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「こんばんは、魔法少女です!」  作者: ROGOSS
第一部 Magical girl Birth
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Magical girl 雲井 恵美 part5

 例えば、目の前で親友が窮地に陥っていたら人はどうするのだろうか?

 例えば、目の前に親友を救うことの出来る何かしらがあったのならば人はどうするのだろうか?

 例えば、目の前に死が迫っている時、人はどうするのだろうか?

 私の答えは単純明快だった。

 友達を守りたい。

 それが私の答えだった。

 目の前に広がっている惨状に私は言葉を失っていた。香奈の目の前には髑髏模様の仮面をつけた何者かが彼女の太ももに鎌の切っ先を刺していた。

香奈と目が合う。彼女は一瞬目を丸くした。


「どうして……どうして恵美がここにいるの……!」


 その言葉の意味はわからなかった。

 無様な自分を見ていることに対する侮蔑なのか? それとも今すぐにでも助けて欲しいという懇願なのか?


「雲井さん、どうするんですか? このままだと倉敷さんは死んじゃいますよ?」


「そ、そうだけど……私はどうすればいいの……」


「どうみても人の道を外れた者同士の争いです。こうなってしまっては、人の力ではないものに頼らなくては、救うことはできません」


「魔法少女になれば……助けられるの……?」


「何を迷われているのか、ムクロにはてんで検討がつきませんね。倉敷さんが死んでしまったら、もう二度と、謝ることもできませんよ」


 私はいつの間にか後ろに立っていたムクロを見た。

 ムクロはいつもの調子の笑顔を浮かべている。その笑顔の奥には冷たい何かがあることは、初めて会ったときから知っている。

 香奈の叫び声がした。痛い、痛い、やめて! と懇願している。血が飛び散る音、肉が引き裂かれる音が耳の奥へと入り込んできた。


「わかった……わかったよ! 私、魔法少女になるから! 香奈を助けさせて!」


「仰せのままに」


 私の体が光輝く。

 日曜の朝にやっている子供向け番組の変身シーンを連想させた。数秒後、私はピンク色のフリフリのついた服を着こなし、右手には小さな盾がついていた。


「シールドですか……! 倉敷さんを守りたいと願う、雲井さんにはぴったりだ!」


「私が……恵美を守るっ!」


 瞬間、私は仮面にタックルをしていた。

 運動の苦手な私が人生で一番早く走った瞬間だった。

 面食らったように仮面は後ずさる。


「僕のお仕事を邪魔するの……? それはよくないな……」


 仮面は鎌を肩へと担いだ。

 

「死神みたい……」


「ふふ……僕は死神だもの。そう思ってもらわなくちゃ!」


 鎌が振り下ろされる。

 私は盾を使って、切っ先が自分の体を傷つけるのを防いだ。

 何度も続く攻防。不思議と疲れは感じなかった。


「どうやら単調な攻撃では仕留められなさそうだな……じゃあ、これは…?」


 鎌が槍に変わる。

 仮面越しにでも、死神が不敵な笑みを浮かべていることがよくわかった。


突槍(スカハサ)


 音速の壁を越えた槍が迫り来る。

 この攻撃を今までのように受けるだけでは防げないことを瞬時に感じた。

 それならば、私にだってあるはずの力を使えば……相殺できるかもしれない……!


神聖なる盾(アイギス)!」


 浮かんだ単語を口にする。

 右手についていた盾が消え、私の目の前には羊毛で包まれた盾が現れた。

 槍と盾がぶつかる。

 衝撃が走り、辺りの建物を崩壊させた。火花がちり、ビリビリと何かが拮抗していることが肌で感じられる。私は目の前に広がる拮抗を見つめた。目を離せば、集中力を切らせば、一瞬にして槍が私の腹部を貫くような気がしていた。


「うーん……階級は僕の方が上のはずなのに……この力……僕は噛ませ犬にはなりたくありませんよ」


 死神は小さく呟くと、ポケットから黒いボール状のものを取り出した。


「では、また会いましょう。お仕事を完遂できなかったことは不甲斐ないですが、生きていれば何度だって殺せることが出来るはずですからね……!」


 ボール状のものがバウンドをしながら、私の足下に転がってくる。

 キンと耳をつんざく音が鳴り響き、目の前が閃光によって白に支配された。

 数秒後、走り去る足音が聞こえたのと同時に、視界が回復する。死神の姿は、どこにもなかった。

 私は香奈へと駆け寄った。見るからに重傷であるが、香奈はまだ自力で動くことができるようだ。これが魔法少女として、常人とは違う力を得ている者の特権だろうか?


「大丈夫、香奈っ!」


「どうして来たの?」


「香奈が……香奈がピンチだったから……!」


「……魔法少女になったの? あれだけいやがっていたのに」


「いやだよ……今でもいやだよ。だけど……香奈がいなくなっちゃうほうが、もっといやだから!」


 香奈は柔らかな笑みを見せた。

 その笑顔に惹かれて、私は香奈を一緒にいたいことを願い続けた。その笑みが私がこの世界に居ることを許してくれているように感じさせてくれていた。


「ありがとう……だけどさ、恵美はもう、普通にはならないんだね。自分で普通を捨てちゃったんだね」


「え……?」


「助けてありがとう。本当に感謝はしているよ。だけどさ、それ以上にさ……普通ジャナイ奴ハ殺サナイト気ガ済マナイカラ!」


 私の目の前に刃が開かれたハサミが出現する。

 

「刻ンデ」


 香奈の冷酷な一言が耳に飛び込んできた。

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