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第3話 思い悩む娘たち

「……なるほど。そうなったか」


後日、俺はミコトとユーフから事の顛末を聞いた。やはりというべきか、シスターの相手は俺たちに対して強い復讐心を抱いているらしい。

それは予想の範囲内。特に気にすることではない。

そしてそれを語って教えてくれた2人だが、


「ありがとね。……かなり方法は過激で勇者としては受け入れがたい方法だったけど、助かったよ」


「ええ。罪なき人々が虐殺されてしまうのは非常に辛いことですが、友人の件は助かりました」


もの凄く微妙な顔をしながらお礼を言ってきた。流石に村1つを滅ぼされるのは受け入れがたいことだったようだな。

だが、言い換えればそんな受け入れがたいことをやるために俺はいるのだ。


「べつに良いじゃないか。恨まれるのは俺たちで、お前達には何の害もない。……いや、逆に俺たちに対して強い復讐心を持つやつが生まれただけ利益になるかもしれないぞ」


「「アルスト……」」


俺が悪そうに笑うと、2人は顔を曇らせる。2人も心の中では分かっているのだろう。これ以上に良い方法はきっと見つからなかったと。

だが、それでも受け入れられないのだ。人類を守る勇者として。人類を救う聖女として。

だからこそ、思い悩む。具体的な行動は俺が行なったのに、自分たちは文句を言うだけである現状がこれでいいのかと。自分たちでは何もできなかった癖に、やってくれた相手に対して心の底から感謝できない今のままで良いのかと。そして、自分たちでは何もできず、本来敵である四天王に甘えていないかと。


「……くくくっ。思い悩む小娘を眺めるのは楽しいな」


「「「「小娘」」」」


俺が笑うと、勇者パーティーの面々は揃って反応する。やはり俺に小娘と言われるのには違和感があるようだな。


「思い悩むのなら、いつでも俺の所に来ると良い。また相談事にはのってやろう」


「ああ。うん……」


「ありがとうございます……」


2人は微妙な表情で頷く。

だが、この表情は決して相談することに対して躊躇するものではない。おそらく、いつまで相談ができるかと考えているのだろう。

なにせ、今は乱世なのだから。


「何かあれば早く相談しに来た方が良いかも知れないぞ。……どちらかがいつ死んでもおかしくない世の中だからな」


そう言って俺はフハハハッと笑う。兪者パーティーはそれを聞いて苦笑を浮かべていた。ちょっとブラックジョーク過ぎただろうか。

そう思っていると、ミコトとユーフは表情を変え、


「そうさせてもらうね。……次は村を破壊しないでくれると嬉しいかな」


「また何かあれば頼らせて頂きます。……次は、罪なき人々を殺さない方法が良いですね」


それぞれ希望まで伝えてきた。実に我が儘な勇者と聖女な事だ。だが、俺はそれを許す。

そして、


「くくくっ。善処しよう」


とだけ答える。これはあれだ。やってもやらなくてもどっちでも許される答えだ。聞き手側からすれば、


「「それ絶対やらないやつじゃん(じゃないですか)!!」」


という風に捉えられるからな。

ここで言われたことをやらなければ、本当にやらなかったんだぁ。予想通り。で終わるし。

ここでもし言われたとおりにすれば、やってくれたんだ。優し~。となる。

どちらも特に俺にデメリットはないわけだ。良いよな。曖昧な返答って。使う分には非常に便利だ。


「まあ良い。戯れは終わりにするか。そろそろタイムリミットだろう」


「ん?ああ。結構時間経っちゃったね。そろそろ痕跡作って撤退しないとダメかな」


「ああ。そうだろう」


俺たちはお互い少し後退する。それから、


「はあああぁぁぁぁ!!!!『ジャッジメントボルトオオオォォォォォ!!!!!!!!』」


「唸れ『深淵の爪』」


それぞれ、そこそこの威力で派手な技を使っていく。配下のアンデッドにも適当に派手な攻撃をさせておいた。

こうすることで、俺たちが戦っていることを演出するのだ。友好関係を築いているなどバレるとお互い立場がまずいからな。


「ミコト!今日は俺の新技を見せてやろう!!」


「何!?アルストの技は格好良いから楽しみ!!


俺の言葉を聞いてミコトは目を輝かせる。こいつは格好良いモノが好きで、若干厨二病的なところもあるからな。俺が闇属性だったりその辺の技を使うと、凄く喜ぶのだ。……ちなみに、俺も技を見せて喜ぶのは悪い気はしていない。


「刮目せよ!俺の新たなる技!……『死者の扉』」


俺はパチンッと指を鳴らす。次の瞬間、周りにいた一部のアンデッドが集まり、1つの扉を作り上げる。死者の体で作られた扉だ。

俺はその扉に手を当て、


「繋げよ!」


ゆっくりと扉を開ける。すると、


「……あ、あれ?」


「こ、ここは?」


景色が一変した。勇者パーティーの面々は困惑した素振りを見せている。

俺はニヤリと笑い、


「さぁ?どこだろうな?」


俺はもう一度扉を開いた。そして、元の場所に戻っている。


「……じゃあな。俺はここで帰る」


「え?あっ!?ちょっと!?今回は全然分かんなかったんだけどぉぉ!!???」


絶叫が聞こえるが、俺は無視して飛び去る。

多くのアンデッドは少し後退させてそこで待機させておく。そして俺は、


「魔王様。ただいま戻りました」


「あっ。アルスト~。お帰り~」


魔王城に帰ってきた。期間の報告をすると魔王様は立ち上がり、


「よぉしよしよし。今日もアルストは可愛いねぇ。怪我はない?大丈夫だったぁ?」


頭を撫でながらそんなことを訪ねてくる。だが、俺が何か返答しようにも、撫でている手と反対の手で抱えられて抱きつかれているため、喋ることもできない。

その後も俺はしばらく魔王様に撫でられて過ごすのだった。


「……はぁ」


やはり俺の心を分かってくれるのはミコトだけだ。





「本編開始前に死ぬはずだった四天王ですが、意気投合した勇者とその仲間達の相談役にされてます」《完》

この作品は一旦ここで終了です!

この作品の他にも同じような短さの作品を投稿しているので、作者のページから「長編化予備群」のシリーズを覗いて頂ければ!!

人気があった作品は長編化します。勿論この作品も……チラチラッ(ブックマークや☆をつけて頂ければ、続きが書かれるかも……

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