002/異世界転移に付く≪極符(レジェンドレア)≫【ギリギリ小学生の少女/武士道(ブシドウ)華努(カド)】
ヒロイン達が異世界転移するまでの話
「ランキング一位返り咲き、おめでとう」
そういってくれたのは、あちきの三つ年上、十五歳、今度女子高生になる素理符、スー姉だ。
スー姉は、頭が良く、科学やネット技術に精通していて、お祖父ちゃんが創立したドーカというTCGの運営会社でも既にいくつかの仕事をしている。
見た目は、控え目な体系だけど友達やお祖父ちゃんの会社の人も認めるクール系美少女らしい。
髪型には、こだわりが無いようで邪魔な髪をサイドテールにまとめている。
何でも邪魔だから一度切ろうとした時、周りの人間が必死に止めたって話だ。
そんでさっきスー姉がいっていたランキング一位って言うのは、ドーカの賞金が出る大会で勝利する毎に貰える三年間有効なポイントランキングの事である。
ドーカは、お祖父ちゃんが考えて広めたTCGで、あちきは、物心つく前からこれをやっていた。
それもお祖父ちゃんが良くやって居た低レア縛りで。
それで大会に出る様になってランキング入りしたが、まだまだ小学校卒業間近の十二歳では、スポンサーをもたせられないって事になってる。
あちきは、改めてランキング一位になってる自分のユーザー情報を確認する。
ユーザー名≪カード≫、それがあちきのユーザー名。
巷では、あちきの戦い方から≪低符の皇帝≫なんて呼ばれているけど自分から名乗った覚えは、一度もない。
なんでって、低レアカードを使った戦術は、やっぱりお祖父ちゃんの方が上手いから。
だから≪低符の皇帝≫の名前は、お祖父ちゃんにこそ相応しいと思ってる。
お祖父ちゃんがドーカの創始者で大会に出れないから一番弟子であるあちきが、その名前を受けて居るだけだ。
そう考えた時、脳裏に不安が浮かぶ。
「お祖父ちゃんは、まだまだ生きられるよね?」
聞いてしまってから言ったら駄目な事だと思い直そうとしたが、スー姉が何か覚悟を決めた顔をしてあちきの肩に手を置く。
「はっきり言っておく。御祖父さんは、もう長くない」
「どうして? 病気かなんかなの? だったらお医者さんにかかれば良くならない?」
尋ね返すあちきにスー姉が大きなため息を吐く。
「病気でも怪我でも何でもない。純粋な老衰なの」
「老衰ってお祖父ちゃんってまだ六十だよね! 日本の平均寿命っ八十歳を越してた筈だよ!」
あちきは、大声での主張にスー姉は、頷いてくれた。
「確かに日本人の平均寿命は、それで間違いない。でも御祖父さんは、日本人じゃない。チーピ王国って国が何処かは、解らないけど、御祖父さんの話を聞く限り、かなり文明レベルが低く、貧富の差もあった。そして御祖父さんは、かなり幼少期は、常に飢えとの戦いだったらしい。三つ子の魂百までって言葉知ってる?」
「確か三歳の頃に覚えた事は、一生忘れないって感じの諺じゃなったっけ?」
あちきがうろ覚え知識を口にするとスー姉は、補足してくる。
「おおまかに言うとそんな処で、その言葉が示す様に幼少期の生活環境は、一生を左右する。御祖父さんの肉体年齢は、普通の日本人でいうと百歳を超えている。逆に今まで普通に生活が出来ていた事の方が不思議なくらい」
「百歳超す人だっていっぱいいるよ!」
自分でもガキみたいな主張だって解ってるけどあちきは、言わずには、居られなかった。
スー姉は、何も言わずにただあちきを抱きしめて頭を撫でてくれる。
解ってる。
そういう人達は、確りとした生活をしてきたから百歳を越えられたんだって事位。
お祖父ちゃんは、あちきが知るだけでも無理に無理を重ねて生きて来た。
ドーカの大会を一つでも多く開催する為。
新しい低レアでの戦術を完成させる為。
あちき達姉妹が自分達の道を確りと進める環境を作る為。
色んな事を人一倍がんばって生きて来た。
「最後の瞬間まで普通に接して欲しい。それが御祖父さんからのお願いだよ」
スー姉の言葉にあちきは、零れそうになる涙を袖で拭って頷く。
「うん。これからお祖父ちゃんに大会の優勝報告に行ってくるね!」
あちきは、自分の部屋を飛び出していくのであった。
あちき達姉妹には、両親は、居ない。
二人とも、あちきが物心つく前には、亡くなって居た。
病気じゃないし、殺された訳でも、交通事故や災害に遭遇した訳でも無い。
腹上死、エッチのやり過ぎだったらしい。
何でも次こそは、弟を作ってやる長女の渡楼、ドー姉に言って、金曜日の夜の夫婦の寝室に入ったそうだ。
