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10.家庭教師、魔術を教わる

海苔巻きの試食会を無事(俺以外)終え片付けをする。

魔界には洗剤というものがなく全て水洗いで済ませるらしい。

今度洗剤でも手土産に持ってくるべきか。

そんな片付けの最中ふと気になっていたことを聞いてみた。


「今更だけどエリアスは今日は寝間着じゃないんだな」

「どう?私だって普通の私服は持っているのよ。感想は?」

「うむ。何というか新品みたいに綺麗で初めてみたいに着なれていないな」

「…………………」


おっとこの汚れ落ちないぞ。どうやって落とすんだこれ。


「ギルベッカさん、これ落ちないんですけど」

「そのような時は魔術を使用するのです。【浄化】をお使いいただければ苦労せずに汚れを落とせます」

「魔術?」


ギルベッカさんがさぞ当たり前のように言ったが今凄いことを聞いた気がするぞ。

魔術とはあれか。魔法的なものなのか。

そんな俺の困惑を悟ったのかギルベッカさんが説明をする。


「我々魔族は魔力を生まれながらに保持しています。その魔力を放出させ現象に引き換えることを魔術と呼びます。今回私が使用した【浄化】もそのうちの1つです」

「へぇエリアスも使えんの?」


さっきから固まっているお嬢様に話を振ってみる。

話し掛けれたことに驚いてはいたものの少し自慢気に言ってくる。


「そうよ。実を言うと私は他の魔族よりも魔力の保有量が大きくて才能があるのよ。驚いた?ちなみに特異魔術は【蒼氷舞(フローゼ)】よ」

「自分で言うと凄みがなくなるから不思議だ。特異魔術って何?」

「魔術は2系統に別れ一つ目が魔力さえあれば誰でも使うことのできる平皆魔術。二つ目が一族によって異なる特異魔術です。特異魔術はその一族でのみ使える魔術であり他の者では扱うことができません」

「つまりエリアスの家系だとその【蒼氷舞(フローゼ)】を全員使えると?」

「そういうことでございます」


うん。ややこしくてわかりにくいけどあまり気にしなくていいだろう。

スゲーカッケーと思ってればいいなうん。


「ちなみにその魔術って俺でも使える?」

「そんなわけないじゃないですか。人間ごときがなに調子に乗ってるんですか?」

「言葉選んでくれません?心に大穴が穿たれそうなんですけど」


ギルベッカさんの言葉は辛辣だった。

魔術かー。魔法じゃないけど魔術もよさそうだよな。

黒魔術とかカッコいいじゃん。


「魔術はどうでもいいけど午後どうする?何か教えてくれる?」

「俺からしたらどうでもよけないんだが……。午後は予定があるから無理だよスマン」

「そっかー。ならその用事を済ませたらまた来てね?」

「了解」


満面の笑みを見せられたら来れないとは言えない。

なんだかんだで俺のプライベートの時間が無くなってきている気がするがこれはこれで退屈はしないのでよしとしよう。


「ところで少々気になっていたのですが人間界ではどのようにして汚れを落とすのですか?何か魔術の代替となる物でも?」

「洗剤を使うんです。掃除や洗濯で扱う洗剤の種類は変わりますけど汚れを落としたい時に使います」

「なんですかその夢のようなマジックアイテムは。世界に七つ存在すると言われるオーパーツの一種ですか」

「洗剤は現代化学で産み出された物ですから!そんなレベルの高い代物ではないですから!というかさりげなく新しい設定ねじ込んでこないでください!」


なんだろうかオーパーツって。

人間界で言う古代遺産と同じ意味なのか。

洗剤をそんな財宝レベルと同じにしないでほしい。

洗剤がオーパーツになったら車やらスマホやらはいったい何になるんだ。ひとつなぎの大秘宝ワン○ースかなんかか。


「それだったら午後家に帰ってきた後で持ってきますよ。ついでに他にも諸々。そもそもギルベッカさんは俺らの世界にある物に興味を持って利用価値があると言ってるんでしょう?それを家庭教師という名目で情報のやり取りをすることで不自然さを無くそうとしている」

