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歯車はここに

今日もオコジョ日和

作者: 民間人。

 動くオコジョの縫いぐるみを、妄想した事があるだろうか。

 我が家にはオコジョの縫いぐるみが沢山いて、時々抱っこして眠るのだ。

 オコジョたちは黙ってつぶらな瞳を向けてくれたり……そっぽを向いて尻尾を垂らしたりしている。

 どの子も愛らしいのだが、やっぱり一番好きなのは、一番の年長さんオコジョ。一番の年長さんは腰が曲がって綿が抜けて、鼻が剥げて、毛が禿げて、髭もとれているけど、どうしようも無くかわいいのだ。

 かれこれ20年近い付き合いになる。この子を抱っこして寝すぎたせいで、この子以外の子が嫉妬してしまうくらいだ。


 この子たちはすっかり家族の一員で、家族みんなが構っていく。仕事に行くとき撫でてみたり、もふもふ、としてみたり。皆この子たちが大好きだけど、あんまりかわいがるから、嫉妬した家族が鼻をピン、とデコピンしたりもする。当然私は怒るのだが、その後その子を戯れに撫でている姿を見て、何とも言えない気持ちになる。兎に角私はこの子が大好きで、いなくなると不安になる。


 だから、たまに考える時がある。

 この子に魂があったとして、私の事を好きでいてくれるだろうか、と。この子との付き合いは本当に子供の頃からだから、私はこの子を家族だと思っているし、家族もこの子の事をただの縫いぐるみより大事にしてくれている。

 だけど、酷い事もしてきたと思う。小さい頃から一緒にいるから、怒っている時に八つ当たりしたりもした。今にして思えば、それがストレスになって、髭が取れてしまったんじゃないだろうか、と思う。オコジョは気性が激しいから、もしかしたら動けたら攻撃してくるんじゃないかと思う。するりと布団の中を駆け回り、脛を齧ったり、鼻先を引っかいたり、してくるんじゃないだろうか、とか。


 私が一方的に可愛がっているだけで、この子は私の事が嫌いだったら、悲しいな。そんな独りよがりな思いを抱いて、今日も机の上を見下ろす。


 小さな体でつぶらな瞳が、此方を見上げている。鼻を摩って、頭を撫でてみる。

 いまではすっかりおじいちゃん。大好きな、おじいちゃん。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぬいぐるみがとても大切にされて、大切に思っているのが伝わってくるところです。 オコジョのぬいぐるみが動き出したら、可愛くて、嬉しくて、でもなんだか泣いてしまうかもしれません。 温かく、切な…
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