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5話

 「…どういせ」

 「あはは…」

 

 出来ない。

 何度も帰還魔法の詠唱をしたが、何の変化もなかった。魔力や体には問題ない。ならどうして?


 「あ!言い忘れたけど…」

 「うん?」

 「たとえ神でも神界への転移魔法はできないよ」

 「は…?私の家を私が行くのに何で駄目なのよ!?」


 実は神界。つまり神々やそれに相応する存在たちが住む世界だ。たまに神の中で転移魔法で人たちが住む世界に来て地上に多く関与する神もいたらしい。


 「私達はあくまで地上の規律を決める事でそれ以上のことを関与してはならない。と、意見が集まったのよ。よって、神界の転移を担当する人を通さずに地上と神界の転移魔法はもう不可能です~」

 「聞いた事ないけど?そんなの」

 「…あれ?他のみんなは知ってるよ?」


 ……。

 長い沈黙。


 「イ、イシュタルちゃん!わ、わたしがあなたの始めての友達になってあげるから!」

 「あんた…うざい…」


 と、ちょっとしたイタズラを楽しむガブリエルは気を直して、


 「でも大丈夫!天族の転移担当はラグエルだから!」

 「いや、それが一番心配なんだけど…」


 ガブリエルの話を整理した。


 ・魔法を使って神界への転移は不可能。

 ・まず、自分達の正体は隠す事。

 ・よけいな騒ぎは避ける事。

 

 だいたいこうだった。

 話が全部終わった二人は街を探した。


 「あ、探すなら大きな都市に行こう!」

 「この近辺のところなら東の方に王国があるはずよ。たしか…、テラニアだっけ」

 「へえ!結構賢いだね、イシュタルちゃん」 

 「一応女神だから地上の基本知識はあるわよ。あんたこそ大天使ならこれくらい勉強しなさい」


 えへへっ、と、笑うガブリエル。

 

 二人が今居る場所で東へ向かうと王国が出る。

 その王国の名はテラニア。人族、すなわち人間の王国だ。周辺には帝国や大国やテラニアよりもっと強い国が存在する。つまり、テラニアはいつ滅亡されてもおかしくない国だ。けど、帝国や他の国はテラニアを攻撃しなかった。


 それはテラニアが特殊な力を持つとか、外交の力などではない。

 ある二つの種族があるからだ。だからってテラニアがその種族達と親しいわけでもない。ただテラニアという国自体があの種族達の間に垣根の役割をしているからだ。だから帝国や他の国はテラニアを攻撃するとか、滅亡して領土を合併すると、垣根が消えたその二つの種族の戦いが始まるので傍観中だったのだ。だからテラニア王国は自然に中立国となった。その結果で今もテラニアは色んな種族達が住んでいる。


 イシュタルは魔法を使って座標を考えた。目標はテラニすにある都市。

 持ってる物や金などはない。それより持ってる必要がない。なぜなら自分は神だからだ。食事くらいしなくても簡単には死なない。無論それは隣でニコニコしている大天使も同じだ。

 目的地を考える。より精密に。より正確に。 


 「じゃ、行くわよ」

 「は~い!」


 そして二人は光を発しながら姿を消した。




======================================






 「陛下、北方の大山林から・・・―――――」

 「帝国からの使者が陛下を―― 」


 …。



 勝手に騒がす群れの中心に一人の王が玉座に座っていた。

 玉座の下には臣下に見える人たちが言葉を交わした。そこに王の声は聞こえない。


 「陛下、今回に国家経済策として陛下の承認が…」

 「卿に一任する」

 「陛下、国防の予算について…」

 「その件は卿に一任する」


 同じ回答だけを選ぶ。それが、それだけがこの王が出来る仕事。

 臣下達が勝手に結論した結末を、王である自分が承認する。いや、少し違うな。承認をしてあげている。


 この国の王?


 「すべてそなた達に一任する」


 ふざけるな。


 王の言葉で今日の会議が終わった。

 先まで騒がした臣下たちの声が嘘のように静かになる。すでにこうなる事を全部分かっていた。だから自分の発言など最初からない。玉座に座ってる男はそれを骨が痺れるほど知っている。


 「では低下、後の事は報告書に書きますのでご参考お願いいたします」

 「ああ…、分かった」


 本当に…、くそだ。


 一人になった王は駄目域をした。その駄目息には現実から逃げたい願と逃げたくないという願いがあった。こんな状況でも一国の王だ。王なりのプライドはある。だから今まで頑張った。



