Magical girl 倉敷 香奈 Part 4
ようやくバトル描写です。
やはり難しいですね。
「随分とご機嫌ですね」
「あら……ムクロ、いつの間にいたの?」
「ムクロはどこにでもいますよ」
「そう、そろそろお仕事の時間だから邪魔はしないでね」
「もちろんですとも」
ムクロはそのまま姿を消した。
私は鼻歌を歌いながら、拠点となっている倉庫へと近づいて行く。今回のターゲットは麻薬の売買の元締めとなっているヤクザの一派らしい。常人ならば一人で乗り込もうなどと常軌を逸脱したことはしないだろう。しかし、私は魔法少女だ。魔法少女である私が、大人であろうとも人殺しに手慣れていようとも、敵わないわけがない。
得物である巨大なハサミを握りしめる。
「こんばんは、魔法です!」
元気よく声を出す。だが、何ら返事が返ってくる様子はない。いつもならば、怒声の応酬が来るはずであるのに……
不信に思いながら中を見渡す。暗闇に目が慣れてきたことで、ようやく私は目の前の惨状に気がつくことが出来た。
「なにこれ……?」
部屋の中は真っ赤に染まっていた。
誰のものともわからない手足が、まるで気味の悪いオブジェのように飾られている。数多の首は豪華な机の上に並べられ、一人一人の表情が苦痛に歪んでいるのが今見てもハッキリとわかる。同じように部屋の天井は、大腸や小腸が蔦のように張り巡らされ、鮮血が地面へと滴り落ちている。まるでお化け屋敷のような装飾が至るところにある……だが、これは決して作り物ではなく、今は地面に落ちている元人間のパーツであることは明々白々の事実だった。
「……!」
殺気のような何かが瞬間に感じられる。私はとっさに横に飛んだ。数秒後、元いた場所を鋭利な何かが横を薙いだ。ヒュンと空気が切れる音がする。
「誰……!」
「誰……誰、ね……うーん、初めまして、死神です」
髑髏模様の仮面を被り、全身を黒いマントで覆っている何者かが現れる。両手で握っている鎌は、先ほど私に振り上げられたもので間違いないはずだ。
「そう……で、アナタがやったの?」
「そうだよ? そうじゃなきゃ、こんな気味の悪いところにいるわけがない。まあ、でも? 君のように魔法少女の仕事として来るなら話は違うのかもしれないけどね」
「へぇ……魔法少女のことを知ってるんだ」
「もちろん知っているとも」
私の顔が引きつる。
仮面で表情こそ見えないが、声色でわかる。目の前にいる何者かは、私を小馬鹿にしている。私よりも先に今回のターゲットを始末したことを自慢でもしたいのだろうか?
「だったら、私の仕事はなくなってしまったし、帰ろうかしら」
「ダメだよ」
「どうして?」
「だって……僕の仕事は残っているからね」
「ハッ……!」
今まで気がつかなかったが、私は目の前にいる自称死神が男であることに気がついた。
そして死神の狙いが私であることを。
再び死神の攻撃を寸で躱し、間合いを取る。
「男、なのね。どうして死神なの?」
「男だから、かな。僕は男だ。どうせ殺すから話しちゃってもいいのだけれども、僕もムクロと同じように契約を結んで魔法少女としての力を手に入れている。だけれども、魔法少女は女の子しかなれないからね。魔法少年というのも語呂が悪いし、とりあえずは死神で落ち着いているわけ」
「へぇ……男でも魔法少女になれるんだ」
「……男でも……そうやって人は見た目で差別をする。女性はまるで自分がか弱いと思っているようだけれども、実のところ男を無差別に迫害する時の団結力はものすごい。僕は、そんな女の人が大嫌いだよ!」
死神の鎌をハサミで受け止める。
曲がりなりにも私も魔法少女としての加護を受けている。性別による力の差はないようだった。だが、それは同時に拮抗していることを表しており、つばぜり合いにおいては、お互いに近距離武器をつかっているため、進展する様子を見せないままでいる。
「見た目は男だけどね、心は女の子なんだ……っていったら君は馬鹿にするかい?」
「世の中には性別の問題で苦しんでいる人がいることは知っているわ。今の世の中、そんなことを馬鹿にするのはよほどの高慢ちきじゃない?」
「君は随分と優しいようだ。だけれども、君を殺すのは仕事だからね……!」
「くっ……!」
死神の突然の足払いに対応できずに私は尻餅をつく。
「刻んで!」
私のかけ声により、空中より小さなハサミが刃を開いた状態で召還される。ハサミはそのまま死神へと向かっていった。
死神は鎌で全てを払いのける。私にとって今のは牽制であり、攻撃ではない。僅かな隙を見て立ち上がり、出口へと向かう。
「ダメじゃないか! 逃げちゃぁ! 突槍ッ!」
死神に背を向けて走っている私の背中に衝撃が走る。
「ぐぁぁぁぁ!」
情けない声を出しながら、私は倉庫の壁をぶち破り、外へと放り出される。
背中が焼けるように痛い。体中が悲鳴を上げている。起ち上げろうと踏ん張るも、力が入らず、私は這うようにして逃げ出した。
「だから……逃げちゃぁ……ダメだってぇぇぇ!」
声と共に私の右太ももに鎌の刃先が刺さる。
今までに感じたことのない激痛が全身を駆け巡った。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!」
「君を殺して……僕のお仕事は終了なんだよぉ……ねぇ……殺させてよぉ……」
「誰が……お前なんかにっ!」
口では強がる。
現実は絶望的だった。
戦える状態ではないことを誰よりも私が一番理解している。
「何か……」
反撃の機を作るためにも、私は首を動かす。
その時だった、あり得ないものが目に飛び込んできたのは……
「どうして……どうして恵美がここにいるの……!」
設定集
死神 ?? 男性(?)
望み ???
能力 死神としての力
・突槍
ランク A2