翌朝、なかなか起きて来ない両親にドー姉が不信に思って見に行ったら、物凄く頑張った痕跡を残して、幸せそうな顔でお亡くなりになってたそうだ。
その時の話をする時だけは、お祖父ちゃんの顔が般若の様に怖いのであまり話題にしない我が家の黒歴史である。
そんなこんなで両親を亡くしたあちき達姉妹は、お祖父ちゃんに引き取られて育てられる事になった。
そんなお祖父ちゃんだが、実は、日本人じゃないらしい。
それもただの外国人じゃなく、密入国者らしく、正式な戸籍とかは、無かったらしい。
偽装工作した上でお祖母ちゃんの所に婿入りする形で帝輝って名前の日本人になりすましているって話だ。
本名は、デッキ。
苗字は、無いって言っていた。
そのなりそめだが、お祖母ちゃんの家は、元々武術道場をしていた。
武士道って苗字から元武士とか言われがちだが、あちき達には、武士の血は、流れてない。
何でも大元は、戦国時代末期に逃げ延びた武士が逃げ延びた農村に恩返しの為に始めた道場が始まりで、その道場主の一族が流行り病で無くなった時の一番の弟子だったあちき達のご先祖様が道場を引き継ぎ、明治維新で家名を貰える時に、武士の血は、流れてなくとも武士道だけは、護る誓いの証として家名にしたそうだ。
そんな武術道場だけど、この平和な世の中、あまり儲かって無く、その上、当時の道場主だったお祖母ちゃんのお父さんが事故で亡くなってしまい、まだ幼かった弟と二進も三進もいかなくなった時、偶々密入国したお祖父ちゃんと出会ったらしい。
まるで時代劇の様に借金を取り立てにきた三下たちをばったばったとお祖父ちゃんが倒したって、数年前病死したお祖母ちゃんが惚気ていたっけ。
その道場自体は、今では、当時幼かったお祖母ちゃんの弟、道場のお爺ちゃんが引き継いでいる。
何でもお祖父ちゃんには、TCGの低レア戦略を極めるって目的があったらしい。
お祖父ちゃんの故郷、チーピ王国では、ドーカの元になったTCGがあるが、高レアのカードは、常に富裕層がもっていて、貧困層だったお祖父ちゃんは、触れる事すら出来なかったらしい。
その国では、そのTCGは、絶対的で、高レア偽造なんていうのは、死刑。
そんな状況を変える戦術を得る為に国を出て日本まで逃げ延びて来たとお祖父ちゃんは、あちきが小さい頃から何度となく話してくれた。
あちきが感銘を受けてるこの話だけど、周りの人達、ドーカの運営会社の役員の人達ですら信じてくれていない。
スー姉曰く、問題のチーピ王国の実在が実証できないからだそうだ。
でも、その話をするお祖父ちゃんは、絶対嘘を言っていなかった。
だからあちきは、お祖父ちゃんと一緒に低レアで勝つ戦術の研究を続けて居る。
これからもそれを続ける予定だ。
そしていつかお祖父ちゃんと一緒にそのチーピ王国にいって偉そうに貧民を苦しめている高レアの暴力で勝ちまくってる奴等に低レアの力を見せつけてやる為に。
そんな事を考えながらあちきは、お祖父ちゃんが安静にしている部屋に入ろうとしたその時、隣のお祖父ちゃんの書斎から物音がした事に気付いた。
「お祖父ちゃん、また無理して書斎で何かしてるのかも……」
もう体がボロボロだって言うのに周りに内緒でなんかする事は、まだまだある。
今日もそれだと思って、書斎に突入する。
「お祖父ちゃん! ちゃんと体を大切にしないと駄目……」
そこであちきの言葉が止まった。
書斎に居たのは、お祖父ちゃんじゃなかったからだ。
一言で言うならば怪しい恰好をした男が居た。
書斎の金庫を怪しげな道具を使って開けていて、その中身を取り出していた。
普通ならここですぐさま人を呼ぶのだろう。
でもあちきは、大きなため息を吐いて尋ねる。
「何をしてるの杏佐富隆叔父さん?」
お祖父ちゃんの血を引く、大判お父さんじゃなく、美奈子お母さんの弟であるあちきの叔父がコソ泥紛いの事をしていた。
「な、なんだカードか」
安堵の息を吐く富隆叔父さんに対してあちきは、淡々と言う。
「何を安心してるか知らないけど、事と次第によっては、警察を呼ぶよ」
「子供が馬鹿な事を言うな! これは、会社にとって必要な事なんだ!」
富隆叔父さんの主張をあちきは、即断する。
「会社っていうか、富隆叔父さんがドーカの運営会社に役員として残る為に何かしらの貢献が必要だって馬鹿な役員に唆されただけでしょ?」
「ど、どうしてそれを!?」
本気で驚いた顔をしてる富隆叔父さんにまさかビンゴしてると思わなかったあちきは、深く長いため息を吐く。
