第2部(前半) 設定資料
【登場人物】
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リーフ(シルヴィア・アンネ・ギリスアン)
推定十七歳。ヒトと景月族の両方の血をひく半獣。第六感強化型竜。
目的を見失い自殺未遂までしたが、リンに喝を入れられて逃亡旅行に駆り出されることになった。
傭兵団チーム・チャーコウルの実質的なリーダー。
幼少期を味方が誰もいない環境で過ごしてきた反動で、己に向けられる敵意や害意を明確に受け取る感覚〈害覚〉を会得している。その感知範囲は広く、小さな都市ならば全域をカバーできる。ただし、害覚から受け取る刺激には常に強い不快感が伴っており、五感に悪影響を与えている。
特に、敵が近くにいると味覚が不快感に上書きされるため、常に拒食気味。体格を維持出来ているのは、竜種特有の豊富な神性が肉体を最低限補完しているため。維持だけならば小食でも問題ないが、傷の回復や鍛錬には相応のカロリーが必要となる。
カロリーの主な摂取源は酒。
景月族の神性を扱うことができるが、経験が浅いため神性術はまだ未習得。今は制御の基礎をギルに教わりつつ簡単な神性武器の作製をしている。
戦闘では神性を体表に結晶化させることで盾にする。モンスター程度の攻撃なら完全に防ぎ、神性を伴った攻撃にも高い耐性をもつ。髪の毛を縫い込んだ外套に神性を通し、白い鎧として運用することもできる。
もう一つ、神性の使い方には結晶化を解いて拡散させることで得られる力があるが、そちらはまだ練習中。
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リン(リリルット・チャーコウル)
十六歳。狼の神獣――真太族の半獣。
リーフに好意を抱いてもらうために奮闘する、恋と闘争に夢中な乙女。ギルは百回死ね。
傭兵団チーム・チャーコウルの名目上のリーダー。
現・真太族の王アリスの命によって貴族社会の上層部に食い込んだ、チャーコウル公爵家の出身。
半獣の中でも特異な一代限りの形質、重複遺伝の保有者。重複遺伝の保有者は半獣でありながら、特定の神性の質が純血並みになる。ただし、それ以外の神性の扱い方はからっきし。
リンの場合、筋力強化に特化した神性を持っている。代わりに、本来真太族が有する感覚強化や共感能力が欠落した一匹狼。
特に共感能力は真太族にとって最も重要な能力で、符号に合わせた遠吠えや特定の神性術を介して情報や意識を共有することができる。この能力で広範囲の情報網を敷き、南部では真太族が運営する小教会が強い影響力を持っている。リンは直接このネットワークに参加できないため、他種族の傭兵同様、情報を得るには小教会に伺いを立てなければならない。
一方で、真太族の王に隠し事ができるというメリットもあり、リーフはこれをおおいに活用している。
真太族の皮革で作製した上着、耳あて、ベルトを装着したうえで、腰のベルトに刻まれた陣術を組み合わせることで獣化する。
獣化中は筋力が大幅に向上し、実戦レベルで散弾銃の片手撃ち、狙撃銃の抱え撃ちが可能になる。
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ギル(ギルスムニル・ヴレイヴル・レイジェアト)
自称十九歳(外見年齢)。純血の月喰族にして憑依霊型魔剣。五感強化型竜。
長年、西の果てに追放されていた悪名高き魔剣にして、敬月教で崇拝される勇者その人。
契約に基づき、リーフの命を代償に魔王の力を行使したが、何故か死んでいなかったリーフと命を共有するはめになった。
十九歳を自称しているが、人形触媒で顕現した外見はリンとタメかそれ以下くらいの少年。朱色の目を隠すために、普段は遮光眼鏡をかけている。本来の顔は古傷まみれのため、特殊メイクばりに化粧が濃い。
聴覚の感度と可聴周波数に調整を加えられた聴覚強化竜であり、人形触媒で実体化している間はその特性が現れている。
武器に結晶化した神性を付与して戦う結晶刃士。神性の制御と圧縮の技術が突出しており、結晶の刃を媒体(柄、小刀など)なしで即時精製するという、達人の域の離れ業を習得している。通常、術を介して結晶化した神性を精製するには、展開した構成式に合わせて神性を流すためどうしても遅れが生じる。それを構成式を展開しながら神性を流すことで工程を圧縮している。要は、電気回路をオンにしたまま基盤を組み立てている状態。
その他の神性術についても心得が多少はあり、〈飛槍〉による遠距離攻撃や使い魔人形〈翼蛇〉の操作ができる。
人形触媒に通せる神性の量・質には大きく制限がかかるため、触媒の使用中は初歩的な神性術の行使と体術のみで戦う。実は剣よりもナイフ格闘の方が得意。
殺戮を楽しんでいる傾向があるが、理由なく社会の秩序を乱す真似はしない。むしろ法や規則は厳格に守ろうとするスタンス。無差別に暴れているときは大抵、契約や誓約の強制力によるもの。
ただし、破壊活動に対する罪悪感はない。
酒と甘味が大好物。料理も得意で、スープ系統は絶品。
反面、ナマモノは吐くほど苦手。
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イーハン(イルハールス・エリオン・ライカ)
純血の闇夢族で騒動霊型魔剣。闇夢族は神性を分解できる消化器官をもつ大烏。
元は他の種族と交わらず奥地で身内の食らい合いをしながら生活していたが、餌を求めて人里に降りてきた。ヒトの子供を好んで捕食した罪で捕らえられ、処刑された後に魔剣となった。
魔剣としての契約者はリンだが、付き合いの長さと捕食者としての性を利用する観点からリーフと行動を共にすることが多い。つまり、汚れ役の拷問要員。好物は生前と変わらずヒト、特に子供。
戦闘経験が生前含めて全くないうえに、体力が最底辺の吸血鬼。暑さにも寒さにも直射日光にも弱いし、泳げない。
だが、捕食者として気配を殺す技能と獲物に飛び掛かる瞬発力はギルの一撃にも並ぶ。
感知能力に長けた神性の持ち主で、相手の神性や生命力の巡りを辿って弱点を探ったり、索敵することができる。ただし、一定以上の神性を保有する相手には萎縮してしまい感知能力が上手く働かない。リーフの〈害覚〉とは異なり、能動的な索敵が可能だが、大物食らいには一歩届かないもどかしい性能。
詠唱によって効果を発揮する神性術を使用し、獲物を怯ませて一気に捕食する。詠唱術は妨害されやすいため、一発限りの攻撃となる。
人食いという秩序をみだりに乱す性質から、ギルからは嫌われている。
本来、人食いを厭うべきリーフやリンからは、大人しい性格と契約に縛られた身の上から、あまり危険視されていない。
実は、能力の相性がリーフと最悪。




