フィオナは、たった今まで婚約者だった青年を前に、頭が真っ白になった。


その周りでは、多くの生徒や来賓たちが、俄かにざわつき始めている。


ここは、ローゼンブルグ王立魔法学園のセレモニーホール。今は、フィオナたちの記念すべき卒業式の真っ最中だ。


そしてフィオナは、学園の卒業と同時に、クラウス王子の正妃として婚姻を結ぶ予定となっていた。


「2年前私は、学園一の魔力を有していた君に婚約を申し込んだ。王国のために、君の力が必要だと考えたからだ。…だが、卒業前最後の試験で、君の成績を上回る女生徒が現れた。」


ローゼンブルグ王国では、持てる魔力が身分と並んで重要なステータスとされる。


王立孤児院出身で、爵位どころか身寄りもないフィオナが正妃候補に選ばれた理由は、その人並外れた魔法の能力に他ならなかった。


王国の名を冠するこの魔法学校は、国内最難関の名門校。何を隠そう、クラウス王子その人も、この学園の卒業生である。


王侯貴族の令息令嬢の登竜門であると同時に、能力がある者は平民でも入学を認めるという開かれた教育理念が、この学園の大きな特長だ。


そんな学園に、クラウスの2つ後輩として入学したフィオナ。すると忽ち、その実力は『稀代の天才』と学園中で囁かれるようになった。


そしてクラウスの耳にも、フィオナの噂はしっかり届いていたらしい。2年前の今日、クラウス自身の卒業の日に、彼はフィオナに婚約を申し込んだ。


学園で優秀な成績を収めれば、卒業後には平民であっても王国の重役に抜擢されたり、上位貴族の婚約者に選定されたりと、多くのチャンスを得ることができる。


とはいえ、第一王位継承者の正妃に平民のフィオナが選出されるなど、歴史上類を見ない大抜擢であったのだが…


完全に思考が停止してしまい、立ち尽くすだけのフィオナをよそに、クラウスは高らかに、一人の少女の名を呼ぶ。


「サリア・レイモンド伯爵令嬢。こちらへ」


呼ばれて、その場にいる全員の視線が集まる中、その少女は優美に、クラウスのもとへと歩を進めた。


「私は、フィオナを破って学年一位の栄光を手にしたこのサリアと、改めて婚約を結ぶ。彼女が正妃教育を終えた暁に、婚礼の議を執り行う予定だ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