「あのさ、富隆叔父さんが無駄飯ぐらい役員で居られたのは、お祖父ちゃんが会長をやってたからで、今後の事を考えて引退したお祖父ちゃんから他も身内も居ないから大変だろうと、それなりのお金を渡されて新しい仕事を探してたんじゃないの?」
「ガキが生意気いってるんじゃない! 俺は、ちゃんと仕事をしていたんだ! それを奴等は!」
激昂する富隆叔父さんにあちきは、冷めた視線を向ける。
「仕事っていうのは、接待って言う名の豪遊? それともカードデザインの参考って名目の海外旅行三昧? 富隆叔父さんが仕事仕事と遊び回って使った費用は、全部お祖父ちゃんが個人で弁償してたよ。だいたい、ドーカに富隆叔父さんが関わったカードが一枚でもあるの?」
「あ、あるに決まってるだろうが」
富隆叔父さんのその主張に対してあちきは、突っ込む。
「なんてカード?」
「お前が知らないカードだ!」
富隆叔父さんの答えをあちきは、嘲笑う。
「ドーカの二千種類のカードであちきが知らないカードなんて無いよ」
「そんなにあるのか!」
目を見開く富隆叔父さんの反応にあちきは、顔を押さえる。
「二千種類って言うのは、嘘だよ」
「そ、そうだろう。そんな種類がある訳が……」
富隆叔父さんの言葉を遮りあちきが真実を告げる。
「二万種類だよ。そんな事も知らないでよく運営会社の役員をしてるね?」
顔を真っ赤にする富隆叔父さん。
「ドーカなんて子供の遊びなんかを真面目にやってられるかよ!」
「言って良い事と悪い事があるよ!」
睨みつけるあちきに対して富隆叔父さんは、近づいてくる。
「姉さんの子供だからって優しくしてやってればガキが大人に対して生意気な態度をとりやがって! 生意気な姪には、確り教育してやらないとな!」
「あんたなんかに教わらなきゃいけない事なんて何もないよ!」
あちきがそう怒鳴ってやると富隆叔父さんは、拳を振り上げた。
「まずは、その大人を舐め腐った目をする顔を直してやるよ!」
振り下ろされる拳に思わず目を閉じてしまう。
しかし、どれだけ経っても痛みは、襲ってこない。
「もう、危ない事は、しちゃ駄目って言ってるでしょ?」
その声に振り返るとそこには、一見するとぽわぽわした感じの優しいお姉さんって感じの表情を浮かべる今度大学生になるドー姉が居た。
富隆叔父さんというとドー姉に手首を掴まれて動けないで居た。
「痛いだろうが! 放せ!」
「カードを殴ろうとするからです」
淡々と告げるドー姉に対して富隆叔父さんが反論する。
「これは、世の中の道理って言うのを解って居ない姪への家族としての躾だ!」
「世の中の道理というのだったら、まず最初にこの家の住人じゃない杏佐さんが勝手に上がって居る事の方が問題です」
スー姉も居た。
「俺は、お前達の叔父だぞ! もうすぐ、クソジジイも死ぬ。そうしたら俺がお前達の保護者だ。そうなればこの家は、俺の物になるんだ。それをどうしようと勝手だろうが!」
「貴方が保護者になる可能性は、ありません。あたしが妹達を確りと育てます」
ドー姉の主張を嘲笑う富隆叔父さん。
「未成年が何をいってやがる!」
「認められなければ御祖母さんの弟に頼みますから問題ありませんよ」
スー姉が直ぐに反論する。
「そっちもジジイだろうが!」
汚い言葉を口にする富隆叔父さんに対してスー姉は、淡々と続ける。
「保護者と認められるには、十分な年齢かつ生活基盤が出来て居ます。逆に杏佐さん、貴方は、御祖父さんから折角もらったお金を先物取引に使って殆ど無一文、次の家賃の支払いすら怪しい筈です。そんな人間が保護者になると主張しても裁判所は、認めませんよ」
そんな事になってたのか。
「五月蠅い! うるさい! ウルサイ! ガキは、黙って大人に従ってれば良いんだよ!」
富隆叔父さんの見苦しい姿にドー姉に口にする。
「スリープ、カードを連れてこの部屋から出て居て」
「了解」
スー姉は、あちきの手を引っ張ってお祖父ちゃんの書斎をでると扉を閉める。
「お、おい待て! な、何をする……!」
富隆叔父さんは、何か言おうとしていたが、その後からは、まともな言葉になってなかった。
「人間、一定以上の痛みを感じると言葉も出ない」
スー姉は、平然とそう説明してくる。
暫くした後、扉が開いて顔を真っ白にした富隆叔父さんが出て来る。
しばらくトボトボとあるいていた富隆叔父さんだったが、ドー姉が出て来ると体を震わせる。
「次に妹達の前に顔を出したらその時は、覚悟してくださいね?」
笑顔でそう告げるドー姉から富隆叔父さんは、逃げ出していった。
「傷害で訴えられませんよね?」
スー姉の指摘にドー姉が笑顔のまま答える。
