4話
赤いワーウルフの事件から三日後。
本来なら街の警備隊がする公益業務を俺が解決したので、冒険者会館から賞金を貰う事になった。
「はい。シンさんが狩した赤いワーウルフの賞金です~」
「あ――、どうも・・・」
いや、何か空気が重いですけど。
「あの、クロアさん?」
「はい~?」
「――――・・・―――」
え?何これ?俺なんかやっちまったのか?あの優しいなクロアさんが今日は何故か怖いですけど!
「あの…、その」
「あ、今日は天気が良いですよね。シン・アクマンさん?」
フルネームで呼ばれた―――――!!
「あははは・・・。そうですね!遊ぶには本当に良い天気ですよね!」
何とかごまかす俺に、
「ええ。特にワーウルフを狩するにはホオォ―――トウゥに良い天気だと思います。あ、中でも赤いほうで~」
………。
…………。
「すみません」
「はい~?どうしてシンさんが誤るんですか?シンさんが頑張って苦労してくださったおかげで、私が上司とその上司の上司とその上司の上司の上司に叱られた事や、管理不注意の責任で給料が3ヵ月間減給する事になったのはどうでも良い事ですから~」
すみません―!!!
「どうか気にせずに^~^」
「本当に申し訳ございません―!!!」
俺は生まれて初めて人生最初の土下座をした。
「はあ、もう大丈夫ですよシンさん。事情はすでに把握していますから」
「え?」
「今朝早く女の子が来て事情を全部話してくれました。『勇者さんは大丈夫ですか?』って」
多分アリスだ。体の傷はリシアのヒルで全部直ったし、生活をするには問題ないと言ったが、毎日お見舞いに来る優しい子だ。
「私が怒ったのは上司に叱られた事や、給料が減給された事のためではないです」
クロアさんは不安な目で、
「本当に心配したんですよ。あれの事件当日に会館に報告された患者の目録を見るとあなたの名前があったんですから。しかも赤いワーウルフなんて」
あ、俺、心配させてしまったな。
クロアさんはいつもと同じ笑顔で俺の頭を撫でてくれた。
「だから危ない事はしないでください」
「は…、はい」
「あら、何か顔が真っ赤に…、」
「い、いえ!これは単に、いや!何でも…あははは――――・・・」
顔を赤くなった俺はそのまま会館を出た。
=====街を歩くリシア=====
「おおっ!これは何だ!」
「あ、あの…。それは魔法を封印した魔晶石で…」
「ではこれは何だ!」
「それは単なる帽子…」
「これは!」
「ええっ、それは――――――」
二人の女の子が街中を歩いていた。
一人は長い黒髪を、もう一人の女の子は緑色の短髪をして、着てる黒いローブは彼女が魔法使いって事を示した。その二人の姿を見るとまるで妹の世話をする姉にしか見えない。
「リ、リシアさん。ま、待ってください!」
「ええいっ、これくらいで疲れては良い戦士にならんぞ!」
「はあ、はあ…、私…、い、いちお―― 魔法系ク、クラスですけど…。はあ・・・」
姉役のアリスは朝から忙しかった。
=====とある場所のところ=====
朝から機嫌が悪い人物がいた。
部屋の上席に座って侍女たちが入れたお茶を飲んでいる女性がそこにいる。
「……そこのあんた」
「は、はいっ!」
「空気が見えないからどいてくれる?」
…?
一瞬、空気が止まった。いつも不満状態の彼女だが、今日はその濃度が高い。
「あ、あの…、どこにどけば良いでしょうか?」
「そうね。未知の世界かな?」
「す…、すみません!!存在してすみません!!」
言う下からものすごいペースで消えた。
「そこの二人」
「お茶――――――――――・・・」
「すみません―!!!」
同じく、消えた。
「…いや、お茶のおかわりを――」
はあ、と、
駄目息をする彼女。
最近世界は平和になった。昔は小規模の戦いから始め、世界を揺るがす大戦争まで世の中全てが戦争中だったのに。今は平和になって戦争の女神である彼女がする仕事はほとんどない。
そう、彼女は神、イシュタルだ。
最近は神々なかでも戦いを中止する規律を作った為か日々退屈な生活を送っている。でも好戦的な彼女だからって戦に狂った狂人ではない。日常の暇を少しでも潰せばそれでよかった。
「ああ、本当にやる事ないな。サーガは今頃何するのかな」
サーガが可愛いと言ってくれた自分の髪を手入れしながら呟いた。その時、
「やっほう!イシュタルちゃん!元気?」
「げっ」
イシュタルを呼んだ声の主が現れた。
背中には白い翼が六枚あり、全身に穏やかなオーラーが溢れてた。
「あんた…、もしかしてここをあんたの家だと勘違いしているのではないよね?」
「えっ?違った?」
「あんたは本当に馬鹿なの!?それでも大天使?早くここから出ないとミカエル呼ぶわよ!」
「ええ…!イッちゃん酷い。もしかしていじめ子?」
甘える大天使に、
「殺されたい?いや、天使だからそうね。墮天されたい?ガブリエル?」
今でも殺す気満々なイシュタルにびびったガブリエルは手を上げながら
「あははは…、怖いね。でも今日はただ遊びに来たのではない!」
「はあ?」
なんだか不愉快に自慢するガブリエル。
そんな意義洋々なガブリエルは指でイシュタルを指した。
「日常に疲れたそこのあなた!これを見ろ!なんと、地上の現世を一気に移動できるすばらしい道具!ちなみに検収は私の永遠の友!ラグエルがしてくれました!」
「あんた達天族の中で頭がまともなやつはミカエルとラファエルしかないの?」
「いや…、そう褒めても何もでないよ、もう・・・――――――」
「……」
目の前の大天使のボケる表情を見たイシュタルがガブリエルの頬を両手で引っ張った。
「あ、あっ!ちょっとイシュタルちゃん~!え、す、すみま、ひっ!」
「か・え・れ・――!!」
その瞬間ガブリエルが持っていた宝石が床に落ちた。
「「あ―」」
宝石を中心に魔法陣が刻まれて二人を光で庇った。これは高等の転移魔法。
馬鹿だがあの大天使二人で作った物だ。イシュタルさえ魔法の影響を受けている。
「あはは…、では行きましょうか?」
部屋から二人の姿が消えた。
・
・・
・・・
空を見ると白い雲が見えた。
って事は…。
「地上へようこそ!」
「―――・・・―――――――」
「ようこそ!」
「―――――――――――――」
「ようこ…」
じいいいいいいい。
「;;;」
「その翼,ずたずたに破れたくなければ見えないようにして。燃やしたいから」
「はい…」
思わず地上を探訪する事になった女神と大天使だった。