 太陽が空から身を隠して真っ暗な夜になった。

 王、彼は日より月が好きだった。夜になると全てを忘れ、穏やかな夢を見る事が出来るから。見たくない現実から目を逸らす。それが許される時間帯だった。


 王だとしても年はまだ多くない。王になるため色んな勉強をした。どうすれば良い国になるのか。どうすれば人たちが笑顔になれるか。彼が目的にするのは強い国も、厖大な領土を持った国もない。ただ人たちが安らかに暮らす良い国を作りたい。その方法はだれも教えてくれなかった。教え貰ったのは全部同じだ。

 どうすれば滅亡されずに生き残るか。どんな国とは手を、どんな国には剣を向かえば良いのか。自分が普段考えてた王の仕事とは全然違った。そして感じる事になった。

 この国の王は弱い。


 その弱い王は、自分だと。



 今でも思い出したくない記憶がある。先代王の死。

 先代王は国を愛した。人を愛した。種族を問わずこの国に存在する全てを愛した。その王がした政策の中では奴隷制度廃止ある。言葉通り国内にあるすべての奴隷制度を禁じた。勿論、多くの貴族たちが反対した。

 この国じゃなく、色んな国の間に奴隷の数や質は持ってる貴族の権威を示した。それを廃止するなんて、貴族たちが許すわけがない。でも奴隷制度は廃止された。一人の王の宣言によって。


 そして王は、殺された。




 ああ、本当にくそだ。

 男は回想を止めた。考えても機嫌が悪くなるだけだ。

 そろそろ寝ようとした瞬間、変な音が聞こえた。よく見ると自分の足もとになんか変な絵があった。 

 

 「は?これは」


 ただの絵ではない。なんか魔法陣みたいな絵が急に赤い光を発した。一体どいう事かは分からない。けど確信はある。これは召還魔術だ。

 帝国ほどではないが、以前王宮内の図書館で見た事がある。

 今からくそみたいな事が起きる。それだけは分かった。だが、それも良い。

 どうせくそ生活一筋だ。怖くなどない。危ない感じは全然しない。だから、


 誰かが知らんが、王を相手にするのだ。相当な者か単なる馬鹿か。


 「どんな者かは知らんが、乗ってやるとしようか!」


 そこには迷いなどない。悪戯な表情だけがあった。


 国の面倒?そんなの臣下たちが勝手にするだろ。

 あ、念のために書き残すか。

 どう書けば良いのかな…、朝になると騎士団長が起こしに来るはずだ。だったら…、


 【旅行行ってきます。】


 うむ。彼女ならなんとしてくれるだろう。

 この国の中で心を許した相手だ。家族より信頼している。

 

 彼は召還に応じた。




======================================





 勇者です。

 この世界でも勇者をしています。

 今まで稼いだお金と赤いワーウルフの討伐賞金で広くではないが、そこそこに暮らしそうな家を得る事が出来ました。むろん、この世界に来るとき持っていた物も売りました。多分、この世界では高級品らしいです。あ、その話が後でいましょう。

 そしてその家の中には俺とリシア。そして祝いに来てくれたクロアさんとアリスがいます。


 あ、もう一人いますね……、



 「クロアさん。夕食準備で……、うん?」


 なんだかクロアさんが土下座をしている。

 わあ。この姿はなかなか…、その隣には何故か杖を両手で握って震えているアリスも見えた。


 「おおっ!アリスよ見事だ!私が教えた要領をすぐ把握するとは!うん?アリスよどうして泣きそうになったんだ」


 あの馬鹿は無視して、

 アリスの前には寝袋姿の男いた。


 「お前は何者だ?」


 男はドアを開けて入った俺を見た。


 「この家に住む人ですが…」


 あれ?おかしくない?どうして自分が自分の家で始めてみる人に自己紹介を…。いや、なんかのゲーム?俺がいない間にゲームでもしたのか?でも皆真面目だね。


 「あなたは?」


 ここは俺の家なのになんで知らない男が堂々としてるんだ?アリスの友達か?何故俺の家にいるんだ?まさかの不法侵入?

 男の声が聞こえた。


 「王だ」


 え?

 待って、え?王?これは何?

 あ、そうか。王様ゲームだな!はは、ただのゲームなのにこんなにも真剣にするなんて。

 クロアさん~、ゲームですからそんなにしなくても大丈夫ですよ~。



 ――――――――・・・―――――――・・・――


 俺は今でも顔に大雨が降るようなクロアさんと目で話した。

 え、マジ?


 ゴクゴク。


 視線を感じたクロアさんは土下座のまま頭を上下に振った。

 俺はそれを見てもう一度自称王を見た。そして、


ゆっくり床の上に直に坐り、平伏した。うん、俺が考えても立派な土下座だ。


 「どうか、命だけは…」


 異世界に来て自分の家で始めてみる王様に土下座をしました。



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