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13の理論  作者: 安藤真司
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未来人が去ってからベッドで寝ころんだまま思考を整理してみた。

とにかくよくわからなことだらけだが、とりあえず。

未来がこの我が手足で殺人鬼な片手剣使いのお兄さんのことを知らなかったことは、切り札になるのかもしれない。

それがわかっただけでもよしとしよう。

うん。

じゃあ整理できたところで雑談に入るか。

件の殺人鬼とね。


「ここにはどれくらいいるんだ?」

「そうだな、まぁ今の未来とやらは追い払ってやるよ」

「頼もしいな、俺の手足よ」

「問題ねぇよ、変態」

「やめて」


言いながらこいつは機械仕掛けの剣をするりと腰のベルトにしまった。

どうやら本当に敵はいなくなったらしい。

と、ふいにどたどたと走ってくる足音が響く。

誰だろ。

看護士さんかな。


「あー、あのすんげぇかわいい姉ちゃんだな」

「え、13?んー、一応、隠れておいてもらっていいか?」

「お安い御用さ」


ばっと姿が見えなくなる。

相変わらず人間離れしてるなぁ。

ガラッという音と共に13が入ってきた。

服はしっかり俺のものを着用している。

ちょっと複雑。

13はかなり走ってきたようで、息が上がっていた。


「未来がこなかった由紀人!?」

「ああ?未来?別に何もなかったけど……」

「へ?あ、そー、なの?そっか、そう、よかった」

「なんだよどんだけ走ってきたんだ?汗びっちょりだぞ」

「へっ………………わっ!!!…………見たでしょ」

「何が」

「そっ、そそそそその、いいいい今、わたしのっ、その、お、おおおお、おおおお、おっっ」

「胸?」

「シネエェェェェェッ!!!」


あー楽しい。

ほんとかわいいなこの生き物。

一家に一人13みたいな未来こないだろうか。


「とにかくまぁ、別になんともなかったからさ」


13は笑って、安心したように、言った。


「そっか、ならよかった」

「あぁ、何かあったら呼ぶからさ、その時は頼むよ」

「うん、わかってる」


そしてそのままドアから出ていく13。

俺も緊張をほどき、隠れてもらっていた俺の手足を呼ぼうとして、瞬間、目を疑う。

目の前に13が現れた。

今しがたドアから出たばかりのはずの、13が。

13は、昨日の夜を想起させるような冷たい表情で言った。


「嘘」

「嘘だよ」

「それは嘘」

「ねぇ由紀人」

「なんで嘘ついたの?」

「ねぇ、私知ってるよ」

「未来が来たよね?」

「来てたんでしょ?」

「なんで私が来る前から無事なのかな?」

「ねぇ何があったのかな?」

「ねぇ」

「ねぇ」

「ねぇ」

「私のこと信じてないのかな?」

「どうなのかな?」


次々とまくしたてる13。

どうする。

本当の事言うか……?

………………。

いや、たぶんそれはだめだ。


「……信じてない、なんて、俺の言うことは信じてくれないのかよ」

「……でも、だって」

「私が来る前からなんで無事なの?ってそれはもし本当に未来が来てたら、俺が死んでるって確認に来たのかよ?」

「そんなわけっ」

「結局何も話してくれてないのは、お前のほうだろ」

「…………ごめん」


その後はいつも通りの俺たちに戻って、普通の会話を数分して、13は病院の人に見つからないうちに帰って行った。

ちなみに帰り際の13さんの発言がこちら。


「べ、別に由紀人に早く帰ってきて欲しくなんかないんだからねっ!」


……。

うん。

申し訳ないことをしたっていう自覚はあるよ。

ありますとも。

さてさて。


「へい俺の手足」

「ちなみに俺の紹介まだだぜ俺の頭脳」

「ん、必要か?」

「最低限やんねーとさ」

「確かに、おい鳳凰寺瞬」

「なんだい柴山由紀人」

「紹介以上」

「充分さ」


鳳凰寺瞬。

ほうおうじ、しゅん。

俺の手足。

殺人鬼。

説明なんてこれ以上しようがない。

いつ出会ったのかもよく覚えていない。

いつ頭脳と手足だなんて呼び合うようになったかも。

そして、何を壊してきたのかも。

無論俺は殺人の依頼をしたことはないのだけれど、それについては完全に奴の病気であって、強いて言うならば犯人蔵匿になるのだろうが、とにもかくにも、世界の色んな物を壊してきたようにも思うし、世界の誰にも影響を与えなかったようにも思う。

そんな関係。

こいつにとって殺人というものは。

特に快楽であったり願望であったり憎しみがあるわけではないらしいんだけど、そのあたりはさすがによくわからない。

俺は人殺しが正しい事だなんて微塵も思っていないし、こいつも俺にそのあたりの詳しい話をしようとしてくることはない。

だから、こいつのことを聞かれても、これ以上は何も話せない。


「いやーしかしあの13って子テラかわいいな、顔面偏差値100は超えてるぞ」

「あぁ本当にかわいすぎて俺我慢の限界を超えそうで怖いよ」

「もうアウトだと思うけどな……」


瞬はなにやらポケットをあさりだして、驚愕の台詞を口にする。


「おぉそういやさっき汗びっしょりだったけどな、あれ汗だけじゃねぇんだ、風呂上りでもあったんだぜ?」

「ほう」

「俺の頭脳のことだから欲しがると思ってよ」

「ほう」

「13ちゃんの入浴シーン、総計23枚、全裸モロから微妙に見えないエロス、着替え前後中から湯船浸かってる時までよりどりみどり」

「いくらだ?」

「7万ドル」

「7、万、円?」

「ドル」


ドルか……。

ドルかぁ……。

ドルねぇ……。


「買った」

「さすがだな変態な俺の頭脳」

「お前ほどじゃないさ俺の手足」


いそいそと瞬から写真を受け取る。

やばい。

いやまじでやばい。

いやまじでかわいいっつーかえろいっつーか、なんだまじでやばいぞやばいやばい。

写真がやばいのか俺がやばいのか13がやばいのか、わからんしらん。

なんだかわからんがまぁいいここは一発、


「柴山さーん、真夜中なんですから黙って寝てくださっ、なに見てんだこの変態っ!!」


柴山由紀人の評判は下がったが、柴山由紀人は写真を死守したという。

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