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嘘のような真実

―――「翔ちゃん、今日ね大事な話があるんだ」


私は起き上がって、座った。


「急に改まってどうかした?」


「実は、ちゃんと会って話そうと思ってて…ずっと言ってなかった事があるんだ…」


「…何?」


「うん…子供の事なんだけどね…」


「りいちゃんとまいちゃん?」


「うん…実は…双子だけど、双子じゃないの」


「は!?どういう…」


翔真は飛び起きて、私を見た。


「信じられないかもしれないけど…愛衣花は翔ちゃんの…娘なの」


「…どういう事…」


翔真は信じられないという表情を浮かべていた。


HSという告知を受けた時の私と同じだ。


「HSっていって。

2人の人の子を同時に妊娠する事があるの。

璃衣花は流都さん…夫の子供で、愛衣花は翔ちゃんの子供。

つまり異父姉妹なの」


「嘘…だろ」


「…私も信じられなかった。

でもそれが…事実なの」


本当は、ずっと悩んでた。


HSという事実を翔真に告げるか。


考えて考えて、自分の子供じゃなくても、自分の子供だと思うと言ってくれた翔真には言おうと決めた。


だけど…本当は知らないままの方が、翔真は幸せだったかもしれない。


「ごめんね…翔ちゃん。知らない方が良かったよね…」


翔真は無言で下を向いたまま。


私はベッドから降りて、服を着始めた。


「……なん…な?」


「え!?」


「本当なんだな?」


「え…うん」


「そっかぁ…まいちゃんは俺の子供なんだ」


急に上を向いたと思ったら、とびきりの笑顔で私を見た。


それが少し辛かった。


「ごめんね…私…」


「俺、嬉しいよ。でも梓には辛い思いさせたよな」


「ううん、私は…翔ちゃんの子供を授かって、辛いと思った事はない。

夫を騙している事は心苦しいけど、翔ちゃんも愛しているから…」


「俺があの時…」


「それは言わないで。いいって言ったのは私」


そう、私が…翔真を感じたくて。


何にも邪魔をされたくないって思ったから。


不倫だからって、いつもちゃんとしてくれていた翔真に、着けないでって言った。


たった1度だけ。


それが、この状況を作った。


悪いのは他の誰でもなく、私。


守りたいと言いながら、全てを壊したいとも思っている私が、そこにいた。


「ごめんね…翔ちゃん。

本当の子供ってわかっても、父親って言えなくて、辛いのは翔ちゃんだよね」


「俺は…俺は、梓がいればそれでいい。

子供ももちろん大事だけど、何より失いたくないのは梓だから」


「きゃっ」


翔真はボタンを留めていた私を後ろから強引に抱き寄せた。


そして「愛してる」と耳元で囁いた。


「私も…愛してる」


翔真の腕を抱きしめて、その温もりに浸っていた。


「じゃあ、気をつけて」


「うん…あ、翔ちゃん」


「何?」


「またしばらく会えないと思う」


「わかった」


「でも時間が出来たら、すぐに連絡するから」


私は翔真にキスをして、アパートを出た。


まだ一緒にいたいけど、唯花もいるからって、流都さんに璃衣花と愛衣花、2人を任せっきりにも出来ない。


私は自宅へと車を急いだ。


「ただいま」


「お帰り、梓。早かったな」


「りいとまいが気になって…でもパパに遊んでもらって楽しかったみたいね。寝顔が笑ってる」


家に帰ると3姉妹は昼寝の真っ最中だった。


私の心配は必要なかったみたい。


さすがはパパ。


「もっとゆっくりしてきても良かったんだぞ」


「いいの、十分のんびり出来たから」


私はソファに座って読書していた流都さんに、後ろから抱きついた。


「流都さんこそ、休みはゆっくり休んで。体大事にしてね」


「梓と子供達の笑顔が癒やしてくれてるから、大丈夫」


胸がズキッとした。


「着替えてくるね」


私はごまかすように笑顔でそう言って、部屋着を取りに寝室へと向かった。


…ごめんなさい、流都さん。


心の中で何度も謝った。


だけど私…。


―――この時、私は何も知らなかった。


流都さんの気持ちも、翔真の本当の気持ちも。


何も見えていなかったんだ。


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