「神経にダメージがある攻撃だけだから大丈夫よ」
ドー姉は、道場のお爺ちゃんの愛弟子で、道場で二番目に強いって言われている。
知らない人は、普段の雰囲気で甘く見られがちだけど、かなり武闘派だったりするのだ。
「それよりも問題があるのよ」
さっきまで笑顔だったドー姉が表情を暗くしながらドアを再び開ける。
その先には、床一面に散らばった紙屑があった。
さっきまでは、富隆叔父さんの印象が大き過ぎて気付かなかったんだ。
スー姉が紙屑の一つを掴み眉を顰める。
「御祖父さんが作って居たチーピ王国の言葉での資料だよ」
手書きで書かれたその文字は、お祖父ちゃんそれであり、書かれているのは、ドーカでは、デザインの一部と思われているチーピ王国の言葉だった。
あちきは、ドーカの低レア戦略の中でそれを理解しているので読めた。
「これってお祖父ちゃんがずっと考えて居た低レア戦略をまとめた資料だ!」
「やっぱりそうよね」
ドー姉が暗い顔をするのも理解出来た。
読めなかった富隆叔父さんは、落書きとでも思ってたのか、バラバラに切り裂いて居たんだろう。
「お祖父ちゃんが知ったら悲しむよ」
あちきの呟きにスー姉が言う。
「僕達の手で書き直せば良いよ」
そういいながらバラバラになったそれをあちき達は、拾い集める。
「本当なのか?」
ドー姉が一連の騒動を寝室で寝ていたお祖父ちゃんに報告した。
「ごめんなさい。お祖父ちゃんの大事な物を……」
俯くあちきの頭をお祖父ちゃんは、撫でてくれる。
「カードが謝る必要は、ない。美奈子さんの弟だと甘い顔を見せていた私が悪かったのだ」
「でも……」
あちきが更に何か言おうとした時、後ろから声がした。
「確かにお孫さんに責任は、無いけど。これって契約不履行よね?」
「誰!」
あちきが振り返るとドー姉が声のした方向に拳を突き出していた。
その拳を受け止めたのは、あちきと同じくらいの背格好の子だった。
「嘘! 姉さんの拳を受け止めた!」
本当に珍くスー姉が驚いていた。
そんな中、お祖父ちゃんが体を起こす。
「残りの寿命の全てを使ってでも書き直します。それがお約束ですから」
「お祖父ちゃん駄目! そんな体で無理をしたら死んじゃう!」
ヨロヨロしているお祖父ちゃんにあちきは、抱き着いて止める。
「間に合わない。貴方の寿命は、六十迄、それまでに低レアで高レアに勝つ戦略をまとめ上げた資料を作り、ドーカに送る。それが貴方をここに連れて来た時の契約だよ」
淡々とそう告げる突然現れた少女にスー姉が視線を向ける。
「貴女の外見をみると信じられませんが、貴女が僕等の御祖父さんを日本への国外逃亡を手助けした人で、その見返りとして御祖父さんが作った資料を求められている。それで合ってますか?」
「概ねその認識で間違いないね」
あっさり認める少女にドー姉が苦笑する。
「あたしより年下にしか見えない貴女が? 信じろと?」
「信じて貰う必要も無い。あちきが問題にしているのは、デッキ、貴方があちきとの契約を履行できないって事なんだよ」
少女の言葉に苦々しい表情を浮かべるお祖父ちゃん。
「バラバラになっていますが資料は、残って居ます。僕達がそれを復元しますからそれで履行する訳には、いかないのですか?」
スー姉の提案に対して少女が肩を竦める。
「残念だけど、答えは、さっきと同じ。期限は、デッキの寿命まで。それ以上は、待てない。待てない事情があるんだよ」
「意味が解らない! お祖父ちゃんが死ぬとしても貴女がその資料を持ってチーピ王国に戻るのには、何の関係もないじゃない!」
あちきの主張に対して少女が指をふる。
「残念だけど根本的な勘違いをしてるよ。あちきがその資料をもってチーピ王国に行く訳じゃない。その上、資料を送る大前提がデッキが生きている間じゃないと駄目。これは、絶対条件だよ」
「もしも契約不履行になった場合、貴女に何か問題が発生するの?」
スー姉の問い掛けに対して少女が苦笑する。
「元々、デッキがどうしてもというので行った契約だからね。それが達成できなかったからってあちきは、何の問題は、ない。問題があるとしたら……」
少女がお祖父ちゃんの視線を向ける。
「私がここまで積み上げて来た物が無駄になったと言う事だ」
お祖父ちゃんの言葉に少女が少しばつが悪そうにして頭を掻きながら告げる。
「正直、デッキは、よくやったと思うよ。見知らぬ世界に送り込まれて、それでも頑張ってそこで自分の居場所を作り、戦術研究を続けてた。でもはっきり言っておく。デッキが作った資料を送った所であっちの連中が変わるとは、とうてい思えない。それが現実だよ」