「返す言葉もありません。もちろんタダとは言いません。こちらからもそちらの望む物、情報を提供するつもりです」

「それなら魔術を教えて」

「無理です」


やっぱりギルベッカさんは辛辣だ。

もう少し考えてくれてもいいじゃないか。

超能力みたいなものって夢なんだぞ。


「そういえばギルベッカさんも特異魔術を持ってるんですか?」

「私は持ち合わせてはございません」

「全ての一族が特異魔術を使えるわけではないのよ。中には魔力を持たない一族も存在するからむしろ特異魔術を使える一族のほうが珍しいわ」


え、生まれつき差が生まれるということか?

魔界なのに魔力が使えないとかかわいそうじゃん。

イジメの対象になりそう。


「それじゃあ平皆魔術は【浄化】以外にどんな物があるんですか?」

「そうね例えば……」


エリアスが皿を持ったまま周りを見渡して台の上に置かれている料理の失敗作に目を止める。

エリアスがそれに向かって手を翳す。


「“グライブ”」


エリアスがそう言った瞬間料理の失敗作が爆発した。

台の上は焦げてところどころに穴が出来ている。


「今のは【爆撃】系統の魔術“グライブ”。対象を爆発させる簡単な魔術よ」

「すげぇ……」


まさしくこれだ。俺が見たかった魔法、もとい魔術は。

でもいいのだろうか。台が傷ついているのだが。


「お嬢様何をしているのですか?建物内での魔術の使用は注意を心がけるようにと教わっていますよね?」

「あ、これは違うの!暁がどうしてもと言うから!」

「誰も爆発させろとは言ってねーよ!というかどうするんだこれ。お前の母親に怒られるだろ!」

「いえ殺されるわ」

「その言葉は冗談の時だけに使って!今言われても冗談に聞こえない!」


俺とエリアスが罪の擦り付け合いをしているとギルベッカさんが溜め息を吐き。


「しょうがないですね。私がなんとか致します。“ディレクション”」


ギルベッカさんが手を翳したら台が淡い緑色に包まれて元の形を取り戻していく。

焦げたあとも無くなり穴も元通り。


「今のは【復元】系統の“ディレクション”です。高等魔術でもあるんですよ」

「すげぇ。メイドなめてました」

「スーパーメイドです」

「すいませんでした!謝りますから手を下げてください!」


俺が必至に懇願するとギルベッカさんは渋々手を下ろす。

危なかった……言葉の選択を間違えていたら俺は跡形もなく爆発させられていたことだろう。

それにしてもなんでスーパーメイドじゃなきゃダメなのかよくわからない。拘りでもあるんだろうか。


「あとはマイナーなのが【治癒】【障壁】あたりは誰でも簡単に覚えられる魔術ね。魔力があれば、だけど」

「嫌味かこの野郎」

「野郎じゃないわ。レディーよ」

「レディー(笑)か」

「“グラ……」

「それは卑怯だぞ!」

「お二人がた。仲が良いのはいいですがそこまでにしてもらえますと私の苦労も減るのですが」

「「すいませんでした」」


手を構えられたら従う他ない。

俺も魔術使ってみたいなホント。


「ちなみに気になっていたのですがオーパーツって何ですか?」

「オーパーツは古くから伝わる古代兵器と呼ばれる存在です。かつて起こった大魔界戦争でオーパーツを投入したことにより戦争が終結したと言い伝えられております」

「……………洗剤を古代兵器にしないでくれます?」


洗剤は決してそのような物騒な物ではございません。


「ところでさ、【浄化】で汚れ落とさなくていいの?」

「「あ」」


エリアスが思い出したように呟いた言葉で俺とギルベッカさんも思い出した。

魔術の話に夢中になってて完全に忘れていた。

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