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崩壊

幸せな日々は長くは続かなかった。


―――それは唯花が2歳になった頃。


突然、無言電話が毎日、

それも数時間に1回という嫌がらせが始まった。


すぐに携帯電話を変えたけど、数日後にはまた始まる。


それが収まったと同時に今度は

『流都と別れろ』と脅迫じみた手紙が毎日ポストに入れられるようになった。


それが1ヶ月続いたある日、流都さんと女の人がキスしている写真が届いた。


確かにこの数日、流都さんは帰宅が遅くて、聞いても同僚と飲み会していたの一点張り。


届いた写真を流都さんに突きつけたら、否定していたけど、目が泳いでいた。


もうこれ以上聞いてもムダだと思った。


次の日、流都さんを見送って、私は唯花をつれて、家を出た。


机に離婚届と結婚指輪を置いて―――。


その後は携帯解約して連絡を絶ち、今のアパートに引っ越した。


流都さんは実家に何度も来たと母から聞かされたが、

会うつもりも話すつもりもないと、私の連絡先も住所も口止めした。


流都さんが離婚届を出したと、母から連絡がきたのは家を出て、1週間後だった。


そして私は、保育園探しと仕事探しを始めて…。


もう恋なんかしない、いらないと思っていた。


流都さんもいい人だったけど、私を裏切った。


こんな思いはもうしたくないから…。


―――だけど、本当はそうじゃなかった。


私は、忘れたと言いながら、気持ちを誤魔化していただけ。


だから…。


再会して、思い出してしまった。


確信してしまった。


まだこんなにも、翔真が好きだと。


…でも彼女がいる。


あの子の顔も、翔真の顔も頭から離れない。


もう全部忘れてしまいたいのに…。


―――「そうですね…あ、希望にかなり近い求人が1件、ありましたよ」


「え、本当ですか!?」


「ええ、給料面も時間もかなり良いと思います。」


「じゃあ、それでお願いします!」


「はい、わかりました。じゃあ手続きしますね」


ハローワーク1日目にして、高条件の求人に出会えたのは奇跡だ。


「平坂さん、向こうが今日面接したいとおっしゃってるんだけど…」


「今日、ですか?」


「異例なんですけどね…早速来てほしいそうです」


「分かりました、伺います。」


「会社の場所、分かりますか?」


「いえ、地図をもらえますか?」


「じゃあプリントしますので、少し掛けてお待ちください」


「お願いします」


1日でも早く働きたい私には好都合だけど。


良かった、スーツ着てて。


「すいません、お待たせしました。

会社の場所はこちらです。」


「ありがとうございました。」


私はハローワークを出て、地図を頼りに車を走らせた。


20分ほどで、着いたそこは、20階建てビルの会社。


『REKホールディングス』


エントランスに入り、受付で名乗るとすぐに上の階へと案内された。


コンコン。


「失礼します、部長、平坂様をお連れしました。」


「どうぞ」


受付の方に連れられやってきた小規模会議室には思いも寄らぬ人が待ち受けていた。


「君、下がっていいよ」


「はい、失礼します」


受付の方が部屋を出て行った。


「…久しぶり、元気だったか?」


「…流都さん……」


流都さんと、4年ぶりの再会だった。

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