「それでも少しでも可能性があれば……」
お祖父ちゃんの無念さが伝わってくる。
だからあちきは、言う。
「あちきがチーピ王国にいく! そして、低レアでも高レアに勝てる事を証明する!」
「馬鹿な事を言うんじゃない! これは、私だけの問題だ!」
声を荒げるお祖父ちゃんにあちきは、首を横に振る。
「あちきは、お祖父ちゃんの目標を信じて自分でも頑張って来た。だからお祖父ちゃんが直接出来ないんだったらあちきがそれを証明したい。今日、ランキング一位に返り咲いた様に!」
「勝ったのか?」
お祖父ちゃんが確認する様に聞いてくるのであちきは、強く頷く。
「うん。あちきは、勝ってランキング一位になったよ」
「カード、お前は、凄い子だ。低レアで高レアに勝つのは、至難の業だ。それでも初見ならば可能性がある。それだから一度は、ランキング一位になれた。だが当然、相手もこちらの戦略に対応してくる。それを乗り越え再びランキング一位に返り咲いた。本当に凄い子だ」
優しく頭を撫でてくれたお祖父ちゃんは、少女の方を向く。
「百神様、孫達に真実を語って宜しいでしょうか?」
「孫の健気さに免じて特別だよ」
少女がそう答えるとお祖父ちゃんは、真実を語ってくれた。
お祖父ちゃんの住んでいたチーピ王国とは、こことは、別の世界、ドーカと呼ばれる世界の国である事。
そのドーカでは、まるで漫画やアニメみたいにTCGが全てを決め、高レアを持つ者だけが権力を持つ世界だそうだ。
その世界の住人は、全員が≪神恵≫を持って生まれて来て、カードを手に入れるには、世界中いたる所に居る符獣を倒し≪獣符≫を手に入れるか、神の課題、≪神課≫を達成し≪神符≫を手に入れるしかない。
≪獣符≫は、取引される事もあるが、≪神符≫に関しては、お互いの≪神符≫を賭けた≪闘符≫で勝ち取る事でしかやり取りが出来ない。
そんな世界では、八百長勝負で親から子に高レアカードを引き継いでいける一部の人間だけど権力を持ち、そうで無ければ摂取されるだけになってしまう。
そんな状況の中、低レアしか持たぬ家に祖父ちゃんが生まれた。
当然、お祖父ちゃんは、低レアの≪神符≫しか持って居なかった。
それでも、誕生と共に達成する≪誕生≫で、≪風切る剣≫、一二才にまで生きる事で達成する≪洗礼≫で≪炎の矢≫という戦闘向きの≪神符≫を手に入れられたので、≪符獣≫を狩る≪符狩人≫になって≪符獣≫を狩って世界を巡る事でドーカの世界の歪さに気付いたらしい。
≪神恵≫に収められた≪神符≫のレア度が全てであり、高レアの≪神符≫の後継者ならば洗礼前の子供ですら大勢の大人を顎で使うかと思えば、余り有益でない低レアの≪神符≫を八百長≪符闘≫によってはした金で売らなければ生きていく事さえ難しい人達が大勢いたらしい。
だからお祖父ちゃんは、低レアでも高レアに勝てると証明する為に≪符闘≫を行う≪符闘者≫になろうと考えて居た。
でも十八歳になるまで生きた事で達成した≪成人≫で手に入れた≪一時の双子≫も≪符闘≫向きの≪神符≫で無い事に悔しさを覚え、神殿で神に訴えた。
『私よりも≪神符≫に恵まれていない人間は、幾らでもいます。だから≪神符≫が恵まれなくても良いです。ですが、せめて、≪符闘≫の模擬戦を行える場所を下さい!』
≪符闘≫が神聖視された向うの世界では、それを真似する事は、禁断とされ、誰もそれに付き合ってくれない処かその痕跡すらみせただけで危険分子として処刑されかねなかったらしかった事からお祖父ちゃんは、真摯にそう願った。
その時、正に奇跡が起きた。
今、この場に居る少女、ドーカの世界で信じられる六柱の神の一柱、≪百神≫が降臨した。
そしてさっきから言っていた契約を結び、お祖父ちゃんがこちらの世界にやってきた。
「契約したから資料を向うに送るのは、まだ許容範囲だけど。その契約範囲を犯し、本人が居なくなってから資料を送るのは、間違いなく神としての公平性に欠ける行為になるんだよ」
≪百神≫の言葉にあちきは、文句を言う。
「お祖父ちゃんが凄く凄く頑張ったんだから少しくらい良いじゃない!」
「無理を言わない。神様だって、ううん、神様だからこそ公平性を欠いた事が出来ないのよ」
ドー姉がそう優しく言い、スー姉が続ける。
「神が安易に譲歩し続けたら、世界は、滅茶苦茶になってる」
言われている意味は、解ってる。
それでも納得できない。
「この命が尽きる直前まで時間をください。それまでに少しでも多くの資料を作ります」
お祖父ちゃんが切なる祈りを捧げるが≪百神≫の反応は、悪い。
