表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギフト  作者: 菓子の木
4/25

4話

 現在の時刻午前一時四十七分。

「そろそろやるか」

「そうですね」

 残念なことにぴったり一時間前に薬を飲まされているが、時間は十分とった。今なら万全とはいかなくともこそこそと隠れて脱走する分には問題ないはずだ。

「すいませーん。トイレに行きたいんですけど」

「ちょっと待ってろ」

 看守の一人が眠そうに目を擦りながら、俺の足かせを外すために鍵を持ってくる。そして、看守がかがんで俺の足かせを外し、俺の足から重みと拘束感が消えた瞬間、俺は指先に魔力を集め、指を看守の首筋に当てる直前で魔力を電気へと変え一瞬看守の体に電気を流し込む。

「がはっ」

 看守は体を大きく痙攣させて転がってしまった。

「やりすぎですよ」

「いや、一瞬気を失わせるくらいのつもりだったんだけど」

 俺の予想よりも遥に多くの魔力が回復していたらしく、かなりの電流が体を伝ってしまったらしい。きっと死んでないはずだ、うん大丈夫。

「まあいいです、早くしてください」

「分かってるよ」

 伸びてしまった看守から鍵を奪い、月夜の足かせも外す。

「もう一人の看守を気絶させてすぐに脱出だな」

「もちろんです」

「おっと、その前になんかスタンガンみたいなの用意できるか?」

「誰に言ってるんですか」

 月夜はニヤリと笑ったあと、看守が持っていた拳銃を口の中に放り込み租借したあと、俺をしゃがませて背中に回りこむ。

 そして首筋に牙を突きたてた。

 俺の首筋にゆっくりと入り込んでくる、小さな牙は俺の血管を捕らえるまで侵攻してくる。血管を捕らえると、チューっとまるで飲み物でも飲んでいるかのように俺の血液を少し飲み、ゆっくりと血に濡れた犬歯を抜き取り、月夜が宙に手をかざすと、そこにゆっくりと拳銃型のスタンガンが形を成していく。

「はい、出来ました」

「ありがとな。それにしても傷口がすぐに塞がるとはいえ変な感覚だよな」

「五月蝿いですよ」

「おい、まだなのか」

 看守が少し苛立ったようすで所長室の扉を開ける。

 そして俺たちと寝転がっている看守を見て今の状況を理解したらしく、近くの警報装置へと走っていく。

「今は寝ていてくださいな」

 俺は看守が背を向けた瞬間にスタンガンを向け、若干の魔力を込め引き金を引いた。直後小さな反動が手を伝う。

『シュトン』

 という心地いい音と共にもう一人の看守も倒れた。

 民間人でない以上最悪殺してしまっても構わなかったが、良くしてもらった大塚さんに悪いし、銃声で気づかれるのも嫌だからな。

「よし、いくぞ」

「はい」

 その後はまったくと言っていいほどに看守と鉢合わせすることはなかった。一度だけ見掛けはしたが、向こうからはこちらに気が付くことはなかったし、本当に拍子抜けするほど脱獄というものは簡単だった。

 足音を殺して走っている間に脱獄は成功していたと言ってもいい。

 本当にそんな簡単でいいのか? と思わずにはいられないくらいに簡単だった。いや、本当に。

「案外簡単だったな」

「ホントですね」

 脱獄に成功し、大した達成感もなく夜空に浮かぶ綺麗な満月を見上げてみるものの、本当に何の感情も湧いてこない。

 感動も、喜びも、怒りも悲しみもまったくない。

 ただ、月光に照らされている月夜の銀髪が風に揺れていてとても綺麗に見えた。

というわけで、4話でした。

至らぬ点が多々あるとは思いますが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