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おまけ②【変化】




 狸と狐に化かされるな。

 誰が言い出したのかもわからないが、きっとそれは戒めだろう。

 だが、化かされることを望む者もいる。

 例えば、ここにいる一人の男のように。

 「頼むよ、狸」

 「やなこった」

 「頼むよ、狐」

 「嫌ですね」

 「お前等ケチだな」

 何を頼んでいるかと言えば、自分好みの女に化けろと頼んでいるのだ。

 とはいえ、注文も多い上に現実から目を背けるような真似だ。

 「弟が先に結婚して、それが羨ましいからって。兄貴、もっと節操持った方が良いですよ」

 「うるせーな。そんなんじゃねーよ」

 夜彦の弟でもある神楽は、すでに織姫という可愛らしい女性と結婚している。

 その上、子供まで授かっているのだ。

 かといって、それを良いなー、と思うような歳でもないのだ。

 「そもそも、俺ぁ女に化けるくらいなら、女に化かされたいもんだ」

 「お、狸。今名言言ったな」

 「だろ?だろ?」

 相変わらず馬鹿な二人だと思っていた狐。

 「というわけで、狐、お前が良い女に化けろ」

 「ええええええええええ!?ななな、なんでそうなるんですか!?」

 「それしかねェだろ。俺は女を見たいんだ。なりてぇわけじゃねぇんだ」

 「そんな!」

 夜彦と狸の二人に迫られ、狐は今にも泣き出しそうな顔をしている。

 そんな時だった。

 二階から歩が下りてきて、狐に声をかけた。

 「狐、ちょっと付き合ってくれ」

 「!はい!」

 「どっか行くのか?」

 服装はいつもと変わらないが、狐を連れて行くということは、散歩ではないのだろう。

 そう思った夜彦が歩に聞くと、歩はただ「ああ」と答えるだけだった。

 どうして狐を連れて行くのかと思っていると、狐が歩の後ろを着いて行きながら、女性に化けた。

 「「!?」」

 何事だと、俊敏に反応をした夜彦と狸は、大声を出して歩と狐を止める。

 「な、なんで化けるんだ?歩、お前狐と何するつもりなんだ!?」

 夜彦と狸がまた変なことを考えているだろうことくらい、歩はすぐに分かった。

 本当に馬鹿な奴らだと、半ば呆れながら返答をする。

 「別に何もしねぇよ」

 「じゃ、じゃあなんで狐が女の格好で着いて行くんだよ!」

 それには、狐が答えた。

 「兄さんが女の人に声をかけられるのが面倒だからって、こうして女の姿で一緒に行くんです。大抵の女の人は、これで声をかけてこなくなるんです」

 ばたん、と閉められたドアを見つめたまま、夜彦と狸は真っ白になっていた。

 「歩と仲良くしよう」

 「ああ、そうしよう」

 懲りない二人。


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