終わりの始まりの終わりの終わり
無能は無能なりに無能を極めたらいいのに。
さてと、どうしたものだろうか。
不思議と俺の心は落ち着いていた。まぁ目の前の気配に気付かないほど耄碌してもいないので冷静を装ってるだけか。
「何をしているんだ、シックス。」
彼女は特級請負人No.6『美しき旅行者』 玲珠 舞泰俺の可愛くない可愛くない後輩だ。
「ひどいなぁ、名前で読んでくださいよぉ、精子先輩。」
「精子じゃない、静止だ。」
「失礼しました、射精 静止先輩。」
「途中で止めたのか!?」
発情期か。だがよくよく考えてみると人間の発情期なんて強いて言えば年中な気もする。まあどうでもいいか。
中々に面白くてこのまま続けておきたいとは思うが、これ以上ディープな所まで行ってしまうとまずいし、一応緊急事態なので止めて説明を始めることにした。
「えぇ……?つまり先輩が朝起きたら記憶が失くなってたって事ですか?」
「そうだ、というか今の状況だとはっきり言ってお前以外犯人は考えられないぞ。」
「なんで私が先輩の記憶なんか奪わないといけないんですか。というかあの記憶はデメリットが大きすぎますし、私は記憶を奪う系統の記憶は持っていません。」
「まあ、それもそうか、お前程記憶を失ったときのデメリットが大きい者もいないだろうしな。」
「そうですよ、疑うなら他にいるでしょう?」
「ですが聡明な我が後輩であるシックス様にとって最早犯人は特定されているのと同じようなものですよね?」
「その物言いは中々に腹が立ちますねぇ?犯人は一切わかりませんよ。私が部屋にいることに気付かずに寝た先輩にどうやって悪戯をしてやろうかずっと考えていたんですけれども、誰も部屋に入ってきてませんし何かあったら私が止めてます。」
「そうなのか、だが方法はあるだろう?目には目を、歯には歯を、記憶には記憶を、だ。」
「私は目には歯を、歯には衝撃を、記憶には特殊能力を、と考えていますがね。」
「その理論で行くと記憶に対処できるのは特級請負人だけということになるな、俺達しか特殊能力を持っていないのだから。」
「話が逸れていますよ、しっかりしてくださいよぉ。」
「お前が始めた話だろうが!」
「はは、すみません。」
「それで、さっきの話を聞いた上で何か思いついたことは?」
「強いて言うなら……我々と同じ……」
「同じとは……まさか?」
「そうですよ、特級請負人です。」
当分は諦めるしかなさそうだ。
シックスの記憶をいくつか名前だけ紹介させてもらう。
『パンデミック(パンダは何も悪くない)』-人類滅亡
『涙の雨』-人類滅亡
『肉肉崩壊』-人類壊滅
『息が詰まってしまった』-人類壊滅
『愛を知らない子どもたち』-人類滅亡
『迷えない子羊』-一人だけ