「それは、契約範囲内だから構わない。でも、無理をすればする程に時間は、短くなる。とても使える資料を作るだけの時間は、無いよ」
「僕が手伝います。それならどうでしょうか?」
スー姉の提案にも≪百神≫は、肩を竦める。
「五十歩百歩だね。ついでに言わせて貰えば中途半端な知識程危険な物は、ないよ」
苦々しい表情を浮かべるお祖父ちゃんを見てあちきは、改めて決意を口にする。
「やっぱりあちきがその世界に行って。お祖父ちゃんのやった事が無駄じゃなかった事を証明する!」
「カード、何を言っているのか解って居るの!」
ドー姉が怖い顔をして怒鳴って居た。
いつも戦っている時でさえほんわかした雰囲気を漂わせているドー姉がこんな顔を見るのは、始めてだった。
それでもあちきは、引けなかった。
「今の生活の全てを捨てる事だって解ってる! それでもお祖父ちゃんが思いを叶えたいの!」
「それは、二度と僕達と会えなくなるって事だよ!」
スー姉の指摘にあちきは、俯いてしまう。
だけど、あちきは、応える。
「あちきは、お祖父ちゃんと低レア戦略を考えるのが大好きだった。模擬戦でお祖父ちゃんが使う高レアデッキ相手に徹底的にやられて二度とやるもんかって思った時もあったけど、それでも逆の立場でお祖父ちゃんが勝った時は、すごーーーく感動した。お祖父ちゃんは、本当に凄いんだって思えた。そんなお祖父ちゃんが積み上げて来た物が無駄になるなんてあちきは、絶対に嫌なの!」
「カード、その気持ちだけで十分だ。願いが叶わないことは、残念だが、私は、孫を犠牲にしてまで元居た世界を変えたいと思えない。それをしたらきっと後悔する。だからもう良いんだ」
そう言ったお祖父ちゃんの顔は、凄く辛そうだった。
あちきは、自分の無力さに涙を流すしか出来ないでいると≪百神≫は、あちきの前に来て尋ねる。
「あちきと賭けをしない?」
「賭け?」
聞き返すあちきに≪百神≫が頷く。
「そう賭け。対価は、半分先渡しであっちの世界に異世界転移させてあげる。賭けの内容は、一つ。あちらの世界に低レアでも高レアに勝てるって考えを定着させる事。それが出来た時、こっちの世界に帰る機会をあげる」
「帰って来れるチャンスがあるんだったらあちきは、その可能性に賭ける!」
あちきの答えにお祖父ちゃんが慌てる。
「駄目だ! それは、カードが考えるよりも何倍も大変な事だ! 私の為にお前が犠牲になる必要なんてない!」
そんなお祖父ちゃんを見てあちきが自信たっぷりに告げる。
「大丈夫だよ。あちきは、絶対に帰って来れる。だってお祖父ちゃんと一緒に考えた戦略は、絶対通じるから。それにあちきは、お祖父ちゃんの犠牲になるんじゃない。お祖父ちゃんと一緒に考え続けて来たあちきの夢でもある。だからあちきは、夢を叶えに行く。そして夢を叶えて絶対に帰ってくるんだから!」
「世の中に絶対なんてない」
そうスー姉が睨んでくる中、さっきまで怖い顔をしていたドー姉が≪百神≫の前に行き尋ねる。
「さっきの賭けですが、あたしも一緒にさせて貰っても良いですか?」
「デッキさんの血を引いている人間限定だったら制限なしで良いよ。まあ、ここに居る三人以外には、いないだろうけどね」
≪百神≫の答えにドー姉がお祖父ちゃんを見る。
「隠し子とかいませんよね?」
「老若男女節操無しにそういう事をする姉さんと一緒にしない」
そう突っ込みながらスー姉も≪百神≫の前にいく。
「僕もその賭けに乗らせて貰います」
「お前達……」
戸惑うお祖父ちゃんに対してドー姉が頭を下げる。
「あたし達姉妹は、お祖父ちゃんには、返しきれない恩があります。ですから最後の最後になりますが恩返しさせて下さい。その機会があるのにそれを逃せばあたし達姉妹は、一生後悔すると思いますからどうか認めて下さい」
「無理に苦労する必要は、ないんだぞ?」
お祖父ちゃんの言葉にスー姉が告げる。
「姉妹三人であればどこでも平気」
「解った。死んでいく私には、お前達を止める事すら出来ないな」
お祖父ちゃんが頷いてくれた。
するとスー姉が言う。
「そうと決まれば詳細な条件の設定をしましょうか」
「逃げ道が無くなるだけかもよ?」
少し挑発気味の≪百神≫の言葉にスー姉がはっきりと言う。
「曖昧な表現にして後で問題になるよりましです」
その後、スー姉を中心として≪百神≫と賭けの詳細の打ち合わせを行う事になるのであった。
慌ただしく数日が過ぎた。
表向きは、あちき達姉妹は、お祖父ちゃんの故郷に遺産をもって行き、その遺産でお祖父ちゃんの代わりに復興事業に携わるって事にした。
