戻った日常
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。ちゃんと薬飲んでね?」
「わかってるよ」
「絶対、無理はしないでね」
「なんか梓、母さんみたい」
「茶化さないで!あなたの体を心配して…」
流都さんが私の言葉を遮るようにキスした。
「…ありがとう、大丈夫だよ」
流都さんは笑顔で家を出た。
「大丈夫かなぁ…」
「パパは大丈夫だよ」
「あ、唯花…聞いてたの…」
「私も学校行ってきます」
今日から流都さんは仕事復帰で、小学校は始業式。
唯花は4年生になった。
「忘れ物はない?」
「大丈夫!行って来まーす」
唯花も元気に手を振って家を出た。
そして私はこれからが戦争なのです。
「りい!」
昨日初めて手放しで2歩歩いた璃衣花はもう目が離せない。
愛衣花はまだだけど、つかまり歩きですたすた歩いているし、もうすぐだと思う。
小さな怪獣2匹を見ながら、私は洗濯物を干して、朝ご飯の片付け。
それが終わったら、今日は買い物にも行かなくちゃ。
食器を洗い終えた時突然、ピンポーンとインターホンが鳴った。
モニターを見ると、そこには母が写っていた。
「どうしたの?こんな時間に…」
「ちょっとね、スイミングスクールのお友達と約束があって…ついでに顔見にきたの」
「って…昨日会ったばっか…」
「だって、歩いた所まだ見れてないんだもの。ねぇ〜璃衣花ちゃん♪」
「あーい」
「でも良かった、まだ時間ある?」
「あるけど?」
「スーパーへ行きたいから、ちょっと付き合ってくれる?」
「いいわよ」
「ありがとう、じゃあ準備するから待ってて」
「焦らなくても大丈夫よ〜」
多分ランチの約束だから、余裕で時間があるんだと思う。
「きゃーっ!!」
着替えていると、リビングから母の悲鳴が聞こえた。
慌ててリビングへ戻る。
「お母さん!!どうかし…」
「璃衣花ちゃんが歩いたのよ!!」
真顔で母はそう言った。
…そんな事だろうと思ったよ。
「じゃあ行くよ」
「はいはい」
母は璃衣花を抱っこして、先に駐車場に向かった。
私も愛衣花を抱っこして、鍵を閉め、駐車場に向かった。
「流都さんはもう仕事に行ってるの?」
「今日からね。体調は結構良くなったから」
「引っ越しの方は?」
「GWが終わってから、少しずつ荷物運んでく事にした」
「そうなの」
「家電家具はマンションのだから、身の回りの洋服とかがメインだし、一番大きい物はお父さんが買ってくれたベビーベッドだから」
双子の妊娠を報告した1ヶ月後に、父から送られてきたベビーベッド。
すでに唯花のは譲ったり処分していたから、ちょっとありがたかった。
しかも、椅子になるというデザインもなかなかおしゃれで、気に入っている。
「あの人にしては、良いセンスしてたね」
「うん。使い勝手も悪くない。おかげで貯蓄に回せたから、助かったよ」
「双子って大変ね」
「ほんと。
オムツだって倍いるし、ゴミも増えるし。
でも悪い事ばかりじゃないよ。
癒やしも倍なんだから」
「今の梓が、今までで1番幸せって顔してる」
話をしていたらスーパーに到着。
「さっさと買い物終わらせないと。
唯花が帰って来ちゃう」
「私ものんびりしてられないんだった」
母は友達との約束を一瞬忘れていたらしい。
今度は愛衣花を母が、璃衣花を私が抱いて、スーパーへ入っていった。
―――「よいしょっ。じゃあ私は行くから」
「うん、ありがとう」
母は買った品物を運び終えると、帰って行った。
私は璃衣花と愛衣花をサークルに入れ、買った物の片付けを始めた。
もうすぐ唯花も帰って来るし、昼ご飯の準備もしないと。
…1日が24時間じゃ足りないと思う今日この頃。




