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ガラケー  作者: 二階堂みつ
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二つ折りの携帯電話と言う名のタイムトラベルマシン

二つ折りの携帯電話。


何もかもが当時のまま残っていて


メールを読めばそこに彼がいて


写真をみればそこに世界があって。



何もかもがそのままだと思ってたけど。。。




会いたい、会いたくて仕方ない。




会えないって分かってても。


だからかな、


会いたいけど会いたくないって思うのは。







26歳になる夏、私は彼からプロポーズを受け

27歳になって結婚式を挙げ

28歳で子供が生まれた




世間一般からしたら"丁度いい"私の人生



今幸せかって聞かれたら



迷わず「幸せ」とこたえる。




好きな人と結婚して子供がいて


毎日大変なことがあっても幸せ。



でも時々、ふとしたとき思い出したように


たまらなく泣きたくなる夜がある。









そんな時いつも思い出すのは"彼"の笑顔。



着崩したシャツに

腰まで落としたズボン


汗拭きシートのシトラスの匂いに

少し汗の匂いが混ざって


制服に染み付いた香水の匂いが


私の周りを包み込む。






-10年前 冬-



「じゃあ次の英文の答えはなんだ佐田。」


私が彼に出会ったのは高1の冬

といっても春休み直前の三学期。



佐田と呼ばれた彼は身長も顔も成績も

普通の同級生。


特に興味もなかったので存在に気づかず

彼が私の眼中に入ったのはこの時だった。




「おーい、佐田!」


呼ばれてる本人はうたた寝をしているようで

後ろの席の男子が


「おい、佐田!起きろ!お前だよ!」


と後ろから椅子を蹴る。



寝ぼけたまま佐田と呼ばれた男子は


「すいません、なんですか?」


と答えた。


呆れた教師が

「次の英文…じゃあその前にここでいう"ラム"ってなんだ?」


と単語の意味を聞いた。



(ここでいうラムはお酒だよね?寝てたし羊って言うのかな。言ったらウケる。)



すると彼は



「ラブ?それはつまり愛することですか?」


と真顔で答えた。







、、、、、え?





誰もが一瞬なんのことか分からず

時が止まった。



そして爆笑の渦を巻いて授業どころではない

騒ぎになっていたのだが


私は思わずその答えを聞いたとき



「はぁ?」


と言ってしまったのだ。




バチっと目が合ったのを今でも覚えている。




慌てて逸らしたがなんか気になりもう一度みると


彼は周りの男子にからかわれてて


なんで笑われてるのか理解もできない様子で

「え?え?」と繰り返していた。








その後の授業がどうなったのかも分からないが



その日を境に彼から目が離せなくなってしまったことだけは覚えている。





(佐田って笑うと結構かっこいい)



ふとそんな風に思ったりもした。








「れーちゃん!!!!」


「え!?」


名前を呼ばれてハッとすると


赤信号だった。



「どうしたの?危ないよ!」


愛しい我が子を抱く旦那が心配そうにこっちをみてる。




「あぁごめん。ちょっと夏バテかな?」


「大丈夫?どっか入って休む?」

「ううん。それより莉乃(リノ)寝たの?」

「うん、抱っこしてたら寝ちゃった」

「莉乃、(いつき)に抱っこされると直ぐ寝るよね」

「俺はこのためならキツイ勤務も頑張れるよ」



樹は警察官なので時々きつい筋トレをするみたいだが愛娘が「パパ 腕 カッコいい」といつか言ってくれるのを夢見て頑張っている、本当にいい父でありいい旦那だと思う。






樹と出会ったのは3年前、大学の卒業パーティーで

慣れないヒールに足を取られた私が

持っていたお酒を樹に頭からぶっかけたのがきっかけだった。



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