無論色々と問題があったし、道場のお爺ちゃんなんかは、結構渋ったが、最後には、お祖父ちゃんが故郷の為に何かしようとしていた事を傍で見て居て知って居たから了承してくれた。
ただし、必ず無事に帰ってくるのだと約束させられた。
「お祖父ちゃん、それじゃあ行ってくるよ」
静かに眠る様にしているお祖父ちゃん。
≪百神≫の診断では、今夜が限界らしい。
そしてお祖父ちゃんが亡くなってしまうとお祖父ちゃんが契約不履行になってしまうのであちき達は、もう出ないといけない。
後の事は、道場のお爺ちゃんと長年仕えてた人達がやってくれる。
お祖父ちゃんの家の裏庭に行くと≪百神≫がジト目をしていた。
「あちきは、もっていけるのは、運べる物に限るって言っておいたと思うけど」
「ですから動かせますよ」
ドー姉がお金に物を言わせて買ったキャンピングカーを引っ張って見せる。
重い車でもタイヤのロックさえ外せば力ある人なら引っ張れる、丸太を使って船を動かすのと同じ原理らしい。
頭をポリポリ掻いてから≪百神≫が言う。
「あくまで低レアで勝つ方法を伝えに行くのであって、その他の科学技術等を拡げるのは、NG。だからそれらの物を売ったりしたら即没収だからね」
「うん。解って居る」
即答するスー姉を半眼で見る≪百神≫。
「本当に解ってる? まあ、良いや。行く前にカード、デッキから預かってる≪神恵≫を出しなさい」
あちきは、まだ意識があるうちに受け取ったお祖父ちゃんの≪神恵≫を取り出す。
≪百神≫が指を鳴らすと≪神恵≫が三つに増え、姉妹それぞれの手に現れる。
「向うの人間の確定のゲットの≪誕生≫≪洗礼≫≪成人≫が無い代わりに三つの≪神恵≫は、連動させてあげた。まあ、≪符闘≫をメインにやるのは、カードだけだからあまり意味ない恩恵だろうけどね」
そうなるだろう。
ただドーカをやるだけならドー姉やスー姉にも出来るけど、低レアで高レアに勝つという戦術は、あちきだけが研究してたのだから。
「それと異世界転生のお約束、チートも用意してあるよ。好きな≪極符≫をそれぞれ一枚ずつ選んで良いよ」
≪百神≫がそういうとあちき達の前に属性一色という今まで見た事の無い≪極符≫が並んでいた。
白、光属性は、≪底無しの器≫で効果は、デッキ制限を無くす。
黒、闇属性は、≪絶対なる闇≫で効果は、相手からのサーチカードの無効化。
桃、命属性は、≪必然の出逢い≫で効果は、出会う必要がある人に会える。
赤、火属性は、≪終焉の炎≫で効果は、特殊勝利条件カード、それも使用するのみって完全なチート。
青、水属性は、≪完治の薬≫で効果は、ライフを10足すって、ゲームをぶち壊している。
紫、風属性は、≪全てを見通す眼≫で効果は、相手のデッキが全て解るって、相手のみオープンカードしてる様な物。
黄、土属性は、≪完璧なる壁≫で効果は、主場に出した時点で完璧にライフを護ると言う事は、特殊勝利条件以外での負けが無くなるって事。
緑、木属性は、≪生命の木≫で効果は、倒された≪符獣≫の全部を主場に出すって、終盤に使われたら出鱈目な状態になる。
あちきは、迷わず≪底無しの器≫を選ぶ。
「本当にそれで良いの? 確かに向うの世界では、≪神恵≫には、年齢+1のカードしか入れられないけど、それでだってカードを≪神符≫だったら再使用可能な上、カードが多過ぎれば逆に出て来てほしいのがでなくなるよ」
確認してくる≪百神≫に対してあちきは、即答する。
「これ以外無いよ。カードの引きが悪くて負けたなんて単なる言い訳。どんな手札状態でも勝ちに導く、それが低レア戦術。戦略の幅を広げる為にも所持数制限は、無い方が良いんだよ」
続いてスー姉が≪絶対なる闇≫を選ぶ。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからずって言葉がある。逆を言えば自分の情報を隠し通せれば相手の勝率が下げられる」
「それだったら≪全てを見通す眼≫で相手の詳細な情報を得るのでも良かったんじゃないの?」
≪百神≫の指摘にスー姉が肩を竦める。
「相手のデッキを見ただけじゃとても十分に彼を知ったと言えない。半分相手を知るより、相手にとっての彼である己を完全に隠せる方が情報戦でのプラマイは、上」
サイドにドー姉が≪必然の出逢い≫を選ぶ。
「直接≪符闘≫で使うのは、選ばないで良いの?」
≪百神≫の問い掛けにあちきが頷く。
「それを使ってたら低レアで勝つって言う目的が達成できないから」
それを聞いて≪百神≫は、微笑む。
