第3話
のーんびり淡々と更新していきますよん
どんな話をされるのかと思いきや、彼女の相談というよりはさっきの時間の延長のような。つまりは質問だったのでした。
「初恋の相手は先生だったんですよね? 先生は生徒に告白されたことありますか?」
教師生活は今年でちょうど9年目かな。1年は産休と育休を挟んだから、その期間を抜いて。
でも、最初はあまりに手探りで仕事でいっぱいいっぱいだった私。生徒一人ひとりを気にかけるなんてこと出来なくて。少しずつ余裕が出来ていくうちに段々と交流は増えたけれど、そういう意味でなくても好かれてはいなかったと思うの。
「無いわよ? 先生なんてもうおばさんだもの。若い先生なんて、他にたくさんいらっしゃるでしょう」
トロくてドジしてばかりで、授業も寝てる子や内職してる子もよくいて。そういう子ばかりじゃないけど、まあとにかく、授業以外に生徒と関わる回数なんてたかが知れていたというわけで。
「そうやって油断しない方がいいですよ。多分この学校じゃ誰もそんなこと思ってないですから」
「え?」
「ほら、女子高ですから。わたしはそういうことに関わりが無かったけど」
女子高だから余計に先生と生徒の恋愛なんて関係がないものじゃないかしら。
ちゅっ
「??」
頬に触れた柔らかい感触。
えっと……もしかして、キスされた?
「このくらいで顔を真っ赤にしてたら、やっていけませんよ。では私はこれで。さようなら」
ぽかんと口を開けたまま、銀城さんの背中を見送る。なんか私、すごいことされたんじゃ……?
「……お仕事、片付けよ〜」
早くお昼ご飯食べたいし。
◇ ◇ ◇
さて、華道部を覗いてから帰りますか。
「あら?」
廊下に出ると、キョロキョロ周りを見ながら歩いているツインテールの女の子が。中等部の子ね。
「どうかしたの?」
「あのね、しずく、おねえちゃん探してたの。2年1組って言ってたんだけどね」
私のクラスじゃない。じゃあもう帰っちゃったのかな。
「お姉ちゃんのお名前は何ていうの?」
「渡海笑里っていうの」
ああ、渡海さん。
「華道部よね。きっと部室にいるわ。先生も今から向かうところだったの。一緒に行きましょうか」
「うん! てーつなごー!」
なんだか、こーくんと歩いてる時みたいだわ。でもそっか、まだ小学校卒業したばかりなのよね。こーくんも中学生になってもこんな風に手を繋いでくれたら嬉しいけど、流石にそれはなくなっちゃうかな。
「お姉ちゃん!」
結局渡海さんはまだ部室には着いていなくて、旧校舎に入る前に見つけることができた。
「雫! なんで?」
「せんせーありがとー! またね!」
頬にチュッとキスされて、パタパタと駆けて行く雫ちゃんを呆然と見ている。
「あー、……なるほどね」
小町せんせーのなるほど納得した理由とは?