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【完結】騎士と恐竜の紀元前ラブストーリー  作者: 山野げっ歯類
二伝:アロサウルスとアンキロサウルスとプテラノドンと
5/27

必殺!!!!筋肉シェルター

(いや、アルマジロではないでしょ)


 聖槍のツッコミは早かった。



「甲羅のような硬い部分は大丈夫だが、その下の体は血だらけだ。かなり怪我をしているようだな。早く手当しなければ……」


(この時代に傷薬なんてあるのか?)


 パーシヴァルは『これで解決!原始時代生活百科事典』をフンドシこしみののポケットから取り出した。


 どうやら、先ほど戦った3体の肉食恐竜はアロサウルスというらしい。

 あのあごに掴まれるとひとたまりもなく、そのまま鋭い歯で骨まで砕くのだそうだ。


「今後は出会う前に逃げたほうがいいな」

(せやな)


 さらにページをめくる。

 と、「鎧竜」と書いてあるのを見つけた。



「む、この恐竜……アルマジロっぽいぞ」



 —------------------------------


【鎧竜類】

 アンキロサウルス


挿絵(By みてみん)



 歩く戦車とも呼ばれる草食恐竜。骨の板と突起で覆われており、丸くなることで外敵から身を守る。

 しっぽがハンマーのようになっており、お尻をフリフリしてハンマーパンチをお見舞いする。体重が重いことを気にしている。


【育て方】

 お父さんお母さんは巣の上に座って卵を温めてあげましょう


【餌】

 葉っぱ、木の実


【怪我をしたときの対処法】

 外傷には(ガマ)の花粉をつけるといいでしょう。

 風邪を引いたらトウシキミの種子を砕いて食べさせてあげましょう。


 —----------------------------------------



(ずっと疑問に思っていたんだが、この百科事典は誰向けに書かれているんだ? どういう状況で育て方の項目が必要になるの?)


「ロン!何を言う、まさに今じゃないか!!」


 パーシヴァルの両手の上で丸まっているアルマジロ――…… いや、アンキロサウルスの赤ちゃんがわずかに震えている。



「よし!まずは(ガマ)を取りに行くぞ!あの水辺に生えているソーセージみたいな植物だな」



 パーシヴァルは再び槍を担いでフンドシスタイルで森の中を駆け抜けた。


 帰り道は運よくアロサウルスと出会うことはなかった。



 森を抜けて河原に到着すると、パーシヴァルはアンキロサウルスの怪我の表面を水で洗った。

 手足や腹など、すでに固まった血がこびりついている。


 水が()みるのか目をぎゅっと閉じて「ギュワ~~~~~……」と痛そうな声を出した。

 その声にパーシヴァルの眉も下がる。


「すまない……。だがしっかり洗っておかないと傷が化膿(かのう)してしまう恐れもある。少しだけ耐えてくれ」


 傷を洗い終わると、自らのフンドシを解いてアンキロサウルスの体を拭いてやった。

 そして河原に元気よく生えている極太の(ガマ)を何本か狩り、花粉を傷の部分に丁寧に塗りこんでやる。


 その上からフンドシを巻いてやると、全裸のパーシヴァルはほっと息を吐いた。

 応急処置はこれで済んだはずだ。


「これで少しは元気になってくれるといいが」






(パーシー。これからどうする。一雨来そうだぞ)


 ロンの声に空を見上げると、西のほうから黒く分厚い雲が流れてきている。

 その様子からして大嵐になる可能性もありそうだ。


 だが、雨風を(しの)ぐためのログハウスはこれから建てる予定だったため、まだ完成していない。


「できるだけ大きな木の下に避難するしかないな……」



 そうこうしているうちに雨が降り出し始めた。

 横殴りの雨になり視界が(さえぎ)られる。時折雷が落ち、地面を揺らした。


 近くにある木の下に避難はしたものの、雨風を完全に(しの)げるわけではない。


 全裸の男とアルマジロと槍は途方にくれた。


(もしかしたら俺……錆びちゃうかも)


「お前は聖槍だろ。魔法を帯びてるから錆びることはない」


 パーシヴァルの指摘にホッとするロンゴミニアド。

 一方、パーシヴァルの腕の中にいるアンキロサウルスの震えは止まらない。


「ただでさえ怪我をしているのに……雨で体温を奪われては一大事だ」


 パーシヴァルはアンキロサウルスの赤子を地面に置いた。


(パーシー? 何をする気だ。まさか放置を)


「騎士たる俺がそんなことをするわけがなかろう! 弱い者に手を差し伸べる、それが俺の信念だ!!」



 というと、パーシヴァルはアンキロサウルスに覆いかぶさる形で丸くなった。





「最強騎士の筋肉シェルターだ!!! これで雨風対策完璧!! 中はホカホカだ!!!」




 この嵐は夜が明けるまで続いた。


 パーシヴァルの筋肉シェルターも夜が明けるまで開くことはなかった。







(パーシー、パーシー! 嵐が去ったぞ)

「………おお、そうか」


 パーシヴァルが顔を上げる。

いくら聖騎士と言えど、夜通し全裸で雨風に打ち付けられていたため疲労の色が見えた。



「赤子は大丈夫か?」


 優しく語り掛けると、アルマジロはもぞもぞと動き出した。

 鎧の中から手と足、尻尾を出し……最終的に頭をひょっこりと現し、パーシヴァルのほうを向いた。


 つぶらな瞳と鳥のようにとがったくちばしのような口で、



「ギュワ~」



 と鳴いた。



アンキロ!アンキロ!!ヒロイン!!!読んでいただきありがとうございます!

いいねやポイント評価をしていただけると次話を書く励みになりますので、気が向いたらぜひよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] きっとその百科事典は魔本なんですね。 見たい情報を見せてくれるんですよ。 でもってアンキロちゃん良かったですねぇ。
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