「まあ、合格としましょうか」
もしかしてと思ったけどやっぱり試していた。
そして≪百神≫は、両手を広げた。
「もう時間がないから最終確認ね。今更だけど止めても良いけどどうする?」
あちきは、最後にお祖父ちゃんが居る部屋を見てから頷く。
スー姉とドー姉があちきの両肩にそれぞれ手を置いた所で≪百神≫が拡げた両手を閉じた。
『パン』という手を叩く音が聞こえたと思った瞬間、そこは、全く違う場所だった。
一面何もない草原にあちき達姉妹は、立っていた。
「ここがお祖父ちゃんの生まれ育ったドーカの世界か」
こうしてあちき達の異世界転移生活が始まるのであった。
【ドーカの世界の監視者/八色甲亀】
「異界からの転移者?」
拙者は、そう口にしながら首を傾げる。
拙者の名前は、≪八色甲亀≫、偉大なる≪百神≫の僕たる甲羅が八つの色を持つ亀である。
拙者が監視を任されているドーカという世界は、はっきり言えば廃棄目前の世界である。
元々は、全ての者に戦う力を与え、切磋琢磨して、力を高めさせていく予定だったらしい。
態々、お互いに傷つけあわなくても勝負できる≪符闘≫まで行える様にしてあった。
だが、神々の思惑と異なりこの世界の者達は、与えられた力だけに満足し、それを磨こうとしなかった。
神々も色々とテコ入れをしたが結果としてこれ以上のテコ入れは、無駄と判断された。
既に他の世界からの干渉は、完全に遮断されている筈でここで使われた力と技術が流出されることは、無い筈だった。
それなのに転移者が来た。
本来、神の力で遮断されたそれを突破できる筈が無いので不思議に思って居るとあの御方の声がした。
「ほら前に話していたでしょ。あちきのテコ入れ。あれが少し変更になって孫三人がやってきたんだよ」
「≪百神≫のテコ入れというと低レアで勝つ方法を模索したいといって異世界に転移された男の件でございましょうか?」
拙者がお尋ねすると声の主、拙者が仕えし神≪百神≫がお応えくださる。
「そうそれ。正直、駄目元。デッキの諦めない強い感情が勿体ないと思って他の世界に送った奴。実際、そっちの世界でそれなりに成果を出していた。この世界のシステムを自分達の仮想世界で再現し、切磋琢磨させる事に成功してたからね。次の同様の世界構築の参考になる。そんで、その対価として孫たちの無駄な足掻きを許したって所かな?」
最後の疑問形なのは、≪百神≫の深遠なお考え故の事だろう。
「それでは、≪符超≫は、どういたしましょうか?」
拙者がそう確認すると≪百神≫は、肩を竦める。
「そのまま放置。そうそう、折角作ったからこれも追加で渡して」
そういって五枚の≪極符≫が下賜された。
「詰り、この世界は、このまま≪符超≫に滅ぼさせると言う事で宜しいのでしょうか?」
拙者の言葉に≪百神≫は、苦笑する。
「≪符超≫をどうにか出来ない様じゃ、とてもじゃないけどこの世界を存続なんて認められないからね。禁則事項に対する監視は、お願いするけど、助力は、しなくてもいいから。よろしくお願いね」
そう言い残して≪百神≫は、この世界での仮初の体を消滅させた。
あの御方程になるとその存在の残滓すら世界に大きな影響を与えられる為仕方なき事だ。
「どんな形であろうともこの世界に最後の機会が与えられたと言う事だな。さてはて、この世界の者達は、その慈悲の水を受けるだけの器があるとは、思えぬがデッキの孫達が真に慈悲の水となろうとも、少なければ足らず、多ければ溢れ出す。神々すら見捨てこの世界の人々の穴だらけの器に満たされるのは、≪符超≫の破滅の毒薬か、それとも……」
拙者は、そう口にしながらやってきた問題の孫達の監視を始めるのであった。
転移するまでのいきさつって奴を一通りって感じですかね。
またこの話しか使わない設定の山盛りでした。
因みに武士道=ブシロード、富隆=タカラトミー、杏佐=アンサー、大判=バンダイ、美奈子=コナミって感じでTCG関係会社の名前からとってます。
続くか解らないので最後の会話の補足。
この世界は、既に神に期待されていません。
それ故に終末が用意されていて、その道具がこの世界の誰もが勝てないレア度11のカードを持つイレブンって存在になります。
彼が彼の配下と共にこの練磨を止めた世界を塗りつぶした時、カードの力の暴走と共に世界が亡びるって設定です。
所謂この物語のラスボスです。
まあ、序盤では、無関係。
中盤でも噂がでる程度。
終盤でようやく彼の配下との直接対決があるって感じです。
次は、スー姉視点で、異世界転移直後を書く予定です。