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piece 5

 二月七日。俺たちはイベントの折り返し地点に立っていた。さて今日もライブだ、と朝まで意気込んでいたのだが、エゴサーチで俺がSと釣り合わないという記事を見つけてしまい、柄でもなく少し落ち込んでいる。顔には出さないようにしているが、これでも俺の心はいわゆるお豆腐メンタルというやつで、一度考えると心配でたまらなくなってしまう。だから、ライブ前にこんなことを聞いてしまった。

「なあS、本当に俺が相手で良かったのか?」

「今さら? もうイベント中盤だし。……何かあったの?」

「いや、Sが前に沢山誘いを受けたって聞いたから、俺なんかでユニットの相手が務まるのかなって、ちょっと不安になってさ」

「ちゃんと務まってる。問題があってもなんとかなるわよ」

「でもなあ」

 Sは数歩前に歩き、俺の言葉を遮って言った。

「私が選んだんだから、私にふさわしいのは当然でしょ。もっと自信持ちなさい」

 その時のSの背中は、本当にかっこよかった。堂々としていて、勇気があって、自信に満ち溢れていた。そして何より、じっと俺を待ってくれた。

「N、何ぼーっとしてるの。早くしなさいよ。次、私たちの番なんだから」

「……ああ、ありがとな」

 照れくさかったが、こんな俺をここまで引っ張ってきてくれた彼女にどうしてもこの言葉を伝えておきたかった。Sは少し驚いた顔をしてから、どういたしましてと満足げに笑ってくれた。そして、小さい声だったけれど、Sは確かにこう言った。

「どういたしまして」

 慣れない行動が恥ずかしかったのか、マイクを確認するふりをして――――気がついた。

「って、マイク! また!」

「オンになってたの? あちゃー」

「あちゃー、じゃないでしょ? せっかく励ましてあげたのに」

「まあ、みんなにSの可愛い面を見てもらえたって思ったらさ。別にいいじゃんか?」

「開き直りが早いわよ。毎度毎度恥ずかしい思いをするのは私なん……」

「さあて、本番だ」

「もう、Nったら-!!」

 後日、お客さんにこのことをネタにされたのは、言うまでもない。

ありがとうございました(^^)

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